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散文詩 22 「仏」
「仏」
88歳の庵主さんのところに70歳の女の人がやって来た。
女の人は家も無く食べる物も無く、借りた5000円ももう使ってしまったと言う。
女の人は1200円貸してくれと庵主さんに頼んだ。
庵主さんはお金を貸して、住む家まで世話してやった。
清潔なマンションに10日住んだ女の人は、どこかへ行ってしまった。
野菜を届け、面倒をみていた庵主さんには何も言わずに女の人は消えた。
家にあったトースターや鍋は無くなっていた。
女の人は近所の人にもお金を借りていたらしい。
女の人のいなくなったマンションのテーブルの引き出しに、マル印のつけられた求人広告が残されていた。
庵主さんは「働くところを探してたんだねぇ。生きようとしてるんだねぇ。」と言った。
「女の人は、人を騙しても嘘をついても盗んでも、必死で70の命を生きようとしている。
生きようとしている人に手を差し伸べるのは悪いことではない。
お釈迦様にどうしたらいいか問うと「許せ」と言われる。
自分は彼女を許せる自分を嬉しいと思う。
お釈迦様は自分を殺そうとした者を仏と言った。彼がいたから自分は仏になれたと。」と庵主さんは言う。
自分の中の仏を見つけるために、悪い人に出会うのだろうか。悪いことが起こるのだろうか。




