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散文詩  作者: 百島圭子
3/15

散文詩 3

日々、心に残ったことを文字で残してみた


「鏡子おばさんの家」


明治生まれの鏡子おばさんは上品で怖かった。

すべてにきちんとしていて隙がない。

棚にも障子の桟にも埃ひとつない。

廊下は磨き上げられて顔が映りそうだった。


海軍将校だったおじさんがなくなってから九十六歳でなくなるまで、一人で平屋の日本家屋に住んでいた。

小さいが庭には池があり赤い鯉が何匹か泳いでいた。

日本庭園の造りは整然として子供が遊ぶのを許さない。


鏡子おばさんが亡くなって、その家は親戚の若い夫婦に安く売られた。

鏡子おばさんの三人の子供たちはそれぞれが自分の家を持ち、誰もその家で暮らす者はいない。


家を売ってから数年後、鏡子おばさんの末っ子の三男、康雄おじさんが生まれ育った鏡子おばさんの家を訪れた。

親戚たちが是非一度見に行ってみろとしつこく言うからだ。

それは綺麗にして暮らしているよと。


鏡子おばさんの家はもうなかった。


池は潰されて品のないピンクの芝桜が植えられていた。

芝生は手入れが大変だからコンクリートで埋められていた。

洋風の花が植木鉢に入れられてあちこちに置かれている。


康雄おじさんは家の周りをぐるりと見て回ると何も言わずに帰って行った。


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