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落下の軌跡

作者: 野火俊弥



ボンヤリと憂鬱な黒々とした眼の裏側に位置する暗い貪欲な中枢は

白痴とは名ばかりの歴きとした狂喜の潜む処でありその更に奥の方

私の与り知らぬ獰猛な獣を飼い馴らして居るのかと内心、この男の

目の裏側に恐怖を感じる事がしばしば有り、何を考えているのかと

問うても、ボンヤリとした黒が揺らぐ事は稀で、本当に何も考えて

居ないような緩やかなそれでいて確実な動きで私を覗くその双眸の

暗い暗い奥に映り込む歪んだ私の像は酷く醜悪で情けの無いただの

凡庸な人間だった、又はこの男の想像する所の力無き存在であろう

過去の亡霊だった私は老いたがしかしこの男の首を縊り捻る事など

造作も無い日常的な事なのだがだったのだが、それをいま、今直ぐ

実行、しないのは私が老いたからだ、この男を殺す事に僅かながら

躊躇が生まれているそれはこの男の人間臭さと謂うのが私に対して

矛盾だらけの脳内組織が発する微弱な電気信号が形成する心象風景

を羅列する確かな鏡である緩やかな螺旋、何処の何も映しはせず、

ただボンヤリぼんやりと中空を彷徨う風花、直ぐに消えてしまう

揺れない届かない地に落ちない漂うだけ何を

そんな男の、緩やかな落下の過程の中

赤の焼けた日の中で私は生きる



「きっとそれはどこか遠い次元の想像もつかないようなこと」



君はきっと笑うだろう

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