第23話「資金調達システムの構築」
ゼフィラスグループ設立から2ヶ月が経った。
「司令官、財務状況の報告です」
地下空間の財務管理室で、アインが膨大な資料を持参してきた。最近、地下空間には企業の管理部門も設置されている。
「財務状況?」
「はい。現在のゼフィラスグループの経営成績と、組織運営への資金配分についてです」
俺は資料を受け取った。想像以上に詳細な財務諸表が作成されている。
ゼフィラスグループ月次売上実績
総売上:3億2000万円
純利益:8000万円
組織運営費:5000万円
設備投資:2000万円
内部留保:1000万円
「3億2000万円……凄い金額ですね」
「はい。前月比40パーセント増です」
アインが誇らしそうに答えた。
「特にゼフィラス商事の業績が好調で、大手企業との取引も増加しています」
「大手企業?」
「はい。Fortune 500に入る企業との契約も複数獲得しました」
俺は驚いた。そんな大企業とも取引しているのか。
「でも、司令官」
ツヴァイが重要そうな資料を提示した。
「現在の資金調達方法では、長期的な限界があります」
「どういうことですか?」
「我々の最終目標を達成するためには、もっと大規模な資金が必要です」
ドライが補足説明をした。
「Project Chimeraを完全に壊滅させるには、数百億円規模の資金が必要になる可能性があります」
「数百億円……」
想像を絶する金額だった。
「なぜそれほど大きな資金が必要なのですか?」
「敵の規模が想像以上に巨大だからです」
アインが詳細を説明した。
「最新の調査により、Project Chimeraは世界規模の組織だということが判明しました」
「世界規模?」
「はい。日本だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、アジア各国に拠点があります」
ツヴァイが世界地図を広げて説明した。
「総資産は1兆円を超えると推定されます」
「1兆円……」
俺は敵の規模に圧倒された。
「これと対等に戦うためには、我々も同等の資金力が必要です」
ドライが戦略的必要性を説明した。
「確かに……でも、どうやってそれほどの資金を調達するのですか?」
「いくつかの方法を検討しています」
アインが新たな提案書を取り出した。
「まず、金融業への進出です」
「金融業?」
「はい。銀行、証券、保険……金融サービスを提供することで、大規模な資金を動かせます」
なるほど、確かに金融業なら巨額の資金を扱える。
「次に、投資事業です」
ツヴァイが続けた。
「株式投資、不動産投資、ベンチャー投資……様々な投資で資産を増やします」
「最後に、国際事業展開です」
ドライが最後の項目を説明した。
「海外市場に進出し、グローバル企業として成長します」
三人の提案は壮大すぎて、俺はついていけなくなりそうだった。
「それは……かなり大変な作業になりそうですね」
「はい。でも、必要なことです」
アインが決意を込めて答えた。
「分かりました。やってみましょう」
俺は提案を承認した。どこまで大きくなるか興味深い。
「本当ですか?」
三人が嬉しそうな表情を見せた。
「はい。ただし、段階的に進めてください」
「もちろんです」
「では、まず金融業から始めましょう」
アインが即座に行動計画を説明した。
「『ゼフィラス・ファイナンス』という投資会社を設立し、資産運用事業を開始します」
「投資会社……どのような投資を行うのですか?」
「まず、株式投資です」
ツヴァイが詳細を説明した。
「我々の情報網を活用し、確実に利益を上げられる銘柄に投資します」
「情報網を活用?」
「はい。各企業の内部情報にアクセスできるので、株価の動きを予測できます」
それは……インサイダー取引に近いのでは?
「法的に問題はありませんか?」
「表面上は問題ありません」
ドライが答えた。
「巧妙に偽装するので、当局に察知されることはありません」
俺は少し心配になったが、彼女たちの自信に任せることにした。
「次に、不動産投資です」
アインが続けた。
「都心の優良物件を購入し、賃貸収入を得ます」
「不動産なら安全ですね」
「はい。それに、Project Chimeraの関連施設がある土地を買収することで、彼らの活動を妨害することもできます」
なるほど、戦略的価値もあるわけか。
「最後に、ベンチャー投資です」
「ベンチャー投資?」
「有望なスタートアップ企業に投資し、将来的に大きなリターンを得ます」
ツヴァイが説明した。
「特に、我々の活動に役立つ技術を持つ企業を優先的に投資対象とします」
「具体的には?」
「AI技術、バイオテクノロジー、セキュリティ技術……」
確かに、これらの技術は組織運営に役立ちそうだ。
1ヶ月後、ゼフィラス・ファイナンスが正式に設立された。
「初月の運用成績を報告します」
アインが投資成果を発表した。
「運用資金10億円で、利益率25パーセントを達成しました」
「25パーセント……すごい利益率ですね」
「はい。2億5000万円の利益を上げました」
俺は投資の才能にも感心していた。
「どのような投資で利益を上げたのですか?」
「主に株式投資です」
ツヴァイが詳細を説明した。
「情報網を活用し、株価上昇前に投資することで大きな利益を得ました」
「不動産投資はどうですか?」
「都心の優良物件を3つ購入しました」
ドライが報告した。
「総額50億円の物件で、年間賃貸収入は5億円を見込んでいます」
「50億円……そんな高額物件をどうやって?」
「銀行からの融資です」
「融資?」
「はい。ゼフィラスグループの信用力で、低金利での融資を受けることができました」
確かに、これだけの業績があれば銀行も信用するだろう。
「ベンチャー投資はいかがですか?」
「有望な企業5社に投資しました」
アインが成果を説明した。
「特に、AI技術を持つ企業への投資が有望です」
「どのような技術ですか?」
「音声認識、画像解析、自動翻訳……我々の活動に直接役立つ技術です」
なるほど、戦略的な投資を行っているわけだ。
「総合的には、順調な滑り出しですね」
「はい。このペースなら、1年後には資産100億円を達成できそうです」
100億円……凄まじい成長ペースだった。
その後、ゼフィラス・ファイナンスの成長は加速度的に進んだ。
「半年後の運用実績です」
6ヶ月後、アインが驚異的な数字を報告してきた。
ゼフィラス・ファイナンス運用実績
運用資産:80億円
月間利益:15億円
年間利益見込み:180億円
「180億円……想像を絶する利益ですね」
「はい。投資効率が非常に高いです」
ツヴァイが要因を分析した。
「情報の優位性により、ほぼ確実に利益を上げられています」
「不動産部門も好調です」
ドライが追加報告をした。
「保有物件20件、総資産200億円、年間賃貸収入20億円です」
「200億円……」
俺は数字の大きさに圧倒されていた。
「ベンチャー投資も大成功です」
アインが最後の報告をした。
「投資先企業3社がIPOを果たし、投資額の50倍の利益を得ました」
「50倍……」
「はい。10億円の投資が500億円になりました」
これはもう、個人の理解を超えた世界だった。
「つまり、現在のゼフィラスグループの総資産は?」
「約1000億円です」
「1000億円……」
俺は言葉を失った。
「これで、Project Chimeraと対等に戦える資金力を手に入れました」
三人が満足そうに答えた。
「でも、まだ不十分です」
「不十分?」
「はい。最終目標達成のためには、さらなる成長が必要です」
アインの野望は留まることを知らない。
「次の段階として、国際展開を開始したいと思います」
「国際展開……」
俺は三人の構想の大きさに圧倒されていた。
最初は地下での組織ごっこだったのに、今や1000億円企業の経営者になっている。
俺は見誤っていた。彼女達の有能さと本気の度合いを。
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