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「役立たず鑑定士と追放された俺、未来が見える星眼で落ちこぼれを最強に育ててクラン《明星》を作る」   作者: なら


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第10話 俺たちのリーダー

クランを正式に登録してから、数日が経った。


あれからダンジョンの下層で、俺たちはひたすら連携と個人の強化に努めた。毎日潜って、戦って、宿に戻って、ルシアは瞑想をして、カイルは槍を握り直して、ナナは静かに翌日の索敵ルートを頭に描いていた。


数日でこれだけ変わるものかと、俺自身が少し驚いていた。


星眼で三人のステータスを確認する。



────────────────────

名前 カイル・レント

レベル 11

適正武器 剣 D 槍 S 斧 C

筋力 B(S)

敏捷 C(B)

魔力 G(G)

知力 D(C)

耐久 A(A)

精神 C(B)

スキル 頑健

────────────────────


────────────────────

名前 ルシア

レベル 15

適正武器 杖 A 魔道具 B

筋力 G(F)

敏捷 E(D)

魔力 A(SS)

知力 C(A)

耐久 F(E)

精神 C(S)

スキル 暗黒魔法適性・初

────────────────────


────────────────────

名前 ナナ

レベル 13

適正武器 短剣 S 投擲 A

筋力 E(C)

敏捷 B(SS)

魔力 F(F)

知力 C(B)

耐久 D(C)

精神 C(A)

スキル 気配遮断・中

────────────────────



カイルの筋力がBに届いた。耐久は潜在の上限Aに到達した。スキルの頑健が本領を発揮し始めていて、前衛として壁役をこなせる水準になってきた。槍の扱いはまだ荒削りだが、体が動きを覚えている速度が尋常じゃない。やはりこの才能は本物だ。


ルシアの魔力がAに上がった。精神もCになり、魔法の安定性が目に見えて増している。瞑想を一日も欠かさずに続けている成果だ。暗黒魔法の射程と精度が数日前とは別物になっていて、今では後衛から複数の魔物を連続で仕留められる。


ナナの敏捷がBに上がった。元々SSの潜在を持つから、これはまだ序の口だ。知力もCになり、索敵の精度が上がってきた。感覚だけで動いていた部分に、頭が追いついてきている。


三人とも、伸びが早い。


正しい方向に引っ張れば、才能は勝手に育つ。改めてそう思った。


今日は俺一人でギルドへ向かうことにした。そろそろクランとして受けられる依頼を確認しておきたい。三人には宿で休んでいてもらう。



宿の食堂に三人を残して、俺は外に出た。


扉が閉まる音がして、しばらく静かになった。



「……なあ」


カイルが湯呑みを両手で包みながら、ぽつりと言った。


ルシアが顔を上げた。ナナは窓の外を見たまま、少し耳を動かした。


「レインって、すごいよな」


誰も否定しなかった。


「俺、あいつに会う前は剣士になろうとしてたんだ。何年も練習して、全然上手くならなくて、毎日笑われてた」カイルは湯呑みを見ながら言った。「でも今は、槍が楽しい。毎日上手くなってる感じがする。レインの言う通りに動いたら、体がどんどん変わっていくのが分かるんだよ。今までの俺だったら考えられなかった」


「……そうだな」と自分に言い聞かせるように言ってから、カイルは続けた。「あいつ、俺のことを追放した連中より全然頭がいいと思う。戦い方とか、人の見方とか、全部が違う」


ルシアが静かに口を開いた。


「私は、魔法を使えるようになった」


カイルが顔を上げた。


「それだけじゃない」ルシアは湯呑みに視線を落としたまま続けた。「魔族だから、ずっとどこに行っても弾かれてきた。自分が何かをできるとは思っていなかった。魔法を使っても意味がないと思っていた。誰かの役に立てるとは、思っていなかった」


カイルは何も言わなかった。


「レインは、私のステータスを見て可能性を言った。初めて会った日に。嘘だと思った。でも、嘘じゃなかった」ルシアが顔を上げた。「今は、自分に自信がある。魔法が当たるたびに、自分がここにいていいと思える。それはレインがいなかったら、なかったことだ」


少し間があった。


「彼についていく」とルシアは言った。迷いのない声だった。「どこまでも」


カイルが「……おお」と小さく言った。ルシアがそこまで言葉にするのは珍しかった。


ナナは窓の外を向いたまま、しばらく黙っていた。


それから、静かに口を開いた。


「私は、あいつに財布を盗んだ」


カイルが「知ってる」と言った。


「追いかけてきた人間に先回りされたのは初めてだった。捕まったとき、衛兵に突き出されると思った。それか、売り飛ばされるか」


ナナの声はいつも通り平坦だった。感情を乗せない話し方。でも、言葉の奥に何かが透けて見えた。


「財布を返したら、行っていいと言われると思った。でも違った。あいつは才能の話をした。獣人の私に」


「うん」


「過去を聞かなかった。どこから来たかも聞かなかった。約束通りに」


ナナがわずかに窓から視線を外して、テーブルの木目を見た。


「あいつのおかげで、今日飯を食える。宿で寝られる。仲間がいる」短い言葉だったが、その一つ一つに重さがあった。「感謝している。言葉にしたことはないけど、している」


カイルが「俺も同じだ」と言った。「言葉にしたことはないけど」


ルシアが小さく頷いた。


三人でしばらく黙っていた。食堂の奥から、誰かの話し声と食器の音が聞こえてくる。


「言わなくていいのか、本人に」とカイルが言った。


「言わなくていい」とナナが答えた。


「なんで?」


「あいつは知ってると思う」


ルシアも頷いた。「言葉より、結果で返せばいい」


カイルが「……そうだな」と言って、湯呑みに口をつけた。


それきり三人は黙ったが、静かな空気だった。重くもなく、軽くもない。ただ、同じ方向を向いている三人の間にある空気だった。



ギルドに着くと、掲示板には依頼が並んでいた。


新人クランが受けられる依頼は限られているが、その中に一枚、目を引くものがあった。


中級階層での素材採取依頼。報酬は悪くない。ただ、一筋縄ではいかない難易度だ。今の三人の実力なら届くかもしれない。いや、届かせることができる。


俺はその依頼書を手に取った。


これが次の一手だ、と思った。

カクヨムで先行公開しています。


頑張って執筆していきますので面白い、続きが気になると思っていただけた方は応援して頂けると嬉しいです。

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