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「役立たず鑑定士と追放された俺、未来が見える星眼で落ちこぼれを最強に育ててクラン《明星》を作る」   作者: なら


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第14話 新しい装備と指揮の力

翌朝、四人で武器屋に向かった。


アバターラの武器屋の中でも、冒険者が多く使う店は何軒かある。俺たちが向かったのはギルドから二本入った通りにある「鉄と炎」という店だ。店主は五十がらみの無口な男で、腕は確かだと評判だった。


扉を開けると、鉄と油の匂いがした。壁一面に武器が並んでいる。短剣、槍、剣、斧、杖。ランクごとに分けられていて、奥の棚ほど値が張る品が置かれている。


カイルがまっすぐ槍の棚に向かった。


「これとこれ、どっちがいいと思う?」


手に取ったのは、しっかりした作りの鉄槍と、柄が少し細めの合金製の槍だ。店主が「合金の方が軽くて扱いやすい。冒険者にはそっちが人気だ」と言った。


カイルが合金の槍を構えてみた。確かに軽い。振り回しやすそうだ。


俺は星眼でカイルのステータスと二本の槍を見比べた。


「そっちじゃない。奥の棚の右端、鉄と銅の合金製の槍を見てくれ」


カイルが首を傾げながら奥に向かった。取り出したのは、一見地味な作りの槍だ。柄が少し長く、穂先の重みが前に来るバランスになっている。


「これか? なんか重くないか?」


「持って突いてみろ」


カイルが半信半疑で構えた。一突き。二突き。三突き目で表情が変わった。


「……あ」


「分かったか」


「重心が前に来てるから、突いたときに力が乗る。俺の槍の使い方に合ってる」


「お前の筋力と槍の適性なら、軽い槍より重みのある槍の方が威力が出る。体が大きく使えるからだ」


店主が「目利きだな」と短く言った。


カイルの新しい槍は銀貨八十枚だった。今の資金なら問題ない。カイルが「今まで使ってた槍と全然違う」と言いながら何度も突きの動作を繰り返した。店主が「外でやれ」と言った。



ルシアは杖の棚の前で静かに立っていた。


いくつかを手に取って、握って、また戻す。どれが自分に合うかを確かめているようだった。


俺は星眼でルシアのステータスを確認しながら棚を見た。


「端の黒い杖を見てくれ」


ルシアが手を伸ばした。細身で、先端に小さな黒い石が嵌め込まれている。魔道石だ。魔力の通りを良くする素材で、魔法の収束速度が上がる。


ルシアが握った瞬間、わずかに表情が動いた。


「……馴染む」


「その杖は魔力の通りが早い。ダークアローの収束時間が短くなる。今より速く撃てる」


「欲しい」


迷いが一切なかった。金貨一枚と銀貨二十枚。ルシアが財布から出した。


店主が「魔族がこの杖を選ぶのは珍しい」と言った。ルシアは何も答えなかった。ただ杖を静かに持ち直した。



ナナは武器より防具を優先した。


今のナナの装備は薄い革の胴当てだ。斥候として動き回ることを優先した結果、防御力は最低限しかない。それで十分だと思っていたが、中級階層の魔物の攻撃力を考えると少し心もとなくなってきていた。


「軽さは絶対に譲れない。重いと動きが変わる」


「分かっている」と俺は言った。


防具の棚の中から、俺が選んだのは薄い金属板を革の内側に縫い込んだ複合胴当てだ。重量は今のものとほぼ変わらないが、急所への防御力が段違いに上がっている。


ナナが着けてみた。体を左右に捻り、屈んで、跳ねる。


「……動ける」


「気配遮断は体の動きに依存する。重さで動きが変わると意味がない。これなら問題ない」


金貨一枚と銀貨五十枚。ナナが無言で支払った。


俺自身は短剣を一本買い直した。今の短剣は刃こぼれが目立っている。戦闘向きではないが、ないよりはましだ。銀貨二十枚。必要最低限の買い物だ。


四人分の装備を整えて店を出ると、カイルが新しい槍を肩に担いで「なんか気合い入ってきた」と言った。ルシアが新しい杖を手の中で軽く回した。ナナは新しい胴当ての具合を確かめるように腕を動かしていた。


装備が変わると、気持ちも変わる。それは俺にも分かった。



宿に戻って、俺は三人に話した。


「今日の午後、十一階層に潜る。目的は戦闘ではなく確認だ」


「確認?」とカイルが言った。


「昨日習得したスキルの効果を戦闘の中で見る。お前たちにどんな補正がかかるか、どの程度使えるかを俺自身が把握しておく必要がある」


ルシアが「戦場の指揮か」と言った。


「そうだ。発動したことで効果があるのは分かっている。だが実際の戦闘でどう出るかはまだ分からない。今日はそれを確かめる」


カイルが「俺たちは何かすることがあるか?」と聞いた。


「いつも通り動け。普段と何か違うと感じたら後で教えてくれ。それだけでいい」



十一階層は、いつもと同じ薄暗い通路だった。


入って少し進んだところで、俺は《戦場の指揮》を発動した。


頭の中で何かが広がる感覚があった。仲間の気配が、いつもより鮮明に感じられる。カイルがどこにいて、どこに向いているか。ルシアの魔力がどのくらい集まっているか。ナナがどの方向に動こうとしているか。それらが薄くだが伝わってくるような、不思議な感覚だった。


ナナが前方に消えて、戻ってきた。「前に四体。通路の左右に二体ずつ散らばってる」


「カイル、正面の二体を引きつけろ。ルシアは左側を。ナナは右側から仕掛けてくれ」


「行く!」


カイルが踏み込んだ瞬間、何かが違った。


いつもより踏み込みが深い。迷いなく前に出られている。体が軽いというより、迷いが消えたような動きだ。


「ダークバースト」


ルシアの魔法が左側の魔物二体に叩き込まれた。タイミングが早い。カイルが正面を押さえた瞬間に合わせて撃っている。普段もそうしているが、今日は誤差がほぼゼロだった。


ナナはすでに右側の一体を仕留めていた。もう一体に向かって動いている。


戦闘が終わったのは、いつもの半分以下の時間だった。


カイルが「なんか今日変じゃないか?」と言った。「動きやすかった。いつもより判断が早い気がした」


「それがスキルの効果だ」と俺は言った。


「ルシアも感じたか?」


ルシアが少し考えてから口を開いた。「魔力の流れが読みやすかった。カイルがどこにいるか、体が分かっていた気がする」


「私も」とナナが言った。「動き始めるタイミングが早くなった。考える前に体が動いた」


俺は三人の言葉を整理した。


《戦場の指揮》の効果は、単純な能力値の底上げだけではないらしい。仲間同士の連携に補正がかかっている。互いの動きへの感度が上がり、タイミングのずれが減る。俺の知力が高いほど補正値が増すというのは、こういう意味か。


まだ発動したばかりで粗削りだ。使い続けて慣れれば、もっと洗練される。それが積み上がったとき、この四人はどこまで行けるか。


「もう一戦やる」と俺は言った。「今度はナナ、索敵の報告をもっと細かくしてくれ。方角だけでなく距離と動きの方向も入れる」


「分かった」


二戦目、三戦目と重ねるうちに、補正の感覚が少しずつ掴めてきた。カイルの突きに迷いがなくなっていく。ルシアの魔法が一発目から精確になっている。ナナの奇襲タイミングが戦闘開始から縮んでいく。


五戦目が終わったとき、四人とも無傷だった。



地上に戻って、夕方の風の中を銀の月亭へ向かいながら、俺は今日の戦闘を頭の中で整理した。


《戦場の指揮》は想定より使えるスキルだった。いや、想定通りか。俺の知力がSS相当まで伸びれば、この補正はさらに大きくなる。その頃にはカイルもルシアもナナも、今より遥かに上の水準に来ているはずだ。


「次の目標を言う」


四人で歩きながら、俺は口を開いた。


カイルが「なんだ? もっと奥の階層か?」と前のめりになった。


「下級階層のボスだ。十階層にゴブリンジェネラルがいる」


「ボス!」カイルの目が輝いた。「ずっとスルーしてたやつか!」


「そうだ。多くの冒険者がドロップに旨みがないからと素通りしている。だが今の俺たちにとって、ドロップより価値があるものがある」


「なんだ?」


「ボス戦の経験だ。集団を指揮する魔物との戦い方、配下の処理と本体への集中。それを実戦で学べる。《戦場の指揮》の効果を本格的に試すにも、ちょうどいい相手だ」


カイルが槍を握り直した。「いつ行く?」


「数日、今日みたいな訓練を積んでからだ。焦らなくていい」


カイルが「……分かった」と言った。珍しく素直だった。


ルシアが「楽しみにしている」と短く言った。


ナナは何も言わなかった。ただ、胴当ての留め金を確認するように指先で触れていた。準備はもうできている、ということだろう。


宿の扉を開けると、いつもの飯の匂いがした。今日も悪くない一日だった。


カクヨムで先行公開しています。


頑張って執筆していきますので面白い、続きが気になると思っていただけた方は応援して頂けると嬉しいです。

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