『Hybrid Child』 中村春菊
作品情報:『Hybrid Child』中村春菊(角川書店/ビブロス)※2社より発行
戦端を開くのは、やはりこれ。
あ、すみません、ちょっとこのシリーズの題名変えました。早々と昨日~今までにプロローグ読んでくださった方、ありがとうございます、『探訪記』から『合戦記』に変わっております。
中村春菊大てんてーは『純情ロマンチカ』とか『世界一初恋』とかのシリーズで爆発的人気を誇っておられるけれど、私は圧倒的にこの1冊が好きです。
明言はしておられないけれど、恐らくはこれ、会津戦争がモチーフになっています。
1、2話の舞台は明治ですが(多分)、話の発端は幕末、あれから140年以上経った現在でも未だ会津人と長州人との間に微かな遺恨を残す、鳥羽伏見の戦いに端を発した戊辰戦争、その中でも地獄絵図をうつし世に下ろしたかのごとき会津戦争が話の始まり。いや、話の流れからしてそうだと思うのよ?
ネタばれするので詳しい内容は書きませんが、心に深い傷を負った指揮官2人、それでもなお赦されぬ罪、悲しみをぶつけるあてを知らず、八つ当たりする民衆……そしてひたむきに愛し続けてくれるハイブリッドチャイルドに救われ、あるいは更に孤独を深める指揮官。
1話はやや軽めのノリですが、『月の雫』『型番0001』のキーワードを深読みすると、黒田のポーカーフェイスに大泣きします。最後まで読まないとこの深読みの意味は解らないのですが。
……どうして出版社さまは中村てんてーに時代物の新作を依頼しないのでしょう? 『東山道転墜異聞』、『月は闇夜に隠るが如く』、『満月物語』、『海ニ眠ル花』、この方の魅力は時代物にこそ顕著に表れていると思うのですが。
美しいナレーション、心に重く響く人の愚かさ愛おしさ、暗闇に差し込むひと筋の希望。ああ、稀代のストーリーテラーとはこの人のことを言うのだ、と、涙しながら読んでいる……のですけれどねえ。
さて、次回は日本を飛び出してアメーリカを舞台にした作品でも。