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第15話「ゼフィラス」

 作戦会議を開始してから3日が経った。

「情報収集の結果をまとめました」

 地下空間の作戦司令室で、アインが詳細な報告書を提出してくれた。この3日間で、三人の調査能力の高さに俺は驚かされ続けている。

「Project Chimeraの活動は、我々が想像していた以上に組織的で大規模です」

 アインが大型モニターに調査結果を表示した。

「現在確認できている施設は18箇所。すべて表向きは正当な企業として偽装されています」

「18箇所……」

 俺が破壊した3箇所を除いても、まだ15箇所の施設が稼働している計算だった。

「しかも、それぞれが異なる段階の実験を担当しているようです」

 ツヴァイが補足説明をした。

「初期段階の被験体収集から、融合実験、成功者の訓練まで、完全に分業化されています」

「まるで工場のような効率性ですね」

「はい。そして、最も重要な発見があります」

 ドライが拳を握りしめて言った。

「組織の中枢部が判明しました」

「中枢部?」

「東京の地下深くに、巨大な総合施設があります」

 アインが新たな画像を表示した。

「ここが組織の司令部であり、最終段階の実験が行われている場所です」

「そして……」

 ツヴァイの声が震えた。

「そこには、まだ多くの被害者が囚われています」


「どのくらいの被害者がいると推定されますか?」

 俺は慎重に尋ねた。

「記憶の断片と、収集した情報を総合すると……約200名」

 アインの答えに、俺は息を呑んだ。

「200名……」

「はい。そのほとんどが、私たちと同じ年代の女性です」

「許せない……」

 ドライが机を叩いた。

「200人もの人が、今この瞬間も苦しんでいるなんて」

「落ち着いて、ドライ」

 アインがドライを制したが、その瞳にも深い怒りが宿っていた。

「でも、アインだって怒ってるでしょう?」

「もちろんです。許せません」

「私も同じ気持ちです」

 ツヴァイも静かに怒りを表明した。

 俺は三人の感情を理解できた。自分たちと同じ境遇の人々が、今も苦しんでいる。その事実は、確かに許しがたいものだった。

「分かりました。総合施設への突入作戦を計画しましょう」

「本当ですか?」

 三人の瞳に希望の光が宿った。

「ただし、これまでで最も危険な任務になります。相手の本拠地に乗り込むわけですから」

「覚悟はできています」

 アインが即座に答えた。

「私たちには、絶対に成し遂げなければならない使命があります」

「使命?」

「はい。私たちと同じ被害者を救うこと。そして、この組織を完全に壊滅させること」

 アインの声に、揺るぎない決意が込められていた。


「では、正式に作戦の目標を設定しましょう」

 俺は立ち上がって、三人の前に立った。


「第一目標:すべての被害者の救出」

「第二目標:Project Chimeraの完全壊滅」

「第三目標:組織の全貌解明と責任者の処罰」


「了解しました」

 三人が揃って答えた。

「そして、この作戦には正式な名前をつけます」

 俺は少し考えてから言った。

「『リベレーション作戦』—解放作戦です」

「リベレーション作戦……」

 三人が作戦名を口にした。

「すべての被害者を解放し、組織の悪事からこの世界を解放する。それがこの作戦の意味です」

「素晴らしい名前です」

 アインが感動したように言った。

「では、実行部隊にも正式な名前をつけましょう」

 俺は三人を見回した。

「我々は今日から『ゼフィラス』です」

「ゼフィラス……いい響きです」

 ドライが嬉しそうに言った。

「では、『ゼフィラス』の正式なメンバーとして、改めて皆さんに名前を授与します」

 俺は厳粛な雰囲気で宣言した。

「アイン、貴女は『ゼフィラス』の副司令官として、『アイン・ゼフィラス』の名を授けます」

「アイン・ゼフィラス……光栄です」

「ツヴァイ、貴女は情報・偵察担当として、『ツヴァイ・ゼフィラス』の名を授けます」

「ツヴァイ・ゼフィラス……ありがとうございます」

「ドライ、貴女は戦闘・破壊担当として、『ドライ・ゼフィラス』の名を授けます」

「ドライ・ゼフィラス……最高の名前です!」

 こうして、俺たちの組織が正式に発足した。


「それでは、『ゼフィラス』の結成を記念して、正式な誓いを立てましょう」

 俺は三人に向かって右手を上げた。


 誓いを終えた時、俺は深い感動を覚えた。一人で戦ってきた俺に、ついに真の仲間ができた。

「これで、我々は正式な組織になりました」

「はい」

 三人の表情には、使命感と誇りが宿っていた。

「では、明日からリベレーション作戦の詳細計画を策定しましょう」

「了解しました」

 アインが答えた。

「私たちの力を合わせれば、必ず成功できます」

「そうです。200名の被害者を必ず救い出します」

 ツヴァイが静かに決意を述べた。

「そして、あの組織を完全に叩き潰します」

 ドライが拳を握りしめた。

 俺は三人の決意を見て、改めて彼女たちの強さを実感した。


 その夜、俺は一人で今日の出来事を振り返っていた。

「ついに仲間ができた……」

 これまで一匹狼として活動してきた俺に、信頼できる部下が3人もできた。しかも、ただの部下ではない。同じ目標を共有し、互いに支え合える真の仲間だ。

「アイン、ツヴァイ、ドライ……」

 三人それぞれの顔が脳裏に浮かんだ。

 アインの真面目で思いやりのある性格。

 ツヴァイの静かで思慮深い性格。

 ドライの明るく情熱的な性格。

 どの子も、それぞれに魅力的で、かけがえのない存在だった。

「これからが本当の戦いの始まりだ」

 Project Chimeraとの最終決戦。200名の被害者の命がかかった重大な任務。

 しかし、三人と力を合わせれば必ず成功できる。そんな確信があった。

「明日から、新しい『ゼフィラス』として活動開始だ」

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