うまい話はない!?
「ココさ~ん。聞いてくださいよ。」
「どうしたの? なつきちゃん。」
「私、これ見て一瞬掛け持ちのバイト辞めようかと思いましたよー。」
「何を見てって?」
「これです。この手紙。」
「何?エアーメイル?オーストラリアからじゃない!!!」
「外国に住んでる彼氏からプロポーズでもされたの?」
「そんなんじゃないですよ。それに彼氏も今居ないし。」
「中見ていいの?」
「見てくださいよー。それ、新種の悪徳詐欺ですかね?」
「何? (ご当選おめでとうございます。こちらは自国の宝くじの当選案内です。6億4292万円に見事ご当選されています。お受け取りの確認等、いくつか手続きが必要となりますので、下記のURL、もしくは郵送にてご連絡ください。)って、これ、自宅に届いたの?」
「昨日帰ったらポストに…。こんなの怪しすぎるし、馬鹿じゃない?って思ったんですけど、なんか金額のでかさと、いきなりのことだったから一瞬ホントかと錯覚しちゃいそうでしたよ…。でも、よく考えると、オーストラリアなんて行ったことないし、行ったことないのに現地の宝くじなんて買えるわけないし、それに、消印はオーストラリアなのに中身は日本語だし。もう、ホンッと突っ込みどころ満載なんですけど、なぜか捨てられずにここまで持ってきちゃいました。」
「でもこれって、いかにも本当みたいに、わざわざ3枚にも渡っていろいろ説明書きされてるのね。こりゃ、信じたくなる気持ち分かるわぁ…。でも、本物は初めて見たわ。まだやってんのねー、こんなこと。」
「えっ?ココさん、この話以前にもあったんですか?」
「うん。私が留学先から帰ってきたころだから、8年くらい前かなあ…。まさしく、オーストラリアからの当選お知らせエアーメイルだったわよ。少し流行ってたみたい。すぐに信じて連絡しちゃった人は一体どんな目にあったんだか…。 それにしても本物は初めて見たわ。…、ということで、掛け持ちのバイトは、これを理由には辞めたりしないこと!世の中うまい話はないのよ。私は基本、楽して稼げる仕事はないと思ってるから。いいじゃなぁい、掛け持ちのバイト、若いうちしかできないわ。」
「やっぱそっかぁ…。ん?や、やばい、バイトに遅れちゃう。行って来ます!!!」
「行ってらっしゃーい。」
大きく手を振って彼女を見送ったけど、その後姿を見ながら世の中の裏社会とのあまりにも紙一重な部分に恐ろしさを感じた。
結果恐ろしいことをしでかして罪を償うようなことになったような人たちも、みんな最初はとても些細な、小さなことからのスタートだったりする。でも、それがどんなことであっても、自分の心がそれを実行することに少しでも抵抗を感じているときは、決して手を出さずにいよう。だって、その翌日にはもうそんな好奇心忘れてるんだから。
「こんにちはー。はい、地域新聞です。」
「あら、この間の小学生労働者!!!じゃなくて、名前聞いていいかな?」
「斉藤瑛土です。」
「へぇ~、エイトくんだなんてかわいい名前ねぇ。あれからもがんばってるのね!!!」
「はい、いつもはみんなに見られないように、学校に行く前に配ったりしてるんだけど、今日は土曜日だからお昼に。」
「そっか、エイトくんも目的のために働いてがんばってるんだもんね!やっぱり、楽して稼げる仕事なんてないわね。小学生だって、汗水流してがんばってるんだから。うん。」
「ん?よくわかんないけど、がんばります。またくるね!!!」
「バイバーイ!!!」
この間、何かのサイトで宝くじで毎月15万から20万当てているという人をみた。自分で生み出した推測法でナンバーズの数字を当てるらしい。そしてどっかの芸人さんは、本職よりギャンブルで稼ぐお金がはるかに多いらしく、東京に6500万円の家をキャッシュで買ったらしい。しかもその人曰く、彼のお父さんもそうだったというんだから、世の中はこれという概念に当てはめられない。でも、初給料をもらって自分で稼いだお金を手にしたときの、あの喜びは何ものにも代えられない何かがあったなあ。
「あ、私もポスト見に行ってみよう。」
「ん?この間の懸賞ドラッグストア○○○○の商品券2000円分当たってる!!!う~ん、なんだかんだ言っても、やっぱり当たると嬉しいな。」
では、次話で☆☆☆