第15話 まさかのテンプレ展開!?
パーティーを無事に終えたマーガレットとアーサーが、王都を発つ日になった。
「お父様、お元気で。」
「マーガレットも身体に気をつけて。アンも息災でね」
「ありがとうございます。旦那様もご自愛ください」
「レスター侯爵、お世話になりました。ノースフォードにいらっしゃるときは歓迎致します」
「ありがとう。マーガレットをよろしくお願いします」
ジョセフに別れを告げ、一行は王都を後にした。
王都を起ったときは曇りだったのが次第に雨が降りだし、ノースフォード領に近づくにつれて雨足が強くなっていった。
(この世界にも台風とか秋雨前線ってあるのかしら)
マーガレットがノースフォード領に来たときは夏だったが、今は秋になった。前世では台風や秋雨前線の影響で雨が続く時期だ。
窓の外を眺めながらマーガレットがぼんやりとそんなことを考えていると、不意に馬車が止まった。
「外の様子を見てくるから、2人は中で待っていてくれ」
アーサーはそう告げると、雨避けのフードを被って出ていった。
しばらくして戻ってきたアーサーは、フードを被っていたにも関わらずびしょ濡れだった。
「大雨の影響で、この先の川が増水して橋が通行止めになったそうだ。今から近くの街に向かって、そこに泊まることになる」
「分かりました。雨のせいなら仕方がありませんね」
アーサーの説明にうなずいたマーガレットだったが、ふとある予感がした。
(まって、これってフラグが立ったやつじゃない!?)
前世で読んだ少女漫画だと、こういうときは大抵、宿の部屋が1部屋しか空いておらず、男女が同じベッドで寝ることになるのがお決まりの流れだ。
(いや、まだそうと決まったわけじゃないし…)
マーガレットの思考をよそに、馬車は最寄りの街に向かっていった。
街に到着する頃には、雨のせいもあり辺りはすっかり暗くなっていた。
一行が街で唯一の宿に入ると、すぐに主人が出てきた。
「いきなりですまないが、今夜泊まることは可能だろうか」
アーサーの頼みに、主人は手元の帳簿を確認す。
「申し訳ございません。今夜は雨のせいでこの街に足止めされた方が多く、1部屋しか空いておりません」
(やっぱりそうなるかー!!)
マーガレットは心の中で盛大に肩を落とした。
将来的にはアーサーと夫婦になり、寝室は同じになるのだが、今はまだ気持ちの準備ができていない。
しかし、この街には他に宿はないからどうしようもなった。
アンと御者は従業員用の仮眠室を貸してもらうことになり、自ずとアーサーとマーガレットは同じ部屋に泊まることになった。
せめてベットが2つあることを願うマーガレットだった。
部屋を案内してくれた従業員がいなくなると、2人の間に気まずい空気が流れた。
マーガレットの願いも虚しく、ベッドは1つしかなかった。
「マーガレットはベットを使ってくれ。私はソファで寝ることにする」
「いいえ、一緒にベットを使いましょう」
マーガレットが間髪いれずに言うと、アーサーは目を見開いたあと顔を赤くした。
それを見て、マーガレットもつられて頬が紅潮するのが分かって慌てて顔をそらす。
「とにかく、もう夜も遅いですし、寝ましょう」
「…あぁ、そうだな」
「…では、一旦部屋から出てください。着替えますので」
マーガレットの言いにくそうに告げると、アーサーは再び顔を赤くした。
「すまない。終わったら言ってくれ」
2人は交互に着替えを済ませると、眠りについた。




