悲劇的な死を迎えた美容外科医
天城様!!」
私の赤色の高級外車を運転している専属運転手、高木は突如私の名前を叫ぶ。
天城様こと私、天城理香子は天才美容外科医。
生まれ持ったその才能を活かしてどんどん手術をし、その出来栄えは毎回天才的と言われる。おかげでクリニックは患者数に比例してどんどん大きくなり、通常のクリニックの大きさの倍はある。
当然お金も稼いで30歳にして資産は何十億もある
セレブだ。
今は招待されたお見合いパーティーに向かうため車を走らせている。
私が今身につけているのは超一級品のシルクが使われ、ところどころラメがキラキラ光っている赤色の肩出しドレス。ワインのように濃い赤色のドレスは私を大人びた雰囲気をさらに醸し出してくれる。このお見合いパーティーで将来を共にあゆむパートナーを探さなくては。婚期を逃してしまう。
「天城様!!」
はぁ、夜風に当たっていた気持ちい気分が台無し。どうしてくれんのよ。
「何、髙木?なんか用?」
私は気だるげに聞く。どうせ金だろ。用って。
金が足りないなら後で言えっていつも言ってんのにな。
「ごめんなさいごめんなさい、本当にごめんなさい」
わけがわからない
「はあ?どうしたのよ」
「ブレーキが壊れました。このままだと崖からおちてしまいます。というか落ちて死にます。」
はぁ?死ぬ?なんでもっと早く言わなかったのよ!
嫌よ死にたくなんかない
「どういうことよ!?ふざけないで!!」
私は思い切り高木の胸ぐらをつかみ怒鳴りつける。
「あっあれ……」
高木が弱々しく呟いたあと、外車が大きく揺れた。
はっと窓を見ると空が見えた。
ドオオオオンという鈍くて不吉な音が響き渡り、受身をとる暇もなく強い揺れと痛みが襲いかかる。
痛っっ!!!?!なにこれ、、、、、
腹部になにか突き刺さったような強くて感じたことない痛みが私を混乱と絶望に導く。強い痛みとしびれ。なんで私が……
というか、高木。高木は大丈夫なの?
きょろきょろとあたりを見回すと、小柄な、男性の体があった。
高木だ。目を見開いている。
フロントガラスから差し込む光は高木の開眼している目を照らし、瞳孔が見える。
瞳孔反射なし、死んでる?ね。胸に木が刺さって即死だ。ごめん、本当にごめん。私のせいだ。私が連れて帰る……
動こうと体を浮かそうとした瞬間、強い痛みが私を襲う。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?!」
あまりの痛さに私は喉を枯らすとばかり叫び声をあげる。ぶるぶるも震え、意識が朦朧として頭も痛いなか、ゆっくりと腹部を見る。そこには大きく木の枝が刺さっており、貫通している。
痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い早く死なせて
美容外科医といえど、どの科の医師でも想像が着く。奇跡的に即死は免れているが私はもう時期死ぬ。この状況から発見されて手術で救命など絶対に無理だ。ふとフロントガラスを見ると粉々に割れており、破片はおそらく痛みなどかからして私の頭部に突き刺さっている。
まさに悲劇。今日発見されたらおそらく私は新聞にのるだろう。天才美容外科医として有名でテレビの取材もよく受けていたくらいだから。きっと、天才美容外科医崖から落ち悲劇の死を遂げたなんてね。
ああ、これじゃあ私の将来を共にするパートナーなんて見つけられないわ。さようならね。
はぁっ、はあっ、はぁっ、
呼吸が苦しい。もうすぐだ、もうすぐ死ぬな。研修医以来患者を看取ったことなんてないけどわかるのよ。
死ぬってね。
ああ、本当に恵まれていた人生だったな。私は。
自分の人生をふと振り返る。
家も裕福で不自由なんてしたことない。
元々頭が良かったからそこまで勉強しなくても学年トップの成績をとっていた。
運動もできて暇つぶしで入ったテニス部では大会でいつも全国大会に出ていた。
顔も良くて恋人も何人もいた。
ほとんどノー勉で入りやすい学費の高い医大に入り、美容外科医になった。
才能があり天才美容外科医としてたくさんのお金を稼ぐことができた。
この人生、私は何も努力してこなかった。だって努力しなくたって才能があったから成功できた。
全部、ただ運が良かっただけ。才能が良かっただけ。そんな人生でよかったのかな?
強い後悔が胸に宿る。けどこんな死ぬ直前にしたって意味がない。
異世界転生……
中学生の時、一時期狂うほどに読んでいた異世界転生系のアニメや漫画、小説。主人公が貴族の姫君や悪女に転生して苦労や困難を乗り越え素敵な殿方に愛されていくお話たち。
もう一度生をいただけるなら異世界転生でもして姫君や悪女に転生して素敵な殿方に愛されたいわ。
って、私はなに馬鹿なこといってんの。
まぶたが落ちていく。激しい痛みの中、意識がくらい闇のそこに落ちていく。




