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聖火祭と、白いミノタウロス⑫


 未だ炎の壁は静まる気配も無い。熱風が皆の体力を削っていく。


「ゼイール殿下!」


 憲兵が声を上げた、ゼイールが目を覚ましたようだ、しかし朦朧としている様子。 ゼイールはフラフラと起き上がり、憲兵達に安堵の表情が見えた。


「兄様、良かった目が覚めたんですね」


「おお…トレイス…。 奴はどうなった…?」



「兄様の魔法のお陰で、どうにか倒せましたよ」


「ははっ… あのぶっ倒れてんのがそうか…。 お前がやったのか…? さすが俺の弟だ…。 肩を貸してくれ…奴と話がしたい」 


 ゼイールに肩を貸し、一緒にミノタウロスの元へ向かう。ミノタウロスは気絶して動けずにいる。


「憲兵…拘束しろ…。 コイツには…聞かなきゃならない事が山程ある…」


「「はっ!」」


 ミノタウロスは身体を鎖でグルグル巻きに拘束され、上体を起こされた。


 ゼイールが炎に手をかざすと、私達を囲っていた炎がフッと消え、涼しい風が流れ込む。


 しばらくして、憲兵がバケツを持って来てミノタウロスに水を浴びせた、するとミノタウロスが目を覚まし、困惑している表情を見せ、辺りを見渡す。


「こ、ここは…? 痛っ…! 僕はいったい…」


「気がついたか。 さっそくだが、お前の所属と目的を答えろ」


 ゼイールは痛みを堪えながら、真剣な表情を見せた。


「え…? 目的…? よ、よくわからない…。 気がついたら…ここに…」


「よくわからねぇ奴があんな動きするわけねぇだろ。 それに、お前は『エーテル・フォーマ』をどこで覚えたんだ。 アレはエルフに伝わる秘伝魔術だぞ」



「エーテルフォーマ…? それは父に教わったんだ…。 まさか…魔法を使っていたのか…。 どうやら僕は君達に迷惑をかけたみたいだね…。 ごめん…」


「ごめんで済むかよ。 洗いざらい話すまで逃さねぇからな、覚悟しろ」


 なにやら記憶が無いような反応だ、そんな事があり得るのか? そういえば、あの変な機械を引っこ抜いてから気絶したな。


「兄様、もしや首に付いていた機械が関係しているのでは?」


 そう話す私を、ミノタウロスが驚いた顔で見ている。 なんだ?知り合いにでも似ているのか?


「君は…。 もしや『ルーンブレンド』なのかい…?」


「ルーンブレンド? なんです? それは」


 聞いた事のない言葉だ、何のことだ?


「えっと…ルーンブレンドっていうのは…ドワーフとハイヒューマンの」


「黙れ!俺の弟はドワーフだ! 憲兵!コイツを連行しろ!」


「「はっ!」」


 言葉を遮るように怒鳴られて、ミノタウロスは何かを察して言葉を飲んだ。


 憲兵2人がミノタウロスの両脇を持ち上げて立たせ、そのまま城へ連れて行かれた。


 その後ミノタウロスは尋問される事となった…。




 …私もゼイールと同席して、その尋問を見ることに。


 尋問室の隣の部屋で、マジックミラー越しに尋問風景を眺めていたのだが、そのミノタウロスは戦っていた時の粗暴な印象とは違い、どこか紳士的に見える。


 ミノタウロスは、自らを『No.69』と名乗り、エルフの父とミノタウロスの母を持ち、今まで『空中都市アールヴヘイム』という場所の実験施設で育てられていたという。


 名前がナンバーなので親近感を覚えたが、そんな事より気になる事が多い。


「兄様、空中都市なんてあるんですか? どいう場所なのか想像出来ないんですが」


「ん〜俺も見たことは無いんだけどな。 たしか…空に浮いている島だって聞いた事がある。 エルフの国がある島だ。 空飛ぶ原理は謎だがな」


 まるで御伽噺おとぎばなしだな。 まぁこんな世界だ、いちいち驚くまい。


「彼は…これからどうなるんでしょうか」


「さぁな。 こっからは大人の仕事だ、俺達の出る幕は無い。 エルフの国が絡んでいるとなれば、これは侵略行為…国際問題だ。 悪けりゃ戦争にもなりかねんからな、慎重にならざるを得ない。 長引くだろうな」


 たしかに、それもそうだな、政治となると王や大臣達の仕事だ、首を突っ込むとのはよそう。


 しかし攻め込まれた以上、この国は今まで通りとはいかなくなる。 このままだと、地下に居る事が不利に働くだろうからな。


 エーテルフォーマとかいう魔術が気になるが、これ以上私は関われないだろうし。


 あと気になる事といえば…あの機械だ。


「彼の首に付いていた機械は、どうなりました?」


「今工房の職人達が調べてる、何か手がかりでもあれば良いけどな。 もしアレが、人を操る機械だとしたら…まずい事になる」



「人を操る機械…。 『エルフが送り込んだ』というのがミスリードになる可能性だって出て来る。 いつでも戦争を誘発しかねない…」


「そういう事だ」


 その時、突然ドアが開いて執事が入って来た。


「ゼイール殿下、会議室より陛下がお呼びです。 例のミノタウロスの件で、安全保障を議題としております」


「マジかよ…」



「お早く行かれますよう」


「わかった…行こう。 良い機会だトレイスも来い」


「え… は、はい」


 私が行っても発言権など無さそうなのだが…。

 

 私は言われるがまま王の元へと向かった。


読んで頂き感謝です( *・ω・)

そんなあなたの今日の運勢は吉です( *・ω・)


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