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ゴブリンの群れ②


 私達は遠目からその惨状を見ていた。


「ははっ どうやら早速運が向いて来たようだ。 アレは今後の役に立ちそうだとは思わないか? ロック君」


「そうですね、探す手間が省けました」



「では行くとしよう。 初戦闘だ、あの囲まれた状況も好都合だしね」


「はい!」


 魔導モービルを吹かし、ゴブリンの群れに向かって走り出す。


「ロック君、スピードメーターの下にある青いボタンを押してくれ」


「これですか?」


 ボタンを押すと、左右の後輪の中心から禍々しいドリルが飛び出し、甲高い金属音を奏でながら回り出した。


「こいつで粉砕しよう。 ロック君、腕の見せどころだよ?」


「え! ぼ、僕に出来ますかね…?」



「弱気にならないことだ、この程度の相手に苦戦するようでは先に進めないからね」


「や、やってみます!」



「ロック君、大きいヤツは私が相手をするよ。 見たところサンプルが1体しか居ないようだからね」


「はい!わかりました!」


 アクセルをフルスロットルで突っ込み、ドリフトしながら円形に並ぶゴブリン達にドリルをぶつけ、次々と粉砕しながら轢いていく。


 1周すると、囲まれている3人の前に止まり、モービルを降りてヘルメットを外す。


 100体は居たであろうゴブリンの群れが、一気に30体ほどまでに減少した。


「なるほど、強度はこんなものか。 大したことないな」


「た、助かった…のか…?」

「誰だ? 見た感じ…メカニックのようだが…」

「誰でもいいよ!マジ感謝!ミノタウロス最高!」


 なんと都合の良い思考だろうか、人間なんぞを助けたいわけではない。


 安堵する3人に冷ややかな視線を送り、ゴブリンキングに近づいて行く。


「ロック君、こっちは私に任せて、そのまま小さいヤツを片付けてくれ」


「はい! お気をつけて!」


 ロックはモービルを吹かし残りのゴブリン達を追いかけ回す。


「おいおい!子供置いてどこ行くんだよ!」

「まずは雑魚から片付けるんじゃないか?」

「そんなのいいから!先にゴブリンキング倒してよ!」


 気が散るな、文句があるなら自分達で戦え。


 それはさて置き、お披露目といこうか。


「手始めに『スレイプニル』の実践データを取りたい。 リリス『ヴァルハラ』を起動してくれ。 スレイプニルの武装アーミングを実施する」


《ヴァルハラの起動を確認 スレイプニルの武装アーミングを開始します》


 私の靴底から液体金属が流れ出し、それがブーツを覆い、足裏に4つの蛇腹状の車輪が形成される。


 これぞ形状記憶液体金属『ステュクス』を超えた新兵器。


 與天無極神器合金よてんむきょくしんきごうきん『ヴァルハラ』である。


 その形成パターンの内、私の機動力を上げてくれるのが、この『スレイプニル』だ、見た目はローラーブレードのような物なのだが、攻撃にも使える優れものだ。


 ゴーグルを装着し、腰の道具袋から手のひらサイズの、淡く光る輪っかを取り出して頭の上に浮かべた。


「何だアレ…?」

「さぁ…なんかの魔具じゃないか?」

「ふざけてないでちゃんと助けなさいよ!」


 本当にうるさい人間共だ。


《アーティファクト『HALOハロ』の起動を確認、ゴーグルと同期します》


 ゴブリンキングに近づく私の前に、8体のゴブリンが石斧を構えて警戒している。


「先生!危ない!」


 ロックが追いかけ回していたゴブリン達が石を拾って私に投げてきた。


 その四方八方から飛んでくる石を、最小限の動きで全て躱す。


 『HALOハロ

 これは私の集中力を限界まで上げて究極の没入状態を作り出し、視野を360°まで広げ、空気中の魔粒子の流れを感知して、相手の動きを先読みする代物だ。 この程度なら止まって見える。


「おい嘘だろ!?」

「どんな動体視力してんだアイツ!」

「ただの子供じゃなかったのね!良かった〜!」


 ゴブリンキングを守っていたゴブリン達が私を円で囲み、石斧を振りかぶって襲いかかって来た。


 次の瞬間、そのゴブリン達の首が切断され、地面に頭部がゴロゴロと転がり、胴体がバタンと倒れた。


「い、今の見えたか? あいつ…何した?」

「さぁ…あの子供が回し蹴りをした瞬間に…ゴブリン共の首が転がったように見えたが…」

「やるじゃないあの子!後はゴブリンキングだけ!」


 ゴブリンキングが拳を握って格闘の構えを見せた。


「ははっ ここからは、瞬き厳禁で頼むよ」


 スレイプニルで地面を蹴って素早く移動し、ゴブリンキングを横切ると同時に、スレイプニルのかかとにある蛇腹状の車輪が開放され、1枚のブレードとなり、ゴブリンキングの頸動脈辺りの配線を切断して着地する。



 その場に居た人間とゴブリンキングは困惑した、目の前に居た子供がパッと消えたと思ったら次の瞬間ゴブリンキングの背後に居たからだ。


 ゴブリンキングが振り向こうとした瞬間、ゴブリンキングは機能停止して固まった。


「だから瞬き厳禁と言っただろう。 武装解除ディスアーミング


《スレイプニル、武装解除ディスアーミング。 お疲れ様でした》


 脚部を覆っていたスレイプニルが溶けて靴底に収まっていく。


 ゴーグルを外して周りを見ると、丁度ロックもゴブリン退治が終わった所で、私の元に駆け寄って来た。


「先生!お見事でした!」


「ロック君も中々だったよ。 スレイプニルは少し調整が必要かも知れないね」


 人間共は目と口を大きく開けて固まっている。


 気付けば、日が沈みかけて空は赤くなっていた。


「もう日が暮れるね。 夜道は危険だ、私達はここでキャンプを張るが…君達も一緒に泊まると良い。 どうだい?」


 私がそう尋ねると、人間共は互いに顔を見合わせた。


「「「は!はい!よろしくお願いします!」」」


 なんて態度の変わりようだろうか、まるで人間という生き物の縮図を見ているようだね。


 実に浅はかだ、どうなるとも知らずに。



読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は中吉です( *・ω・)


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