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ツギハギの男①


 ひとまず、この人間共に自己紹介くらいはしとこうか。


「私はトレイス、こちらは助手のロック君。 2人で鍛冶屋をしている。 どうぞよろしく」


「おっと!紹介遅れました、俺はグローと言います。いや〜助かりました、お強いんすね」

「俺はセドリック。 実は俺達『ハンター』でして、今日はゴブリンに初挑戦だったんですけど…やっぱまだ早かったようです」

「マジ助かった〜!ホント感謝で〜す!正直今回はマジで死ぬかと思った〜。 あっ!あたしエリザ!よろしくねっ!」



「それは大変だったね」


 毛ほども興味ないのだが、旅に出て早々ハンターに出会でくわすとは幸運だな。


 さてと、初キャンプだが、その前にオートマタの残骸を回収しなくては。


「ロック君、サンプルの回収を頼むよ。 私は夕食の準備をしよう」


「わかりました。 『ハウス』はこの辺りでいいですか?」



「そうだね、どこでも構わないが、サンプルの回収もあるし、ここで良いだろう」


 私達の会話を聞いて、人間達は不思議そうな顔をしている。


 ロックがポケットから赤いテトラゲートを取り出し、地面に転がした。


 その正4面体が浮遊して、4枚の三角形に分かれ、四隅の角を作り、正方形の光りのゲートを生成する。


 そのゲートが頭上まで浮かび、地面に向かって降りてくる。


 すると金属製の四角い建物が現れ、4枚の三角形が浮遊しながら元の形に戻り、ロックの手元に吸い込まれるように戻っていく。


「さあ入ってくれ。 夕食にしよう」


 建物の中に入り、明かりを点けた。 


 中は広々としていて、キッチンにテーブル、椅子、寝室などもある。


 どこにでもあるような普通の設備だ。


「何じゃこりゃ…すげー…。 お、お邪魔します」

「なんかの魔術か…? こんなの見たことも聞いたこともない…」

「なにこれ家じゃん!ヤバッ!どうなってんの!?」


「そこに座っててくれ、今夕食を作るからね」


 人間を席に座らせて夕食の準備に取り掛かる。 人間共は少しソワソワした様子でこっちを見ている。


「あの〜…なにか手伝いましょうか?」


「いや、大丈夫だよ。 すぐに出来るから座って待つといい」


 湯沸かしポットのスイッチを入れて、引き出しから粉の入った瓶を取り出す。


 5人分のマグカップを用意して、瓶に入った粉を、大きなスプーンで1杯づつマグカップに入れた。


「あ、あの…これは何すかね…?」

「この粉を食べるんですか?」

「ちょっとこれは…ねぇ?」


「ははっ いやいや、これは粉末スープだよ。 お湯で溶かすとスープになるんだ」


 ピピピッと湯沸かしポットが音をだし、マグカップにお湯を注ぐ。 粉が溶けてコンソメスープの香りが部屋中を包む。


 それが人間共の鼻腔をくすぐり、食欲をそそったらしい。 人間共の喉がゴクリと動く。


「ええ!? これがスープ!? 本当だすげー!」

「こりゃ驚いたな!美味そうだ!」

「な〜んだビックリしちゃった〜! いい匂〜い!」


 冷蔵庫の中から作り置きのサンドイッチを取り出し、その皿をテーブルの上に置いた。


 するとロックが、大きくて汚い雑巾のような物を抱えて建物の中に入ってきた。


「先生、回収終わりました。 それと…負傷者を発見しました、まだ息はあるようですが…酷い有り様で」


 見てみると、そこには虫の息のツギハギだらけの男がいた、右腕と左足が千切れかけている、他の部位もボロボロだ。


 しかし、この状態でよく生きていられるものだ。


 首にあるボルトは何だ? …少し興味が湧いてきたね。


「なるほど…これは面白い。 寝室に運んでくれるかい? それと手術の準備をしてくれ」


「はい、わかりました」


 ロックはズタボロになったツギハギの男を寝室に連れて行き、ベットに寝かせた。


 手術すると言っても私達がやるわけではない。


 キュクロプス達に連絡して、遠隔でアームを操作して勝手に手術をやってくれるのだ。


 この世界のネットで閲覧出来るのは医療関係の論文やその動画くらいのものだが、それをキュクロプス達に学習させて手術が可能となった。

 しかし不思議なのは、魔導科学の論文などは規制があるのか、まともな情報が閲覧出来ない事だ。


 恐らく何かしらの既得権益が存在するのだろう。


「なんだ、あのツギハギデブまだ生きてたのか」

「驚いたな、まったく運のいい野郎だ」

「あたし興味な〜い」


「おや? あの彼は君達のお仲間かな?」



「いやいや、仲間ではないっすね」

「必死に頼まれたから仕方なく組んでただけです」

「あたし興味な〜い」


 何か色々あるのだろうな、でも深く聞こうとは思わない。 なにせ人間の言う事に耳をかたむけようという意思が沸て来ないからな。 それに、コイツらがクズで良かった。


 コイツらに少しでも人情や優しさという物があるなら、私も人間に対して情が沸くだろうが…、私の信念が揺らぐ心配は無さそうで安心すらしたよ。


「そうか、それは良かった…。 さあ、スープが冷める前に食事にしよう」


「やったー!うまそうだ!」

「俺達は運がいいな!」

「マジ感謝〜!」



「と、その前にだ」


 腕時計の画面をタップすると、人間共の座っている椅子の仕掛けが作動する。

 肘掛けや背もたれ、椅子の足から細いワイヤーが飛び出て人間共をグルグルと拘束した。


「はあッッ!?」

「な!なんだコレッ!」

「なになに!?ちょっと!動けないんだけど!」


 血相を変えて慌てる人間共を見て、私の口元が少し緩んでしまった。



読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は平です( *・ω・)


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