西暦3265年の秋①
西暦3045年、長かった第三次世界大戦が終わり、新たな国が出来て時は流れる。
荒廃した大地を修復し、各国が安定するまで220年の年月が経った。
西暦3265年の秋… この私『089号』が26歳の頃の話をしよう。
私は、とある組織の科学部門に所属している。 父が組織の上級戦闘員で、私はその父のクローンとして生まれた。
この組織の人達は地下にある基地の中で生活をしている。 地上では工作員が政界や資本家を操り、世界征服の野望までもう少しの所だ。
そんな中で私は、科学部門のラボで毎日白衣を着て研究に没頭していた。
「089君、君の作ったAIがボスにも気に入られてね。 今度実装されるそうだよ。 僕も鼻が高い、今日はもう帰って休みなさい」
科学部門の部長が笑顔で褒めてくれた、ボスに気に入られるのはとても気分が良い。
もう少し研究を続けていたい所だが、帰らなくてはならない。
「089先輩、流石ですね。 あ!先輩、この後飲みに行きませんか? ちょっと教えてほしい所があって…」
上目遣いで私を見る後輩の091君。 男にそんな顔されても嬉しくはない。
「すまないね091君、このあと私は父と戦闘訓練があるんだ。 その話は明日聞くよ」
「そうですか…。 わかりました!じゃあ明日!お疲れ様です!」
後輩の元気な挨拶に癒される。 私もそうしよう。
「では、お疲れ様でした」といつもより少し大きく挨拶をしてラボを出た。
エレベーターで最下層の居住区まで行き、父と2人暮らしの部屋へと向かう。
ドアの横に設置されているパネルに左手をかざすと、指紋とマイクロチップを読み取ってドアが開く。
クローンはオリジナルとの生活で心身ともに育ち、ゆくゆくはオリジナルよりも優れた存在になる事を義務付けられている。
私の父は数ある戦闘員の中でも上位に位置づけられているほどの強者である。
地上での戦闘が日課の父は、毎晩のように私を鍛えてくれる。
「ただいま、父さん」
「おう、おかえり。 じゃあ早速やるか」
そう言うと父は服を脱いで戦闘服へと着替えた。
父の、傷だらけでドデカイ身体が、私をやる気にさせる。
私も戦闘服に着替えて、父と一緒に部屋の奥にある訓練施設へと入った。
そしていつものようにボコボコにされる。
何度か気絶させられて、身体が動かなくなり、戦闘訓練は終わった。
毎日のように2時間ぶっ通しで戦闘訓練だ、私は未だに父に勝ち越せてはいない。
勝率も良くて五分と言った所だ。
毎日のように2時間ぶっ通しで戦闘訓練だ。 訓練が終わると、2人で汗だくになって大の字で寝そべり、反省会が始まる。
「だいぶ成長しているな。 だが、まだまだだ。 俺を倒せないようでは地上には出せないからなあ。 だがしかし、いつの日かお前は、誰よりも強い戦闘員になれる。 俺はそう信じている」
「ありがとう父さん。 いつか期待に答えて見せるよ。 でも…父さんを倒せる人ってどんだけ強いの」
「はははっ! 俺を倒せる人間なんかいくらでも居るぞ。 えっと例えば…ボスとか?」
「ぷっ! はははっ そりゃそうでしょ、もっと現実味のある話をお願いしたい。 はははっ」
ボスの名が出て吹き出してしまった、父のこういう所がとても好きだ。
「ん〜…。 ボスの他には、部隊長クラスが2人と、大将クラスが4人…。あとは… アイツくらいか…」
「アイツって?」
「最近地上で自警団の真似事をしている男だ。 たしか…『アブソリュートマン』とか言ったか? アレは戦闘と呼べるようなものでなかったな。 一瞬でノされた…。 中には殺された戦闘員も居たがな…俺は運が良かった」
「父さんを一瞬で? 地上にはそんなに強い奴が居るのか… もっと鍛えないと…」
「いや…鍛えるだけではダメだな。 あの動きは達人とは呼べないレベルだ。 恐らくあの強さは、着ていたギアが関係すると見た」
ギア? パワードスーツのような物か?
「さて、2時間も動いたんだ、風呂に入って寝よう。 明日も組織のために尽力しなさい」
「はい、わかりました」
父の言うギアという物が気になるが、明日は私の研究の最終段階だ。 早く寝よう、楽しみでならない。
読んで頂き感謝です( *・ω・)
そんなあなたの今日の運勢は小吉です( *・ω・)




