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ツギハギの男②

 人間共の拘束が成功して、少しばかり優越感が滲み出る感覚を覚えた。


 色々と聞きたい事があるので協力してもらおう。


「魔粒子の感知が出来なくて驚いたかい? それは魔法ではなく、紛れもなく物理拘束だからね」


「これが魔法じゃなくて物理!? はあ!? チクショウ!なんだコレ!痛えッ!」

「クッ…! こんな!わけわからん物理拘束があってたまるか! クソッ!離せ!」

「何よコレ!痛い痛い痛い!!離してよ!」


 愉快な光景だ、そんなに暴れても無駄なんだがね。


「はははっ 私は人間が嫌いでね。 そこの女は魔導師だろう? 私を見て何も感じなかったかい? 種族くらいは分かるのだろう? あ〜…それとも、そもそも魔粒子の感知すら出来ない役立たずだったのかな?」


「感知くらい出来るわよ! アンタに魔粒子を感じなかった! 種族って…! どう見てもハイヒューマンでしょ! 離しなさいよ!この最低の卑怯者ッ!」



「はははっ! 私の魔粒子を感知出来なかっただって? それは朗報だね ではコレならどうかな」


 左耳のピアスを1つ外すと、莫大な量の魔粒子が私の身を包み込んだ。


「さあ、良く見ろ人間、何を感じる? 少しばかり感想など頂けると助かるのだがね。 勝てそうかい?」


「…ッッ!! いやァァァアアアッッ!! な、なんなのよ!アンタ…ッ!!」

「おい!どうしたエリザ!!」

「何がどうなってるッ!答えろッ!」



「あ、あり得ないわよ!こんな…ッ! 混血…!? 尋常じゃない量の…魔粒子ッ! まるで肥溜めの異臭でも嗅いでいるような…! (おびただ)しい数の悪霊に取り憑かれた人を見るような…! 心底嫌な感覚ッッ! ゔェェ…ッッ!」


「はははっ 文才があるようだね。 その表現はかなり不快だが、褒め言葉として受け取っておこうか」


 長年体内に貯めておいた魔粒子を放出すると、人間にはそう感じるのか。 面白いな。


 ルーン文字の封印術は良好のようで安心したよ。

 実験結果としては申し分ない。


「ありがとう。 そろそろ魔粒子の感知を解くと良い、床を汚されると困るのでね。 はははっ」


 女は辛そうに深呼吸しながら震えている。


 私はピアスを着け直し、次の質問に移る。 知りたいという欲求には逆らえないものだ。


「そこの男。 君は剣士だね? 少し私の疑問に答えてくれないか。 見た所、君の剣はただの鉄なのだが…鉄でミスリルは切れないだろう? 何でそんな物を装備しているんだい? 鉄の剣でミスリルを切る方法があるなら教えてくれないか?」


「…は?? だ、誰が教えるか!」

「…絶対に言うなよ…用済みになったら殺されるぞ…」


 なにやらコソコソと話をしているが丸聞こえだ。

 実に人間らしい愚かな思考で感心するね、その威勢がどこまで続くか見ものだ。


 でもまあ、夜は長いからね。じっくり楽しもうか。


「あ〜、勘違いさせてすまない。 べつに君達から聞き出せなくても私は困らないよ。 人間は腐る程居るからね。 あっ、それとね。あまり動かないほうがいい。手足が無くなってしまうよ? さ〜て、私は先程の怪我人の手当てをするとしようか。 しばし待っててくれ、スープでも眺めながらね。 はははっ!」


 人間共の青ざめた表情を横目に寝室に入ろうとすると、中からロックが出て来た。


「先生、麻酔が終わりました」


「ありがとう、容体は?」



「かなり危険な状況ですね、ここの人工血液だけでは足らないかも知れません」


「ん〜血液か…」


 人間共の方に目をやると、彼らは恐怖に歪んだ表情をして震えていた。


「…大丈夫だろう、3人分はあるからね。 血液型が合えばの話だが」


「ちょ!ちょっと待ってくれ!どういう意味だ今のは!」

「俺達がアンタらに何をしたって言うんだよ!」

「いや!離して!痛い!いやァァ!血が出てる!」



「だから動くなと言っただろう、まったく人間は愚かだ。 人の話はちゃんと聞くように。 心配するな、まだ殺しはしない」


「まだ…? まだって言ったか!?」

「こ、殺されるのか? 俺達…」

「いやァァァアアア!!」



「本当に五月蝿い連中だ、叫んで何かが変わるとでも?」


 人間共の悲痛な叫びを無視して寝室に入ると、ツギハギだらけの男がベッドの上で眠っていた。


 ボロボロの右腕と左足が千切れかけ、傷口を紐で縛って止血されていた。


「あ〜これは酷い…本当によく生きてられるね。 この状態なら死んでいてもおかしくないのに。 ロック君、とりあえず輸血の準備だね。 この彼と人間共の血液検査をしてくれ。 その間に私はキュクロプス達と接合部の切除と洗浄をしておくよ」


「はい、わかりました!」


 しばらくして、検査の結果が出た。 そして驚くべき事がわかった。


「先生、彼の血液なんですけど…どうやら人間ではなかったようです」


 ん? 人間ではない?

 いや、もしやとは思っていたが、やはりこの尋常ならざる生命力は別の種族に由来しているのか。


「それで? 人間ではないとしたら、彼はいったい何者なんだい?」


「はい、『ヴァンパイア』ですね。 ヴァンパイア特有の赤いの瞳も確認しました、間違いありません。 なので、どの『魔導傑出種族まどうけっしゅつしゅぞく』の血液とも適合します」



「おお!つくづく運が良いねぇ。 そうかヴァンパイアか。 では、まずはあの女から血液を取るとしようか。 わざわざ輸血パックを消費するのも勿体ないし、新たに人工血液を作るのは面倒だ。 それに…少しは大人しくなるだろうからね ははっ」


「ハハハ わかりました、連れてきます」


 ロックは笑いながら部屋を出て、女を椅子ごと担いで連れて来た。


 しばらくの間、女の悲鳴が家中に響く。

 それを聞いた男共は恐怖で顔を歪ませ涙を流す。


 その女の叫び声は外に漏れ、夜空にこだまする。

 しかしこんな夜の森近くに人など来るわけもなく、次第に悲鳴が消えていった。


 そして、ツギハギ男の大手術が始まった。



読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は小吉です( *・ω・)


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