私達の種族名?
ハイハイして、二足歩行を覚え、言葉を覚えて…
色々と知る事が増えて驚いた。
どうやらここは地球ではないようだ、とても不思議な世界…
言語が地球のものとは明らかに違っていたが、語順が同じなので覚えやすかった。
食べ物は前世の物とさほど変わらないが、食器などを見ると知らない材質で出来ている。
私はこの建物の外には出たことが無いのだが、私が建物の外へ出ようとすると執事やメイドに慌てて止められた。
たまに私が執事やメイドなどに話しかけると、皆が気不味そうに素っ気なく答える。
次第に話かける事も少なくなって、周りからは私が内気に見えることだろう。
時折ゼイールが顔を見せて遊んでくれようとした、私を高い高いして床に落とした時は私より先に泣いていた。
まったく、この兄は憎めない性格をしている。
よくゼイールが私に絵本を読んでくれたりした。
始めて見る文字だが、何事も慣れだ、すぐに文字を覚えた。
ゼイールに連れられ、手を繋いで建物の中を歩く。
ゼイールの母親レイシルに会うと、相変わらず私を睨む。よほど嫌っているのだろう。
不思議な事に、この一族は全員背が低い、遺伝だろうか?
しかし私は普通に成長している、私は今年で5歳になるが、10歳のゼイールと同じくらいの身長なのだ。 しかも私は3頭身ですらない、いたって普通の人間だ。
私は母親に似たのかもしれないな。 見たことは無いが、そういう事にしておこう。
それと、この世界の風習なのか、髪の毛が伸びてもあまり切ることはせず、私は髪の毛を後ろで1つの三つ編みにされている。
ゼイールも三つ編みにしているが、私以外の人間は皆、赤毛の剛毛で三つ編みを3〜4つほど編んでいた。
私の髪の毛は金髪なのだが、毛先が赤毛である。これも遺伝なのだろうか。 洒落た世界だ。
私は皆と違った見た目をしているが、別に困る事はない。 強いて言うなら、皆が私を『可哀想に』と言わんばかりの顔をする事くらいか。
そんな中で私が落ち込む事なく過ごせるのは、ゼイールの存在が大きいだろう。
母親の目を盗んで私に会いにやってくるゼイールを、私は自然と『兄様』と呼んでいた。
7歳になった私は、12歳のゼイールと共に勉学をする事になった。
この建物の中にある図書室へ入ると、沢山の本や、ハシゴの付いた大きな黒板と教壇があった。
そこに眼鏡を掛けた老人がやって来て、黒板に文字を書いている。
「というわけで、え〜…。 グゥ…」
「ネルデ先生!」
「ハッ! 失礼…。では今日から歴史の授業を始めます」
「しっかりしてくれ」
ネルデ先生とゼイールのやり取りのせいもあり、私はこの時間がわりと好きになった。
「では、我々ドワーフの歴史ですが。
神が我々を作った時は、今のような姿ではなく、とても小さい幼虫のような見た目でした。
それで…進化を進めるうちに、このような見た目になったわけですな。
我々ドワーフは代々鍛冶師の一族であり、最初に作られたのは神器だと言われております。
え〜……グゥ… ハッ! 寝ておりませんぞ!」
「いや寝てたよ」
ん? ドワーフ? 何やら不思議な話を聞かされているが…歴史の授業に、そんな創作物語を聞かされても…もしやボケているのか?
「兄様、ドワーフって…?」
「ドワーフっていうのは俺達の種族名だよ。 そうか、トレイスは始めて聞く話だもんな。 種族名なんて普段は使わない言葉だし」
「ドワーフが…私達の種族名?」
はて? どういう事だ、ゼイールまで変な事を言い出したぞ。
いや待て。 そう言われてみれば…私以外の人間の見た目は、ドワーフそのものではないか。
「いやいや、トレイス坊っちゃんは厳密にはドワーフとハイヒューマンの混血ですからな。 ドワーフだと名乗ると嫌がる不敬な輩がおりますゆえ、お気をつけを。 では授業を進めますぞ」
ハイヒューマン? なんなんだこの世界は… 不思議だとは思って居たが、ここまで来ると面白い。
「兄様。 ハイヒューマンって?」
「ハイヒューマンは。 トレイスの母親のミラおばさんの種族だな。 寿命が短い代わりに繁殖力が高い。 それに発想力も豊かだ、知りたいって欲がそうさせるって聞いたぞ」
なるほど…? 色んな種族が居るのかな?
それにしても、ドワーフに転生したのはありがたいな。
そうか…私はこの不思議な世界でも、物創りが出来るのだな。
1日目の勉学が終わると、私はメイドに連れられて、この建物の外にある小屋にやって来た。
今日からここで暮らすらしい。 なんと城から追い出されてしまった。
週間に3日、午前中は勉強で、あとは自室に籠もる日々が始まったのだ。
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は小吉です( *・ω・)




