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散文詩  作者: 百島圭子
24/56

散文詩 24 「嘘」

「嘘」


先月、伯父(父のすぐ上の兄)が亡くなった。


父は男ばかり6人兄弟の末っ子である。

6人のうちすでに4人は亡くなっていたので、伯父と父が二人だけ残っていた。


父は順調に歳を取って目も耳も悪くなり、おまけに前頭葉が小さくなったのか、急に別人のように怒り出すこともある今日この頃なのだ。


伯父は80過ぎていたし介護施設にいたので、みな十分に覚悟ができていた。


しかし従兄から伯父が亡くなったと電話をもらった私は、父に伯父の死を告げることを躊躇った。


父は18歳で東京に来てから、故郷の九州にいる伯父とは頻繁に連絡を取ることもなく、特に仲の良い兄弟というわけでもなかったが、羽田までもう一人では行かれなくても、きっと九州に行くと言い出すだろう。いや、ただ悲しく寂しく落ち込んでしまうだろうか。まったくどう出るか予想ができない。


母と相談して、しばらく伯父の死は隠しておくことにした。


最後の兄弟が亡くなる時・・・私には兄弟姉妹がいない。想像すら難しい。


香典返しが見つからないようにしたり、従兄弟同士で口裏を合わせたり、一つ嘘をつくと次々と嘘を重ねていかねばならないことを実体験する。嘘はつきたくない。


バタバタしているうちにひと月が過ぎ、一体いつ父に伝えたらいいかもっとわからなくなってきた。このまま死ぬまで言わないでおこうか、父の死に際に駆け込むように伝えようか。

「知らぬが仏」が当てはまれば、お釈迦様も私の嘘を許してくれるだろうか。


父は知りたいだろうか。知らずに兄が生きていると思っているほうが幸せだろうか。

そこには嘘をついている罪悪感が混じり合って、私は答えがわからない。



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