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ツギハギの男⑤


 3日後、朝から忙しなく祖父が舞い上がっていた。


 寝ずに進めていたオートマタの技術研究をほったらかし、孫のために動く。


 合コンだと言うのに、なぜか嫁探しと思ったらしく、タンスの奥から若い頃のスーツを引っ張り出して、ヴィクターに着せては脱がせを繰り返した。


 祖父のはしゃぐ様を見て、ヴィクターもつい楽しくなって2人でスーツを選んでコーディネートを模索した。


 そして、いつしか夜になってしまった。


「ねぇ、やっぱり変じゃないかな? これ」


「何を言うとる!完璧じゃ! ワシの若い頃にソックリじゃわい!」



「アハハ ありがとう。 余計心配になったよ」


 ピンポーンと玄関から呼び鈴が鳴る。迎えが来たようだ。


「もう来たみたいだ。 じゃあ行って来るよ、ちゃんと戸締りして寝てね? 最近物騒だからね」


「ワシの心配なんかするでないわい。 良い嫁さん見つけて来るんじゃぞ! 愛嬌さえあれば構わんからな!」


 そう言って楽しげに送り出す祖父。


 ヴィクターはそれを笑いながら聞き流し、襟を整え、玄関を開けた。


 すると馬車の運転手がニコニコとお辞儀して、ヴィクターを迎えた。


「ヴィクター様、お迎えにあがりました。 どうぞこちらへ」


 2人で庭に停まった馬車へと向かった。


「送迎ありがとうございます。 立派な馬車ですね。 ご迷惑ではありませんか?」


「いえいえヴィクター様! 光栄でございます! ヴィクター様の送迎を任されたと妻に話しましたら、久々に褒められました!」



「アハハハ 本当ですか? ご迷惑でないなら良かった、では目的地まで宜しくお願いしますね」


「はい!かしこまりました! それでは足元にお気をつけて」


 運転手は小さな階段を出し、ヴィクターはそれを登って馬車に乗り込む。


 普段見ることのない豪華で手触りの良いフカフカの車内に、ヴィクターは自然と笑みがこぼれた。


「合コンか。 そういえば、俺も合コンなんて初めてだ。 少し緊張してきたな、女性と何を話せば良いんだろう? いや待て、俺は貴族の坊っちゃん達のお目付け役だ、そんなことは考える必要もないな」


 ヴィクターは考えるのをやめた。


 本当ならモテたいと思うのが思春期の男の性だが、日常的にモテて来たヴィクターには無縁の感情であった。


 しばらくして馬車が止まり、ヴィクターは馬車を降りてレストランへと入って行った。


 店員に言われるがまま奥の一室に入るとそこには、席に座らずその場に立ったまま固まる貴族の息子達の姿があった。 女性はまだ来ていないようだ。


 ダイゼルがヴィクターの存在に気づき、ヴィクターに助けを求めて来た。


「ヴィクター!助かった! よく来てくれた!」


「ダイゼル…コレはどういう状況だい? 大の男4人が揃いも揃って、なぜ皆が立っているのか俺は不思議でならないよ」



「合コンの流れが分からんのだ! 頼む!教えてくれ!」


「ん〜…まずは席に座ろう。 男女が向かい合う形が良いんじゃないか? 自己紹介もしやすいだろうからね」



「そ、そうだな! 皆のもの!席に座ろう!」


「そんなんでよく合コンなんてやろうと思ったね」



「実はだな…意中の女性が居るんだ…。 僕達はその女性のグループにそれぞれ想い人が居てね、思い切って声をかけてみたらこの有り様というわけだ」


「なるほどね、しかしよくカブらなかったね。 貴族を虜にするなんて、いったいどんなグループなんだい?」



「聞いて驚くな? イカした魔導モービル乗りのグループさ。 よく週末になると甲高い蒸気音が聴こえてくるだろう? あの音色に心を奪われたんだ。 それで僕達は、夜中に音の正体を見てやろうと思って出向いた。 そしたらそこに彼女達が居たんだ、僕達を威嚇するような鋭い瞳に衝撃を受けてね、カッコいい魔導モービルに乗って颯爽さっそうと走り去ってゆく彼女達にハートを撃ち抜かれたと言うわけさ」


「おい、それって… まさか暴走族じゃないか!? まずいだろうソレは! 君達の家柄を彼女達は知っているのか!?」



「ヴィクター…、そんなことを言ったら彼女達に気を遣わせてしまうだろう? あとボウソウゾクとはなんだ?」


「いやいやいや!まずいぞ!とんでもない所に来てしまった! やっぱり帰っていいか? 急用を思い出した!」



「ま!待ってくれ! 頼む!一生の頼みだ! 君達!何をボサッと見ている!君達もヴィクターを引き止めろ! 我々の恋の行く末は!この男にかかっているのだぞ!」


 大の男4人が大慌てでヴィクターにしがみつき懇願こんがんする、ヴィクターは身動きが取れず語気を荒らげた。


「いいや!『面倒事には絶対関わるな』それがお爺ちゃんからの遺言だ!」


「待て待て!ジョセフ技師はご存命だろう! 勝手に殺すな!何が君をそうさせる!?」



「貴族と暴走族の恋仲を取り持てなんて暴論を聞かされたからだよ!」


「どちらも似たような物だろう!」



「似ててたまるか! よく知りもしないで勝手な事を言うな!」


 そんな押し問答をしていると、コンコンとノックをする音が聞こえ、個室の扉が開いて店員が入って来た。


「あの〜…。 お連れ様がご到着されましたが…。 お通しして構いませんか?」


「おお! そうか来たか!通してくれ! フハハハッ!ヴィクター! もう後戻りは出来ないぞ!覚悟を決めるんだな!」


「ぬぁー!なんてことだ! コイツらバカ貴族に何かあったら俺の首が飛ぶ! 文字通りに…ッ!」


 ヴィクターは気が動転して不敬発言を放ってしまった。 それを聞いたダイゼルが、その発言を有効利用する。


「お〜っと、今バカ貴族と聞こえたぞ?刑罰ものだな。 しかし聞き流してやろう。 その代わり、今夜は頼んだぞヴィクター。 フハハハッ! 楽しい夜の始まりだ!」


 ヴィクターは困り果ててため息を吐き、苦い顔を見せる。

 その後、店員に連れられて5人の女性が部屋に入って来た。


読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は吉です( *・ω・)


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