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第18話「三人の急成長」

 実戦形式の訓練を開始してから2週間が経った。

「信じられない……これほど急速に成長するとは」

 地下空間の司令室で、俺は三人の訓練結果を見直していた。彼女たちの能力向上速度は、俺の予想を遥かに上回っていた。

 アインの光魔法は射程500メートル、命中率98パーセントまで向上。

 ツヴァイの空間操作は範囲300メートル、持続時間2時間まで拡大。

 ドライの破壊魔法は威力が5倍に増強され、精密制御も完璧。

「これなら、政府の魔力対策部隊にも引けを取らないレベルだ」

 しかも、チームワークも格段に向上している。三人の連携は、もはや芸術の域に達していた。

「司令官、お疲れ様です」

 アインが司令室に入ってきた。

「アイン、お疲れ様。今日の訓練はどうでしたか?」

「非常に充実していました。新しい戦術も習得できました」

「新しい戦術?」

「はい。ツヴァイの隠蔽とドライの破壊魔法を組み合わせた『ステルス爆撃』です」

 なるほど、自分たちで新しい戦術を開発したのか。

「どのような内容ですか?」

「ツヴァイが敵施設に隠蔽侵入し、内部の重要な場所にドライの魔力を仕込んでおきます。そして、適切なタイミングで一斉に爆破するんです」

「それは……非常に高度な戦術ですね」

 俺は感心した。この戦術なら、敵に気づかれることなく施設を無力化できる。

「私は上空から狙撃支援を行います」

「三人の連携が完璧ですね」

「ありがとうございます。でも、まだまだ改善の余地があります」

 アインの向上心は尽きることがない。


 その時、ツヴァイとドライも司令室に入ってきた。

「司令官、報告があります」

 ツヴァイが静かに言った。

「何でしょう?」

「今日の偵察訓練で、実際の敵施設を発見しました」

「実際の敵施設?」

 俺は驚いた。訓練は地下空間内で行っているはずだが。

「はい。隠蔽能力の向上を確認するため、実際に地上で偵察を行いました」

「地上で?」

「都内の怪しいビルを調査していたところ、Project Chimeraの施設らしき場所を発見したんです」

 これは予想外の展開だった。

「詳しく教えてください」

「新宿区の雑居ビルの地下に、大規模な研究施設があります」

 ツヴァイが詳細な報告を始めた。

「魔力反応から判断すると、約30名の被験者が囚われている可能性があります」

「30名……」

「はい。しかも、近日中に大規模な実験が予定されているようです」

「大規模な実験?」

「複数の被験者を同時に融合させる実験のようです」

 これは緊急事態だった。

「いつ頃実行される予定ですか?」

「今夜です」

 ドライが緊張した声で答えた。

「今夜?」

「はい。だから、すぐに救出作戦を実行する必要があります」

 三人の表情が真剣だった。


「分かりました。緊急作戦を実行しましょう」

 俺は即座に決断した。

「ただし、これは実戦です。訓練とは違い、本当の危険が伴います」

「覚悟はできています」

 三人が揃って答えた。

「では、作戦を立案しましょう」

 俺は司令室の大型モニターに施設の見取り図を表示した。

「ツヴァイの偵察情報を基に、最適な侵入ルートを決定します」

「地下3階に被験者が囚われています」

 ツヴァイが説明した。

「警備は意外に薄く、研究者が10名程度です」

「研究者たちの戦闘能力は?」

「ほとんどが一般人レベルです。ただし、護衛として魔力能力者が2名います」

「魔力能力者……どの程度の実力ですか?」

「B級程度だと思われます」

 B級なら、三人の連携で十分対処できる。

「では、作戦を決定します」

 俺は作戦内容を説明した。

「ツヴァイが先行して侵入し、警備状況を確認」

「アインとドライが正面から侵入し、研究者たちを無力化」

「私は外周警備を担当し、増援を阻止」

「了解しました」

 三人が作戦を理解した。

「ただし、被験者の安全を最優先に」

「はい」

「それでは、30分後に出発します」


 30分後、俺たちは新宿の標的ビルに到着した。

「周囲の警戒は?」

「異常ありません」

 ツヴァイが報告した。

「では、作戦開始」

 ツヴァイが最初に隠蔽状態で侵入していく。5分後、連絡が入った。

「内部確認完了。被験者30名を確認。研究者12名、護衛2名」

「了解。アイン、ドライ、突入してください」

「はい」

 二人が連携して正面から侵入した。

 俺は外周を警戒しながら、内部の状況を魔力感知で監視した。

 アインとドライの戦闘は圧倒的だった。護衛の魔力能力者2名を瞬時に無力化し、研究者たちも抵抗する間もなく制圧した。

「被験者の救出開始」

 ツヴァイが被験者たちを安全な場所に誘導している。

「全員無事です。ただし、数名が重篤な状態です」

「分かりました。すぐに治療します」

 作戦は完璧に成功した。戦闘時間わずか10分で、30名全員の救出に成功。

「すごい……これほど効率的に作戦を実行できるとは」

 俺は三人の実力に改めて驚いた。

「司令官のご指導のおかげです」

 アインが謙遜した。

「いえ、皆さんの努力の成果です」

 実際、彼女たちの成長速度は異常なほど早い。わずか2週間で、ここまでの実力を身につけるとは。


 地下空間に戻った後、救出した被験者たちの治療を行った。

「皆さん、もう大丈夫です」

 30名の新しい被害者たちも、アイン、ツヴァイ、ドライと同様に動物的特徴を獲得していた。

「ここは……?」

「安全な場所です。もうあの実験を受けることはありません」

 俺は彼女たちに状況を説明した。

「私たちが救出しました」

 アインが優しく声をかける。

「私たちも同じ被害者でした。でも、白銀様に救っていただいて、今はこうして他の人を救う活動をしています」

「同じ被害者……」

 新しい被害者たちが、アイン、ツヴァイ、ドライを見つめた。

「皆さんも、ここで新しい人生を始めることができます」

 ツヴァイが静かに励ました。

「一緒に頑張りましょう」

 ドライが明るく声をかけた。

 新しい被害者たちの表情が、少しずつ明るくなってきた。

「本当に……もう安全なんですね」

「はい、絶対に安全です」

 俺は確信を持って答えた。

 こうして、地下空間の住人は45名に増加した。

「また大規模な拡張が必要ですね」

 アインが提案した。

「はい、明日から拡張工事を開始しましょう」

「私たちも手伝います」

 三人が積極的に協力してくれる。

 その夜、俺は三人の成長について考えていた。

「わずか2週間で、ここまで成長するとは」

 彼女たちの実力は、もはや一流の魔力能力者に匹敵する。

「でも、まだまだ伸びしろがありそうだ」

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