聖火祭と、白いミノタウロス⑩
デゴイル、グラウ、サラの誘導により、住民達の避難が少しづつ進む。
そんな中、ブリギッド広場の真ん中で、私達は白いミノタウロスと相対していた。
私とゼイール、憲兵が10人、工房の職人5名、計17名。
ゼイールの呼び掛けに答えて集まった戦える者達が、ミノタウロスの前に立ちはだかる。
「貴様!何が目的だ!」
ゼイールがミノタウロスに問うが、相手は答える気が無い様子だ。
「ヴォオオオオ!!」
ミノタウロスは鼻息を荒くしながら雄叫びを上げた。
「クソッ! 守りを固めろ! ここから先に行かせるな!」
「「「「おう!」」」」
ゼイールの気迫に答える憲兵と職人達、憲兵は剣を構え、職人達は出店からフライパンを持ち出して構えている。
「コンティヌ・フラマ・スフェラ・レ…」
ミノタウロスが左手をかざし、呪文を唱えて魔法陣を作り出す。
「来るぞ!構えろ!」
ミノタウロスの魔法陣から連続して複数の火球が連続で飛び出し、私達を襲う。
皆で固まり、フライパンで火球を防ぐが、火球の威力に押され近づく事が出来ない。
ゼイールは憲兵達に指示を出して走り出す。
憲兵から借りた剣を持ち、姿勢を低くしながら全速力でミノタウロスに近づく、ミノタウロスの間合いに入らぬよう迂回する。
その時、憲兵6人が飛び出し、ミノタウロスに向かって走り出した。
憲兵達が左右に分かれて攻撃を仕掛ける。
「トリ・フラマ・スフェラ・イ…」
ミノタウロスが両手を広げ、左手で魔法陣を作り、右手の斧を回転させて迎え撃つ。
憲兵達は、魔法陣からの火球を避ける事が精一杯のようで、もう片方は回転させた斧に対して間合いを取る。
そのミノタウロスの背後から、ゼイールが剣を振り被り、ミノタウロスの頭部目掛けて力いっぱい振り下ろす。
ミノタウロスがそれに気付き避けようとしたが、ゼイールの剣が側頭部に直撃した。
ガキン!という金属音が聞こえる。
「っしゃ!入ったぁあ!」
ゼイールの攻撃に、ミノタウロスが少しフラついたが、すぐに振り向きゼイールを殴り飛ばす。
吹き飛ばされたゼイールが、受け身を取って立ち上がり、殴られた腹部を片手で押さえて、苦悶の表情を浮かべた。
「兄様! 大丈夫ですか!」
「大丈夫だ…。 それより…アレを何とかする方法を考えねぇと。 時間稼ぎが最善策だが、奴が全力で来たら止めれる自信は無ぇ…。 まともな武器も無ぇしな」
そう、現状足止めは出来ているが、それも時間の問題。
お祭りで護りが手薄になっている今、すぐに援軍が来る望みは薄い。
「さっき奴の背後を取った時、首の後ろに何か変な物が付いてた。 感触からして金属だ。 そこに攻撃が当たったら少し動きが鈍くなった。 くそ…わからねぇ事だらけだ…」
不可思議な事だらけ、通常ミノタウロスは魔法を苦手とする種族、それがエルフさながらの魔法を使い、圧倒している。
皆が息を飲む。
その瞬間、ミノタウロスが走り出た。
「行かせるな!止めろぉおお!!」
突進にも似たミノタウロスの走りに、憲兵4名と職人達5名が行く手を阻む。
何とかミノタウロスを止めようと皆で固まり、憲兵達がミノタウロスの足を狙う。
「コンティヌ・フラマ・スフェラ・レ…」
ミノタウロスがジャンプしながら、職人達目掛けて連続で火球を放つ。
「へっ!炎が怖くて鍛冶屋が出来るかってんだ!」
職人達がフライパンで火球を撃ち返すが、職人達の頭上からミノタウロスが斧と共に降ってくる。
それをフライパンでガードした職人達はミノタウロスに弾き飛ばされ、憲兵達が剣でミノタウロスの斧を止めた。 しかし力及ばずそのまま押され続ける。
ミノタウロスが斧を手放し、素早く屈んで足払いをし、憲兵達を吹き飛ばした。
「くそっ…!やるしかねぇか! 職人共は離れてろ! 憲兵は援護しろ!」
そのゼイールの声を聞いて、職人達が足を引きずりながらその場を離れ、憲兵がゼイールの前に立って剣を構えた。
ゼイールが両手を勢いよく地面に置いて呪文を唱える。
「こっから先は行かせねえ!『剛炎牢獄』!!」
ゼイールの半径10m範囲に大きな赤い魔法陣が現れ、その周りに激しい炎の壁が轟々と立ち昇った。
「へへっ… これでお前の魔法は…もう使え…ない…」
そう言うと、ゼイールは力尽きたように倒れ込んだ。
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そんなあなたの今日の運勢は吉です( *・ω・)




