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散文詩  作者: 百島圭子
28/55

散文詩 28 「挨拶」

日々、心に残ったことを文字にしてみた

「挨拶」


How are you? 「調子はどう?」


そんなに親しくなくても会った相手に「調子はどう?」と尋ねる。コーヒー屋の店員にも言われる。大きなお世話だ。こう聞かれると二日酔いで調子悪かったり、寝不足でぐったりしていても、goodとかokayとか、取り敢えず大丈夫と答える。嘘をつく。私は正直者だからこの挨拶が嫌いだ。


だが実際の心情を話し出したら一時間は掛かってしまうから仕方ない。それに相手はそんなこと聞きたいからHow are you?と言ったのではない。ただの挨拶だから言ったまでのことで、身の上話をされたらコーヒー屋のお姉さんもたまったもんじゃないだろう。


相手のことを心配して尋ねているわけではないが、あなたのことを気にかけていますよってことだろうか。正直に自分の調子を答える人も見たことがない。挨拶で他人の調子を遠慮なしに聞いてくる厚かましさが西洋文明を発展させたのだろう。


日本ならお天気のことを言えばいい。「いい天気ですね。」とか「寒くなってきましたね。」とかお互いに地球上にいるかぎり関係はあるが、お互いの心の中まで挨拶のために晒さなくて済む。日本の挨拶は実にちょうど良くできている。よく知りもしない人に心中を明かす必要はないのだから。


そういえば私はHow are you?と言われると「寒いから嫌だ」とか天候を理由にして返事することが多い。正直者にはとにかく面倒くさい挨拶なのだ。


Have a good day. 「いい一日を」


これは好きだ。初対面の人でも誰でも、別れ際に「いい一日を」と言う。直訳すると「いい一日を持て」という命令形だが、いい一日にしてね、あなたの一日がいい一日でありますようにという感じだ。あなたの一生の幸せを祈り続けることはできないけれど、今日一日くらいなら元気でいてくれと祈ることができそうだ。言った後は無責任に忘れてしまってもいい。ちょうどよい距離感だ。押しつけがましくもなく、冷たくもなく、ほんわかあったかい気持ちが伝わる。


でも日本語で「いい一日を」なんて言われたら変な感じがする。その日一日が拘束されたような気がする。あなたは私のこの先のことも考えているのかと思うと気持ちが悪い。私の一日が良くなろうと悪くなろうと私次第だ。私が決める。あなたと別れた後は私の勝手に生きさせとくれ、と思う。



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