テトラのすきなもの
世界でいちばんかわいいテトラ。サラサラのかみの毛も、お空のいろの目も、セルロイドのお人ぎょうみたい。
でも、あの子はみんなにきらわれている。
だって、わがままなんだもの!
砂ばであそぼうと言っても
「おくつがよごれるから、いや!」
おままごとをしよう言っても
「子どもやくはいや! お母さんやくは、もっといや!」
かんしゃく玉がいつも大ばくはつ!
いっしょに遊んでいても、ちっともたのしくない。
そんなだから、テトラはいつもひとりぽっち。
あやとりも、お絵かきも、ひとりでやってた。
わたしは、そんなテトラがかわいそうで…………ほんのちょっぴり、かっこいいと思ってた。
だから、ある日、こっそりときいてみたの。
「テトラは、なにが好きなの?」って。
そしたら、びっくり!
「わかんない」
テトラは自分の好きなものがわからなかったみたい。だから、あれもいや、これもいやって言ってたのね。それがわかって、わたしは少しだけテトラが好きになっちゃった。
「ねえ、それなら、いっしょにさがしに行かない?」
「え?」
「テトラの好きなものを、さがしに行きましょうよ!」
こうして、わたしとテトラはふたりでぼうけんに出た。ママたちに見つからないよう、こっそり公えんをぬけ出して、商店街へ。もうすぐクリスマスをむかえる商店街は、どこもかしこもピカピカだ。
「ママとは、いつもここでお買いものするの。テトラはなに屋さんが好き?」
「知らない」
「それじゃあ、じゅんばんに見ていきましょ!」
わたしはテトラの手を引いて、じゅんばんに見ていくことにした。まずは八百屋さん。
「アタシ、ピーマンきらい」
つぎは、本屋さん。
「おべんきょうは、いちばんきらい!」
さいごに、わたしのいちばん好きなお店——お花屋さんにやってきた。
ここが好きじゃなかったら、どうしよう。テトラの好きなものは、商店街にないのかも。
むねがキューっとなった。それでもテトラと手をつないで、お花屋さんの入り口に立つ。
「ごめんください」
いつもみたいに大きな声で叫ぶと、お店のおくからおばさんが「あらあら」と出むかえてくれた。
「こんにちは、アサちゃん。きょうはどうしたの?」
「こんにちは、おばさん。きょうはね、テトラの好きなものをさがしにきたのよ」
おばさんはテトラを見て、目をまんまるくさせた。きっとテトラがあんまりにもかわいいから、びっくりしたのかも。
おばさんはまた「あらあら」と言うと、ほっぺたに手を当てた。
「それはこまったわね。ここにあるかしら?」
「それはわからないわ。ねえ、さがしてみてもいい?」
「ええ、どうぞ。おばちゃんは、お店のおくのほうを見てみるわね」
そう言って、おばちゃんはまた引っこんでしまった。どうぞ、と言われたわたしとテトラは、えんりょなくお店の中を見わたした。
「ねえ、この花は?」
「色がいや」
「じゃあ、こっちは?」
「形がへん」
やっぱりテトラの好きなものは見つからない。わたしの好きなものも「いや」ばっかりで、だんだんと悲しくなってきた。
そして、ついにわたしもガマンができなくなってしまった。
「なによ! そんなにきらいなものばっかりなら、ずっとひとりでいたらいいんだわ!」
わたしのどなり声にびっくりしたテトラは、大きなお空の目をさらにまんまるにした。それから、少しかんがえるようなかおをして、ちいちゃな声でこう言った。
「ひとりは、世界でいちばん、いやよ」
わたしはびっくりして「べんきょうよりも?」ときくと、テトラは「べんきょうよりも」と答えた。
それから、
「わたし、あなたといっしょに遊ぶのが好きみたい」
と言って、まんまるほっぺをまっ赤にした。
さわぎを聞いて、おくからおばちゃんが出てくる。手には携帯電話があった。電話の向こうでママがカンカンになっていたけど、もういいんだ。
だって、テトラの好きなものがわかったんだもの!
さむ空の下、テトラと手をつないで帰る。テトラの手はポカポカと温かく、商店街はキラキラとかがやいて見えた。




