第24話 キャンプファイアー
討伐後の事後処理を終えると、騎士団員たちは早速ビックベアを振る舞う準備を始めた。
調理担当の団員たちがビックベアを解体していくそばで、他の団員たちが木材を集めて組み合わせている。
マーガレットが不思議に思ってみていると、あっという間に完成した。
(あれは、キャンプファイアーの組み木だ!)
そうこうしているうちにグラスが配られ、アーサーが皆の前に進み出た。
「今回も無事にビックベアを討伐できたことを嬉しく思う。よく食べよく飲み、各々英気を養うように。乾杯!」
アーサーの挨拶に、わぁと歓声が上がった。
マーガレットもグラスに口を付けるが、まだビックベアの肉を食べる勇気はなかった。
その時、アーサーがマーガレットに近づいてきた。
「楽しんでいるか?」
「はい、ありがとうございます」
「ビックベアの肉は焼き立てが一番美味いんだ。良かったら食べてみないか?」
アーサーが差し出した皿には、数切れの肉が湯気を立てている。見た目は、普通の肉と変わらなかった。
「ありがとうございます。いただきます」
わざわざアーサーが持ってきてくれたのに、食べないわけにはいかない。マーガレットは意を決して肉を口に運んだ。
「……!美味しい!」
「そうだろ!」
マーガレットが驚くと、アーサーの顔がパッと明るくなった。
想像していた臭みはほとんどなく、噛むと肉の旨味が口一杯に広がった。
気がつくと、マーガレット皿から肉はなくなっていた。
そのタイミングで、アーサーがホットワインを手渡してくれた。
「ありがとうございます」
マーガレットは礼を言って受け取った。
1口飲むと、ノースフォード辺境領の冬の寒さに冷えた身体が、芯から温まるようだった。
「魔物のお肉は初めてでしたが、臭みがなくてとても美味しかったです」
「良かった。ビックベアはあまり出没しないが、討伐できたときは肉はこうして振る舞うし、毛皮は城下の職人に渡して加工して販売している。我が領の貴重な資源だ」
「そうなのですね」
アーサーの説明に頷き、マーガレットがふと夜空を見上げると、満点の星空だった。
「うわぁ…」
マーガレットは思わず声を漏らした。
ここには前世と違い、夜の街を照らす光は少なく、今はキャンプファイアーの火しか灯りはない。
その分、たくさんの星がはっきりと見えた。
マーガレットにつられて、アーサーも夜空を見上げた。
「…綺麗だな」
「…はい、とても」
二人で並んで座り、星空を眺めながら他愛ない話をしていると、不意にアーサーが上着を脱いでマーガレットの肩にかけた。
「夜は冷える。風邪を引いてはいけないからな」
「すみません、ありがとうございます」
マーガレットは、アーサーの気遣いに胸が暖かくなるのだった。




