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第19話「階級制度」

 新しい被害者30名の救出から1週間が経った。

「司令官、重要な提案があります」

 地下空間の司令室で、アインが真剣な表情で切り出した。ツヴァイとドライも一緒にいる。

「どのような提案ですか?」

「『ゼフィラス』をもっと本格的な組織にしたいのです」

「本格的な組織?」

 俺は少し困惑した。既に充分組織として機能していると思うのだが。

「はい。現在の我々は、まだ小規模な救出活動に留まっています」

 アインが資料を広げた。

「しかし、Project Chimeraの規模を考えると、より大規模で組織的な活動が必要です」

 確かに、敵の規模は想像以上に大きい。

「具体的には、どのような組織を考えていますか?」

「まず、階級制度の導入です」

 アインが提案した。

「現在は司令官と我々3名だけですが、救出した被害者たちの中にも戦闘能力を持つ者がいます」

「彼女たちも戦闘に参加させるということですか?」

「希望する者のみです。強制はしません」

 ツヴァイが補足した。

「でも、同じ被害者として、復讐に参加したいという声が多く上がっています」

「復讐……」

 俺は少し考えた。確かに、被害者たちが組織への復讐を望むのは自然なことだろう。

「分かりました。希望者を募ってみましょう」

「ありがとうございます」

 アインが嬉しそうに微笑んだ。

「他にも提案があります」

 ドライが手を上げた。

「専門部門の設立です」

「専門部門?」

「はい。戦闘部門、情報部門、支援部門……役割に応じて組織を細分化するんです」

 なるほど、確かに効率的かもしれない。


「面白い提案ですね」

 俺は三人のアイデアに興味を持った。

「では、具体的な組織図を作ってみましょう」

「既に作成済みです」

 アインが詳細な組織図を提示した。

『ゼフィラス』組織構成案:

 最高司令官:白銀様

 副司令官:アイン・ゼフィラス


 全体統括、戦略立案


 情報部長:ツヴァイ・ゼフィラス


 偵察、情報収集、分析


 戦闘部長:ドライ・ゼフィラス


 戦闘指揮、破壊工作


 各部門


 戦闘部門:実働戦闘員

 情報部門:偵察・分析要員

 支援部門:後方支援要員

 医療部門:治療・回復要員


「詳細な組織図ですね」

 俺は感心した。

「これだけ体系化されていれば、確かに効率的な活動ができそうです」

「はい。大規模な作戦にも対応できます」

「でも、これほど本格的な組織にする必要があるのでしょうか?」

 俺は少し疑問に思った。

「Project Chimeraを完全に壊滅させるためには必要です」

 アインが力強く答えた。

「敵は全国に20箇所以上の施設を持つ大組織です。我々も同等の組織力で対抗しなければ」

「なるほど……」

 確かに、敵が大組織なら、こちらも組織的に対応する必要があるかもしれない。

「まあ、やってみるのも面白そうですね」

 俺は提案を受け入れることにした。

「本当ですか?」

 三人が嬉しそうな表情を見せた。

「はい。では、さっそく組織の正式発足を準備しましょう」


 翌日、地下空間の大ホールで組織発足式を開催した。

 救出した被害者45名全員が参加している。

「皆さん、本日は重要な発表があります」

 俺が壇上で宣言した。

「我々『ゼフィラス』を、正式な組織として発足させます」

 拍手が湧き起こった。

「そして、希望する方には、組織の正式メンバーとして活動していただきます」

「私、参加したいです」

 猫の特徴を持つ少女が手を上げた。

「私も!」

「私も参加します!」

 次々と手が上がる。結果的に、45名中30名が正式メンバーとして参加を希望した。

「ありがとうございます」

 アインが代表して感謝を述べた。

「では、各部門の配属を決定します」

 事前のテストや面談の結果に基づいて、適性に応じた配属を発表した。

 戦闘部門:12名


 戦闘能力の高い者

 前線での戦闘を担当


 情報部門:8名


 分析能力や隠密性に優れる者

 偵察・情報収集を担当


 支援部門:6名


 魔力による支援能力を持つ者

 後方支援を担当


 医療部門:4名


 治癒魔法の適性がある者

 治療・回復を担当


「各部門のリーダーは、アイン、ツヴァイ、ドライが兼任します」

「了解しました」

 新メンバーたちが真剣に答えた。

「では、明日から本格的な組織活動を開始します」

「はい!」

 力強い返事が大ホールに響いた。


 組織発足後、地下空間は一変した。

「戦闘部門、朝の訓練開始」

「情報部門、分析作業継続」

「支援部門、装備の整備」

「医療部門、新しい治療法の研究」

 各部門が専門的な活動を展開している。

「すごい活気ですね」

 俺は組織の変化に驚いていた。

「はい、皆さん非常に熱心です」

 アインが報告してくれた。

「特に戦闘部門のモチベーションが高いです」

「復讐への意志が強いのでしょうね」

「はい。でも、それだけではありません」

「他にも理由が?」

「白銀様への憧れです」

「憧れ?」

「皆さん、白銀様のような存在になりたいと思っています」

 俺への憧れ、か。そんなつもりはなかったが。

「それで、皆さん非常に真剣に訓練に取り組んでいます」

 確かに、各部門の活動ぶりは想像以上に本格的だった。

「でも、これは単なる組織ごっこではありませんか?」

 俺は内心でそう思っていた。

 確かに体裁は整っているが、実際の組織運営はそんなに簡単ではないはずだ。

 しかし、メンバーたちの真剣さは本物だった。

「司令官、第一次作戦の立案が完了しました」

 戦闘部門のメンバーが報告に来た。

「第一次作戦?」

「はい。千葉の施設への突入作戦です」

「もう作戦まで立案したのですか?」

「はい。情報部門の偵察結果を基に、詳細な作戦を策定しました」

 俺は作戦書を受け取った。想像以上に詳細で、実用的な内容だった。

「これは……本格的ですね」

「ありがとうございます」

 彼女たちの能力と熱意は、俺の予想を遥かに上回っていた。


 その夜、俺は三人と組織の今後について話し合った。

「皆さんの熱意は素晴らしいですが、少し心配なこともあります」

「どのような点でしょうか?」

 アインが尋ねた。

「組織が大きくなりすぎて、統制が取れなくなることです」

「確かに、リスクはあります」

 ツヴァイが同意した。

「でも、Project Chimeraを倒すためには必要なリスクです」

 ドライが力強く言った。

「それに、我々には白銀様がいます」

「私ですか?」

「はい。白銀様がいる限り、組織は正しい方向に向かいます」

 三人の信頼に、俺は複雑な気持ちになった。

「でも、私も完璧ではありませんよ」

「それでも、我々にとって白銀様は絶対的な存在です」

 アインが真剣に言った。

「白銀様の判断を信じて、皆ついてきます」

「そうですか……」

 俺は改めて、自分の責任の重さを実感した。

「分かりました。皆さんの期待に応えられるよう頑張ります」

「ありがとうございます」

 三人が嬉しそうに微笑んだ。

 こうして、『ゼフィラス』は本格的な組織として歩み始めた。

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