ナメやがって…
最近ゼイールの様子がおかしい。
口数が減って、とても暗い。
ゼイールらしくない。
それに、日に日にアザが増えている。
これは何かあるな?
私はネルデ先生に「風邪を引いたので今日の授業を休みたい」とお願いし、ネルデ先生はそれを了承してくれた。
そして自分が住んでいる離れの小屋から出て、こっそりとゼイールが戦闘訓練をしている場所を探した。
昔ゼイールに連れられて探検した時以来か? 場所があまり思い出せない。
いや思い出せ、仮病なんて知れたら嫌味な王妃に何を言われるかわからない。
ここは慎重に進まなくてはならない、私の姿は目立つからな。
混血というのを苦に思った事は無かったが、今回ばかりは純血だったら良かったのにと思った。
探索をしていると、城の中庭の方から大勢の声がする。
…あそこが訓練場か?
その中庭には背丈ほどの植木が並んでいたので、私はそこに隠れながら戦闘訓練の様子を覗き見た。
私の居る植木から数メートルほどの距離で、ゼイールが4人の子供に囲まれ木剣で叩きのめされている。
ゼイールは無言で立ち上がり剣を構える。
何してんだあいつら… アレは訓練なんかじゃないだろう、何も学びは無い、ただのリンチだ。
「で、殿下…」
「だだ大丈夫ですか…?」
「すみません…すみません…」
「……。」
「ああ…。大丈夫だ…気にするな」
あいつら…挙動がおかしいな。
誰かにやらされているのか…?
なぜ誰も止めないんだ… 指導員は何をしている。
「喝っ!! 殿下!! そんなんでは国は守れませんぞぅ!!」
筋骨隆々のドワーフが大きな声で怒鳴り散らしている。
あいつが指導員か? ドワーフの大人でも、ネルデ先生とは違って威圧感があるな。
「よ〜ぅし!! お前ら変われ! ワシが殿下の相手をしよう!! 全力でかかって来なさい!!」
「くっ…!はい…! よろしくお願いします…!」
ゼイールが立ち上がり剣を構えた、すでにフラフラの状態で、指導員に向かって行く。
「喝っ!」
指導員が木剣を大きく振りかぶってゼイールの木剣を叩く。
「せぇいっ!」
そのまま突進してゼイールを吹き飛ばした。
「でえあああ!!」
ゴッ! ドッ!
起き上がろうとするゼイールの、面と胴に木剣を浴びせた。
「ぐっ! って…!」
ゼイールは木剣を落とし、痛みに耐えながら木剣を拾った。
「さあ! まだまだっ! もう一度だ!」
犯人はアイツか。
まだ痛めつける気か。
ダメだ、見てられない。
私は植木から飛び出し、ゼイールの前に立ち、指導員を睨みつけた。
「これは何だ。 兄様に対して不敬だろう」
「貴様は? 噂の混血児か!何の用だ!」
明らかに敵意を持った面構えだ。
くそっ、どいつもこいつも…何だってんだ。
「随分と威勢が良いな、この事を王に掛け合っても良いんだぞ」
「ハッ! 陛下が貴様なんぞの言う事を聞くか! これは戦闘訓練! ワシは王妃からも『殿下を強くしてやってくれ』と頼まれているんだ! 何を掛け合う事がある!」
「話しにならない…。 戦闘訓練でPTSDにでもなったら本末転倒だろう」
「ピー…? 何だそれは!」
「心的外傷後ストレス障害の事だよ」
「ガハハハ!! わけのわからぬ事を!
良い機会だ!貴様も指導してやる!
さぁ! 剣を取れ!! 構えろ!!」
指導員は近くの少年から木剣を奪い、それを私の前へと投げ、私を睨んで木剣を構えた。
「さあ! どうした混血児! 怖気づいたか!」
ナメやがって…。
「剣は必要ない…かかって来い。
本物の戦闘訓練を見せてやる」
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は小吉です( *・ω・)




