ありがたく無い
私は彼女を守らねばならない
彼女は我が国における重要な存在になるだろう
その為には彼女に気づかれない様に守らねばならない
ありとあらゆる悪意から、
彼女にはまだ何も教えないほうが良いだろ。
あのいい加減にしてください!
私の前に変な風に出てくるのを止めて欲しいんです。
名前もロクに名乗らないで、木の上からとか本棚の影とかから来るの止めてください。
何がしたいんですか?
ぶつかったり落ちたりしたら危ないのでは?
抱き止めてあげるって貴方のことですよ?何言って居るんですか?
いきなり髪とか頬に触るの止めて欲しいです。他人に体に触れられるの嫌なんです。
恥ずかしがらなくて良いって?本当に嫌なんです!
お弁当とか勝手につまむの止めて欲しいです!
お腹空いて居るんだったら、学食で自分で買って下さい!
君の作ったものが食べたい?
私は貴方の召使じゃありません!
花束とかアクセサリーとか投げてくんの止めてほしいんですが、花はくしゃみ出るから苦手だし、
アクセサリーは付けると痒くなるんですから苦手です!
友人には「ロマンス小説みたいで羨ましい」って小馬鹿にされるし、
「貴方如きが彼の方に近寄れるとは思わないことね」とか変な人に絡まれるし本当に人間不信になりそう!
先生は「・・・気のせいだと思って下さい、決して人通りが無い所を一人では出歩かない様に」とか言って何もしてくれないし!
今まで助けただろうって?何をしたんですか?私をいじめて居た人を?って?詳しい事お聞きしたいんですが?私はいじめられて居ないし、何もされて居ないんですが?
はっきりって迷惑なんですが!
って居ない!
全然話聞いてくれないんだから
あの、貴方は宰相の息子さん?
はい、家庭教師?ですか?
貴方が?
早速のこの問題やってみろと・・・
出来ません・・・その基本のところを教えてもらいたいんですが
ってため息って
仕方がないじゃ無いですか今までこんな勉強したことないんですから
またため息、
まずは算数からってそこはわかるんですよ!私が知りたいのはですね!
基本です基本!
もう!教科書だけ持って来てください!
うわ!いきなり何ですか?
貴方は騎士団長の息子?
何の御用ですか?
守ってやると?
何でですか?
何でもと?
大声じゃなくっても聞こえてますよ。
いきなり腕掴まないでください!痛いです!
お前が遅いからって!
どこへ行くんですか?
寮って自分で帰れます!
いきなりなんなんですか!
あの殿下?
彼女のことなんですけど、はあ、ゆっくり見守ってくれとそれは私どもも配慮しておりますが、他の生徒のこともありますし、一人だけに配慮するというのも・・・
はあ、人間関係?こちらで把握するには限界が・・・
人員を出す?・・・大丈夫なんですか?
彼女の為には惜しまないと・・・そうですか?ならこちらからは何も・・・
あの・・・彼女には、なんと・・・背負わせたく無いと・・・・
こんな人数が動けばバレるんじゃ?彼女に伝えたほうが?
絶対に伝えるなと?・・・畏まりました。
現状の継続で・・・・・・・・
・・・はあ
今度はパーティー?ダンスとかマナーとかを今から学べと?
何言って居るんですか?間に合うわけ無いでしょう?
簡単だから大丈夫?できるわけ無いでしょう!
ドレスなんて持って居ませんし!
私が贈るから大丈夫?ってそんな問題じゃないです!
今から特訓!私まだ勉強が!!ちょっと離して下さい!
言ってみるもんだ。
我が国に来ないか?とうわさの「聖女」とやらを誘ってみたら、
「行きます!」と即答された。
「すぐに荷物まとめて来ます!」と出て行こうとしたので、
慌てて「準備があるから少し待て!」と引き止めたら
「どのくらいかかりますか?明日?明後日?いつになりますか?」
と鬼気迫る感じで聞いて来た。
パーティーのとき王子に振り回されて居たからなあ。
「そんなに私の国に行きたいのかい?」と聞いたら
「この国以外ならどこへでも!」と
元の身分からは想像できないほどの栄誉が与えられて居るのに?
・・・何かが不満なんだろうか、命の危機なのか?
君は騙されて居る!!!
そいつらは君の力しか見て居ない!!
君を利用することしか考えて居ない!!
さあ、帰ってくるんだ!!みんなが待って居る!!
「みんなって誰ですか?」
「みんなはみんなだよ。君の帰りを待って居る!」
聖女に隣国の王子は叫んだ。
彼女は隣国からやって来た「聖女」だ。しかし待遇に不満があったらしく、留学生としてやって来た公子の誘いに乗ってこの国に来られた。初めは「無責任な」と言う声が上がったが、彼女の「聖女」としての献身的な働きぶりに見直す様になった。
「帰りません!」
「そんなことを言うな君が生まれ育った場所だろ!」
「もうありません!貴方たちに潰されました!」
彼女が住んでいた孤児院は王家によって潰された。どうやら人身売買組織と繋がって居たらしい。
「騎士団長の息子だって、宰相の息子だって君の帰りを待って居る!」
「信じられません!あの人たちは私を嫌って居ました!」
「なんでそう思う!みんな君を頼りにしていた!」
「騎士団長の息子さんはいつも『遅い、ノロマ』とか言って急かすし、宰相様の息子は『こんな問題も解けないのか』とバカにしてくるし説明わからないし、雑用やってもここがダメあれがダメ言い方が悪いと怒るばかり!」
彼らは彼女の教育を任されて居たようだが・・・うまく行って居なかったようだ。
「それはみんな君のために・・・」
「辞めたい、嫌だと言っても『せっかくの栄誉を無駄にするのか』と怒るばかりで・・・」
平民が貴族子息達と学ぶのは辛かろう元からの基礎が違う。
「君だって差し入れ持って来てくれただろう」
「あれは自分用です!でも貴方たちに言われたら差し出さないわけには行かいじゃ無いですか!だんだん私が皆さんのお弁当とかおやつとかを作る羽目になって、こっちは仕事が増えて大変でした!」
彼女は大食いだ「聖女」の力は体力を消耗するそうだ。だからお腹がすくと。
「でも・・・楽しかっただろ?」
「貴方たちは楽しかったでしょうね。身分の低い女を好き勝手に振り回すんだから、正直・・・」
「それは悪かった!!だから帰ろうよ!!!」
「迷惑でした!身分的に逆らえないからこっちはいつもいつもハラハラしていました!」
彼女は楽しめなかった様だ。
どうやら隣国は彼女に何も教えて居なかった。
それどころか、彼女を振り回していた様だ。
「自分が『聖女』だって言うのもこの国に来て初めて知りました!何にも教えてくれなかった!孤児院の事も!私の家族のことも何もかも!」
「それは・・・君に精神的な負担をかけたくなくて!」
「それって私に都合の悪いこと隠して居たってことですよね!お母さんが前王の隠し子だとか!お父さんが隣国で騎士だったとか!」
彼女の母親は前王がメイドに産ませた子で、商家に養子に出された。父親はこの国の騎士で一兵卒からの叩き上げだそうだ。
「君が真実を知ったら悲しむと思って・・・」
「みんな何も教えてくれないから、不安不安でたまらなかったしあんた達は付き纏って来るしもう最悪でした」
「それは君を守るために・・・」
「私が何も知らないから、みんな怒るし嫌味言われるしでもう散々!私は帰りません!」
「そ、そんな・・・・君のためだったのに・・・・」
守られヒロインに何も言わない、何の意見を聞かないのはダメだと思う。