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第4話「裏の顔の確立」

 13歳になった俺は、もはや完璧な二重生活を送っていた。

 中学1年生として学校に通う昼の顔と、夜に活動する『白銀の審判者』としての裏の顔。この3年間で、その使い分けは芸術の域に達していた。

「おはよう、琴音ちゃん」

「おはよう、美咲ちゃん」

 中学に進学しても、美咲との友情は続いていた。彼女は相変わらず明るく、俺にとって大切な友達だ。

「琴音ちゃん、また綺麗になったよね。なんか近寄りがたい雰囲気があるけど」

「そんなことないよ」

 実際、魔力を鍛え続けた結果、俺の外見は同年代の子供とは明らかに異質になっていた。肌は透き通るように白く、髪は絹のように艶やか。何より瞳の奥に宿る深い光は、13歳の少女のものとは思えない神秘性を放っている。

 でも昼間は意識的にその雰囲気を封印し、普通の中学生として振る舞っている。魔力で微細な変化を加え、「少し美人な普通の子」程度に見えるよう調整していた。

「今度の体育祭、一緒に頑張ろうね」

「うん!」

 こういう何気ない日常が、俺にとって大切な時間だった。『白銀の審判者』として世界の闇と戦う中で、この明るい日常こそが俺の心の支えになっている。


 授業中、俺は窓の外を見ながら昨夜の活動を振り返っていた。

 3年前から始めた『白銀の審判者』としての活動は、今や都市伝説レベルで語り継がれている。白い髪と光る瞳、神聖な外套を纏った謎の存在。正体不明ながら、確実に悪を裁く正義の象徴として。

 これまでに解決した事件は軽く50件を超える。住宅侵入、強盗、誘拐、薬物取引……様々な犯罪を未然に防いだり、犯人を無力化したりしてきた。

 特に印象に残っているのは、半年前の魔力能力者犯罪事件だった。

 火炎操作の能力を持つ犯罪者が商業施設で人質を取った事件。政府の魔力対策部隊も手を焼いている状況で、俺が介入した。

 炎の威力は確かに強大だったが、俺の『白銀の刃』百本展開の前では無力だった。犯人が炎を放つ瞬間、魔力の刃で炎そのものを切り裂き、本体に到達。一瞬で無力化した。

 その時の犯人の驚愕した表情が忘れられない。

「化け物……お前は一体何者だ?」

 俺は静かに答えた。

「正義です」

 あの時から、『白銀の審判者』の名前が犯罪者の間で恐れられるようになった。同時に、一般市民からは「白い守護天使」として慕われるようになった。

「星野さん、授業に集中してください」

 先生の注意で現実に戻る。

「は、はい!すみません」

 慌てて教科書に目を向けた。昼間は普通の中学生。この演技を完璧に続けることが、俺の使命の一部でもある。


 放課後、俺は地下空間で新しい技術の開発に取り組んでいた。

 この3年間で地下空間もさらに拡張されている。現在は縦横高さ各20メートルの巨大空間となり、複数の部屋に分かれている。修行場、作戦会議室、そして情報収集室。全て魔力で構築され、外部からの発見は不可能だ。

「今日は情報網の拡張だ」

 最近開発した新技術、『魔力蜘蛛』の展開を試してみる。髪の毛ほど細い魔力の糸で作られた蜘蛛型の監視装置。これを街中に配置することで、犯罪の兆候を事前に察知できる。

 手のひらから小さな光の蜘蛛が現れ、壁を這い回る。サイズは実物の蜘蛛と同程度だが、魔力製のため通常の方法では発見できない。

「これを100匹配置すれば、この街の全域を監視できる」

 魔力蜘蛛は俺の感覚と直結しており、異常を察知すれば即座に情報が伝わる。これで事件の予防がより効率的になるだろう。

 次に取り組んだのは、『白銀の分身』技術の向上だった。魔力で作った自分の分身を複数展開し、同時に複数の場所で活動する。まだ実用レベルには達していないが、理論的には可能なはずだ。

「分身を3体……」

 魔力を分割し、自分と同じ姿の光の存在を3体作り出す。それぞれに意識の一部を分け与え、独立行動させる。

「よし、これで同時に4箇所の警備ができる」

 ただし、魔力消費が激しく、持続時間は30分程度が限界だった。緊急時の切り札として使うべき技術だろう。


 夜10時、俺は今夜の巡回に出発した。

 透明化の魔力を纏い、地下空間から地上へと浮上する。家族はとっくに寝ており、俺の外出に気づく者はいない。

 街の上空を飛行しながら、魔力蜘蛛からの情報を確認する。今夜は比較的平穏だが、一箇所だけ気になる場所があった。

 工業地帯の廃倉庫で、複数の人影が集まっている。魔力蜘蛛の情報によると、魔力反応を持つ者が数名含まれているようだ。

「魔力能力者の集会……?」

 これは調査する価値がある。

『白銀の審判者』モードに変身し、問題の廃倉庫に向かう。白銀の髪、琥珀色の瞳、神聖な外套、そして成人女性の神聖な声。完璧な変装だった。

 廃倉庫の屋根に音もなく着地し、中の様子を窺う。20人ほどの男女が集まっており、その中の5人が明らかに魔力能力者だった。

「今夜の作戦だが、銀行の警備システムを突破するには……」

 どうやら大規模な強盗計画を練っているらしい。しかも魔力能力者を含む組織的犯罪だ。これは放置できない。

「警察では手に負えない案件だな」

 俺の出番だった。

 屋根から内部に侵入し、梁の上に隠れて全体を見渡す。魔力能力者たちの能力を分析してみると、雷撃操作、金属操作、瞬間移動、透視、そして精神操作。なかなか厄介な組み合わせだった。

「でも、俺の敵ではない」

 一気に制圧することも可能だが、情報収集を優先すべきだろう。彼らの背後に、より大きな組織がいる可能性がある。

 魔力で聴覚を強化し、会話を詳細に聞き取る。

「例の『組織』からの指令では、来月までに10件の作戦を成功させろと言われている」

「白い悪魔のせいで、最近は失敗ばかりだ」

 白い悪魔……俺のことだな。

「奴さえいなければ、この街の半分は俺たちのものになってるはずだ」

「今度こそ、奴を倒してやる」

 面白い。俺を標的にしている組織があるらしい。これは予想していなかった展開だった。

 十分な情報を収集した後、俺は行動を開始した。


「皆さん、お疲れ様です」

 突然響いた神聖な女性の声に、集まった犯罪者たちが一斉に振り返る。

 梁の上から優雅に降り立つ『白銀の審判者』の姿。白銀の外套が風もないのに美しく翻り、琥珀色の瞳が神秘的に光っている。

「白い悪魔……!」

「ついに現れたか!」

 魔力能力者たちが即座に戦闘態勢を取る。しかし、一般人の手下たちは俺の威圧感に圧倒されて動けずにいた。

「今夜で全てを終わりにしましょう」

 俺は静かに宣言した。

 最初に動いたのは雷撃使いだった。強力な電撃を俺に向けて放つ。しかし、俺の『白銀の外套』は全ての攻撃を無効化する。電撃は外套に触れた瞬間、霧散した。

「そんな……俺の雷撃が効かない?」

 次に金属操作能力者が廃倉庫中の金属を俺に向けて飛ばしてくる。鉄パイプ、工具、廃材……数十の金属片が弾丸のような速度で襲いかかる。

 俺は『白銀の刃』を50本展開し、飛来する全ての金属を迎撃した。金属片は全て真っ二つに切断され、床に落下する。

「化け物め……」

 瞬間移動能力者が俺の背後に回り込もうとするが、俺の魔力感知能力の前では無意味だった。相手が移動する瞬間に『白銀の刃』を移動先に送り込み、着地と同時に無力化。

 透視能力者は俺の次の行動を読もうとしているが、俺の思考速度についてこれない。精神操作能力者は俺の心に侵入しようとするが、魔力の防壁に阻まれている。

「レベルが違いすぎますね」

 俺は残りの魔力能力者たちに向かって歩いていく。

「今夜は命を奪うつもりはありません。大人しく降伏すれば、警察に引き渡すだけで済みます」

 しかし、彼らは最後の抵抗を試みた。5人の魔力能力者が同時に最大威力の攻撃を放つ。雷撃、金属の嵐、連続瞬間移動攻撃、透視による弱点狙い、精神破壊攻撃。

 俺は微笑んだ。

「『白銀の刃』百本展開」

 俺の周囲に百本の光る刃が現れ、全ての攻撃を完璧に迎撃・無効化した。そして反撃。刃は敵の急所を避けながら、全員を同時に無力化する。

 戦闘時間、わずか30秒。

「終了です」

 気絶した犯罪者たちを見下ろしながら、俺は満足していた。だが、今夜の収穫は戦闘の勝利ではない。

「背後の組織……興味深いですね」

 俺を標的にしている謎の組織の存在。これは新たな挑戦の始まりかもしれない。


 翌朝のニュースは、この事件で持ちきりだった。

「昨夜、大規模な犯罪組織が一斉摘発されました。現場には例の『白い守護天使』が関与したとみられ……」

 朝食の席で、両親がテレビを見ながら話している。

「最近この『白い守護天使』の話題が多いわね」

「正体不明だが、間違いなく正義のために戦ってる。頼もしい存在だよ」

 俺はトーストを齧りながら、内心で満足していた。

「でも琴音、あんまり夜に出歩いちゃダメよ。物騒な事件が多いから」

「分かってる、お母さん」

 もちろん、俺が一番物騒な場所に出入りしているとは知らない。

 学校でも、この話題で持ちきりだった。

「すごいよね、白い守護天使。20人も一度に捕まえるなんて」

 美咲が興奮して話している。

「本当にすごいね」

 俺はとぼけて答えた。

「琴音ちゃんはどう思う?正体はやっぱり魔力能力者よね」

「そうだと思うよ。でも、いい人だから正体なんてどうでもいいんじゃない?」

「そうね、悪い人をやっつけてくれるなら、正体なんて関係ないよね」

 そんな会話をしながら、俺は今夜の計画を考えていた。

 謎の組織の調査を続ける必要がある。俺を標的にしているということは、かなり大規模で危険な組織かもしれない。

「面白くなってきた」

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