STORIES 086: ホテル、夕刻のロビー
STORIES 086
フロントでチェックインを済ませる。
人の出入りが多いロビー。
降りてくるエレベーターを待つ。
9階、8階…5階でいったん止まる。
4階、3階…
音もなく開いた扉に路を空けると、降りて来た女性とすれ違う。
小綺麗にまとめられた髪。
風に舞うような薄手のアウター。
どことなく優雅な歩みで去ってゆく。
待ち合わせなのか。
それとも軽い食事にでも出るのだろうか。
僕は小さめのスーツケースを引き寄せながら、エレベーターに乗り込む。
暗くなり始めた駅前通り。
彼女の後ろ姿が消えるのを見送る。
.
扉が閉まり、ゆっくりと上がり始める。
すると…
四角い空間に漂う、ほのかな残り香に包まれる。
パフュームでもなく、シャンプーでもなく、柔らかな化粧品の香り。
見慣れぬ街の夕刻。
この感じ、なんとなく良い気分。