第11話 前世の便利グッズを作ったら、商品化することになりました
アーサーとオリヴァーに啖呵を切った手前、マーガレットも何かしら行動しなければならない。
そこで、手持ちのドレスで、デザインが古いものをリメイクして売ることにした。
王都から離れ、婚約者もいるマーガレットはパーティーに参加する機会が以前と比べて格段に減るため、何着かドレスが減ったところで問題はない。
幸い、この世界では裁縫は淑女の嗜みとして一般的なため、技術面の心配はない。
「何を作ろうかしら…」
色とりどりのドレスたちを前に、マーガレットは腰に手を当てて考える。
「アン、何がいいと思う?」
マーガレットは裁縫道具の準備をしているアンに声を掛けた。
「そうですね、やはり普段使いができるものが需要があるかと思います」
「普段使いができるもの…ハンカチはつまらないし…そうだ、あれにしよう!」
ちょうど良いものが思い付いたマーガレットは、善は急げと作業に取り掛かった。
マーガレットが作るのは、仕切り付きのトートバッグだ。
通常のバッグの中に3つの仕切りを作り、一目でどこに何があるか分かるようになっている。
前世では、通勤バッグの中を整理するのに愛用していた。
アンや城のメイドたちが街に買い物に行くついでに、完成した試作品を試してもらった。
「お嬢様、このバッグとっても便利です!お財布もハンカチもすぐに取り出せるし、買ったものも綺麗に入れられます!」
買い物から帰ってくるなり、アンが興奮気味に報告してくれた。他のメイドたちからも肯定的な感想ばかりで改善案がなかったのは嬉しい誤算だった。
「ありがとう。専門家の意見も聞きたいから、領都の商会の方を読んでくれる?」
マーガレットは苦笑しながらアンに頼んだ。
数日後、やって来たのは承認らしい恰幅の良い中年の男性だった。
「プロゾン商会のイーロン•ペゾスと申します」
イーロンは領都一の商会であるプロゾン商会の会長だという。
「マーガレット•レスターでございます。本日はお忙しいところご足労いただき、感謝したします。さっそくですが、こちらの品を商品化したく、ご相談させていただけばと思います。ぜひ手に取ってご覧ください」
ではお言葉に甘えて、とイーロンはアンが持ってきた仕切り付きトートバッグを手に取った。中を見たり、裏返したりじっくり観察している。
「失礼ですが、このバッグはマーガレット様がお作りになられたのですか?」
「はい、手慰みに何か実用的なものを作ろうと思いまして。侍女たちに使ってもらったら好評でしたので、商品化できないかと」
マーガレットはにっこりと微笑んだ。まさか、ノースフォード領の財政状態を改善させるためだと言うわけにはいかない。
「素晴らしい!生地の質を変えれば、富裕層から庶民まで誰でも手に入れられる商品になります!」
イーロンは生粋の商人なのだろう、商機を逃すまいと目には強い光が宿っていた。
そこで、マーガレットは新たな提案をした。
「ありがとうございます。では、プロゾン商会にこのバッグのアイデアと、今後10年間の独占販売権をお譲りします。その代わり、毎月売上の15%をいただくのはいかがでしょう?もちろん、今すぐお返事いただかなくても結構です」
「お気遣い痛み入ります。では、マーガレット様のご提案を受けさせていただく場合は、後日正式な契約書を届けさせましょう」
「良い返事をお待ちしています」
この提案が実現すれば、何もしなくてもお金が入ってくるようになる。マーガレットは期待に胸を弾ませた。
3日後、プロゾン商会からイーロンの署名入りの契約書が2通届いた。
同封されていた手紙によると、1通はプロゾン商会への提出用、もう1通はマーガレットの控えだということだ。
(イーロン様は優秀な方ね)
マーガレットは契約書の内容に不備がないか確認して、署名をする。
「いちおうアーサー様に報告しよう」
署名した契約書をプロゾン商会に届けるように指示を出した後、マーガレットは控えの契約書を持ってアーサーの書斎に向かった。




