聖火祭と、白いミノタウロス⑤
ゼイール達の元へ帰って来た。
ネルデ先生はテーブルに寄り掛かって酒瓶抱えたまま寝てしまった。
「ネルデ先生は見つかったようだな」
「はい…大変でした」
「はははっ それだけ自慢の生徒だって事だ、素直に喜べ」
するとそこへ、カメラを首からぶら下げ、メモ帳とペンを持った大人がやって来た。
「ややや! ここに居りましたか! 私、ニダヴェーリル新聞のカタスクと申します! 殿下の事はネルデ教授から『神童』と聞き及んでおります、どうか今後の研究方針などをお聞かせ願いたいのですが!」
「えぇ〜…。 研究…ですか…?」
「ハッハッハッ! 神童がそう何人も居てたまるものかい!」
歳はゼイールと同じくらいだろうか、自信に満ちた大きな声を出す貴族風の男がこちらにやって来た。
「ハッハッハッ! 久しぶりだねゼイール! 我がライバルよ! どうやら先を越してしまったようだ! 君も頑張りたまえ!」
「めんどくせぇのが来たな」
「おおっ! 愛しのサラ!今日も美しい!」
「アタシこいつ苦手だよ、どっか行っとくれ」
「ハッハッハッ! すまないねサラ! 今日は君に会いに来たんじゃないのだよ! 今度埋め合わせをするから機嫌を治しておくれ!」
「相変わらず人の話聞かねぇっすね」
「おや? 君は誰だったかな?」
「グラウっすよ! 家隣同士じゃないっすか!」
「はて? おかしいね、隣は犬小屋が1つあるだけなのだが?」
「それが俺の家っすよ!!」
「ハッハッハッ! そんな事より君だ!」
「「「おい!」」」
どうやら愉快な性格をしているようだ。 その男が私に近づき、ジーッと顔を眺めている。
「君だね? ん〜、なるほど…。 君は『真空中の光の速さは、どの慣性系から見ても常に一定であり、光源や観測者の運動状態によらない』この意味が理解出来るかい?」
「え? えっと…光速度不変の原理の事でしょうか? 光速は誰から見ても一定で、万物の速さの上限であり、質量を持つ物質は光速を超える事はない…。重力の影響を考慮しない場合の光の振る舞い方ですね」
「なるほど、一般常識程度の事は理解出来ているようだね。 じゃあ君は、魔法陣とルーン文字の融合に興味があるかい?」
「な!? 魔法陣とルーン文字の融合? 考えた事も無かった。 しかしそれは、魔法陣の中に複数の魔法陣を描くようなものだ…。 そんな事が可能なのか? いや、ルーン文字を施した金属ベースに魔法陣を彫刻した星霊石をはめ込んで多層構造にして、互いに干渉出来れば可能性はあるのかな…? うん!実に面白い発想ですね!」
「ハッハッハッ! 君!名を何と言ったかな?」
「トレイス・ドヴェルグです」
「そうかトレイス君! 今度私の家に来ると良い! 私の研究を見せてやろう!」
「あ、ありがとうございます!」
「では失礼するよ! 新聞記者君! 君も来たまえ、じっくり私の研究方針をお教えしよう! ハッハッハッ!」
新記者が連れて行かれてしまった。 助かった。
「驚いたな、アイツが1日目で人の名前を覚えるなんて。 さすが俺の弟だ」
「はは…。あの人の名前って何だったんですか? 嵐のように去って行きましたが」
「アイツの名前は『トリオン・ストーム』 ああ見えて、この国で3本の指に入る天才魔導技師だ。 人の話は聞かねぇし、ああやって自分が話したい事しか話さないから名乗らねぇんだ」
「凄い人だったんですね」
色んな人が居るんだな、やっぱりこの世界は面白い。
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は平です( *・ω・)




