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テトラのすきなもの

作者: 桜庭
掲載日:2025/12/24


 世界でいちばんかわいいテトラ。サラサラのかみの毛も、お空のいろの目も、セルロイドのお人ぎょうみたい。

 でも、あの子はみんなにきらわれている。


 だって、わがままなんだもの!

 

 砂ばであそぼうと言っても


「おくつがよごれるから、いや!」


 おままごとをしよう言っても


「子どもやくはいや! お母さんやくは、もっといや!」


 かんしゃく玉がいつも大ばくはつ!

 いっしょに遊んでいても、ちっともたのしくない。


 そんなだから、テトラはいつもひとりぽっち。

 あやとりも、お絵かきも、ひとりでやってた。


 わたしは、そんなテトラがかわいそうで…………ほんのちょっぴり、かっこいいと思ってた。


 だから、ある日、こっそりときいてみたの。

「テトラは、なにが好きなの?」って。


 そしたら、びっくり!


「わかんない」


 テトラは自分の好きなものがわからなかったみたい。だから、あれもいや、これもいやって言ってたのね。それがわかって、わたしは少しだけテトラが好きになっちゃった。


「ねえ、それなら、いっしょにさがしに行かない?」


「え?」

 

「テトラの好きなものを、さがしに行きましょうよ!」


 こうして、わたしとテトラはふたりでぼうけんに出た。ママたちに見つからないよう、こっそり公えんをぬけ出して、商店街へ。もうすぐクリスマスをむかえる商店街は、どこもかしこもピカピカだ。


「ママとは、いつもここでお買いものするの。テトラはなに屋さんが好き?」


「知らない」


「それじゃあ、じゅんばんに見ていきましょ!」


 わたしはテトラの手を引いて、じゅんばんに見ていくことにした。まずは八百屋さん。


「アタシ、ピーマンきらい」


 つぎは、本屋さん。


「おべんきょうは、いちばんきらい!」


 さいごに、わたしのいちばん好きなお店——お花屋さんにやってきた。

 ここが好きじゃなかったら、どうしよう。テトラの好きなものは、商店街にないのかも。


 むねがキューっとなった。それでもテトラと手をつないで、お花屋さんの入り口に立つ。


「ごめんください」


 いつもみたいに大きな声で叫ぶと、お店のおくからおばさんが「あらあら」と出むかえてくれた。


「こんにちは、アサちゃん。きょうはどうしたの?」

 

「こんにちは、おばさん。きょうはね、テトラの好きなものをさがしにきたのよ」

 

 おばさんはテトラを見て、目をまんまるくさせた。きっとテトラがあんまりにもかわいいから、びっくりしたのかも。

 おばさんはまた「あらあら」と言うと、ほっぺたに手を当てた。

 

「それはこまったわね。ここにあるかしら?」


「それはわからないわ。ねえ、さがしてみてもいい?」


「ええ、どうぞ。おばちゃんは、お店のおくのほうを見てみるわね」


 そう言って、おばちゃんはまた引っこんでしまった。どうぞ、と言われたわたしとテトラは、えんりょなくお店の中を見わたした。


「ねえ、この花は?」


「色がいや」


「じゃあ、こっちは?」


「形がへん」


 やっぱりテトラの好きなものは見つからない。わたしの好きなものも「いや」ばっかりで、だんだんと悲しくなってきた。

 そして、ついにわたしもガマンができなくなってしまった。


「なによ! そんなにきらいなものばっかりなら、ずっとひとりでいたらいいんだわ!」


 わたしのどなり声にびっくりしたテトラは、大きなお空の目をさらにまんまるにした。それから、少しかんがえるようなかおをして、ちいちゃな声でこう言った。


「ひとりは、世界でいちばん、いやよ」

 

 わたしはびっくりして「べんきょうよりも?」ときくと、テトラは「べんきょうよりも」と答えた。


 それから、


「わたし、あなたといっしょに遊ぶのが好きみたい」


 と言って、まんまるほっぺをまっ赤にした。


 さわぎを聞いて、おくからおばちゃんが出てくる。手には携帯電話(けいたいでんわ)があった。電話の向こうでママがカンカンになっていたけど、もういいんだ。


 だって、テトラの好きなものがわかったんだもの!


 さむ空の下、テトラと手をつないで帰る。テトラの手はポカポカと温かく、商店街はキラキラとかがやいて見えた。



 

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― 新着の感想 ―
 なんでも気に入らない点ばかりに注意が向いて、いやいやと言ってしまうけど、主人公のコとの触れ合いは好きになり、一緒に好きなもの探しするのも特に断らないテトラちゃんとの会話描写や探し物、微笑ましくて良か…
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