第六十四話 自然光に照らされて
・主な登場人物
神繰麻貴奈:二年一組の女子生徒。生徒会執行部副会長。機械のようなしゃべり方の上、表情がロボットのように変わらないが、情に厚く不安症。
氷堂空間:二年三組の男子生徒。委員会には所属していない。成績優秀でクラスメイトからの信頼も厚い。丁寧な口調は口癖。
梶鳴テトラ (かじなり てとら):商業科二年の生徒。かなり明るいオレンジの長髪が目立つ健康的な少女。マイペースな性格で、コミュニケーション能力は高いが友人は少ない。
三々百目ぽぽ:二年三組の少女。身長が二メートル近くある。睡眠で身長が伸びると困るので、なるべく授業で居眠りしないように努めている。
この学校には、天使がいる。
それは誰も疑うことのない噂として、台典商業高校で話される言葉だ。多くの生徒にとって前に進む理由となる光。あまりにも強いその光は、ネオンのように現実感を眩ませる。きっと彼女がいれば大丈夫なのだと、その存在が世界の正しさを補強する。限りない善だと誰もが信じ、この世の不条理を忘れさせる眩さだ。
しかし、誰もを笑顔にするその光も、誰かを照らせば影を作る。その光の下へ歩もうとするものが振り向けば、そこには長い影が伸びている。
どれだけ学び、追いつこうと努力したところで、才能という物の差は縮まらない。テンプレートに当てはめても、ステレオタイプに変換しても、その機械的な理解では、天使という奔放を模倣することはできず、ただいたずらに影を増やすばかりだった。
けれど、もうその光を掴むことを諦めることも難しい。瞼に残る残光は、目を瞑っても胸を締め付ける。光が消えれば、自分には何も残らないという焦燥が、鼓動を逸らせる。
私はどうなりたいのだろう。
そっと鏡に問いかけても、不愛想な顔は表情を変えない。
きっと明日は何か変わっているはずだと言い聞かせて、少女はぎこちなく一歩を踏み出していく。
日の長くなった校舎に、騒々しい足音が響く。終業の時間からしばらく経ってもまだ空は明るい。
「ま、待ちなさいっ」
「え~? 十分待ったと思うけどな~」
膝に手を付いて荒い息を吐いた私は、ニヤニヤと廊下の角で立ち止まって、余裕そうにこちらを見つめる彼女———梶鳴テトラを睨んだ。
商業科の問題児の一人。校則をわきまえず髪を染め続けている上に、先生方や執行部からの注意から逃げ続けている生徒だ。
悪い意味で目立つ生徒ではあるが、商業科の友人関係で問題を起こしたという話は聞かない。校内風紀が緩んでいる印象を持たせないために、執行部では彼女を注意する体裁を保たされている、というのが藍虎先輩から引き継いだ業務内容だ。これまでは天使先輩が行なっていた業務だったが、生徒会長になり多忙の中ではそんな時間も無い。必然、私に回ってくるのであった。
「大体、なんでそんなに校内で速く走れるんですかっ? あなたは、部活にも入っていないはずです」
「それ、関係ある? まぁ、鬼ごっこはもう慣れたものだし。天使先輩に鍛えられたからさ~」
勝ち誇るように鼻を鳴らす彼女に、煽られていることを悟り、枯れ果てた体力に見合わない怒りが込み上げてくる。
「いい加減にぃ—————」
「わわっ、怖い怖い~」
不意を突いて駆け出しても、軽快な彼女の健脚に距離が開いていく。職員室の前の廊下を左へ曲がり、特別棟の奥へ。窓越しに彼女の向かう先に知った姿を見かけて声をかける。
「氷堂くんっ、その子、捕まえてくださいっ!」
驚いた様子の彼を、梶鳴さんは軽妙にすり抜ける。かと思うと、氷堂くんの背に回り、盾にするように隠れた。
「ああ~、その、梶鳴さん? 廊下で走るのは、あまり感心しませんね」
「あはは、何それ。執行部の物真似?」
バスケットボールのドリブルのように、梶鳴さんは氷堂くんの体を軸にして左右に揺れる。私がにじり寄ると、間合いを見極めるように動きを止めた。
「あの、肩が痛いのですが?」
「いいじゃん、もうけがは治ったんでしょ?」
「病み上がりの人間を盾にするとは、随分とあなたも非道なのですね」
「……氷堂くん、その人を捕まえてください」
氷堂くんは、困ったように肩をすくめると、人質に取られたようにため息をつきながら両手を上げた。
「————————っ!」
私が一歩を踏み出した瞬間、梶鳴さんは体を翻して廊下の奥へと駆け出していく。
「あいてて……」
私は、氷堂くんを軽く押しのけて彼女の後を追う。廊下の角を曲がった先は校舎の行き止まり、特別棟だ。しかし、階段の方へと抜けていった彼女の背を見て、私は彼女との走力の差に絶望する。
もはや、見えなくなった背を追って、私は階段を駆け下りる。息は再び荒くなり、視界も狭まっていることを自覚する。足を挫かないように気を付けながら、二段飛ばしで階段を下りる。一階の廊下を飛び出すと、大きな影にぶつかりそうになる。
「ご、ごめんなさいっ」
「————ああ、麻貴奈。私は大丈夫だけど、麻貴奈こそ、怪我はない?」
「ぽぽ……うん、ごめんなさい」
友人の三々百目ぽぽに改めてぶつかりそうになったことへの謝意を述べる。周りを見回したが、すでに梶鳴さんの姿は無かった。書類を抱えた友人は、心配そうに私を見つめている。
「あの、ぽぽ。今、派手な髪の毛の色の女の子が、ここを通らなかった?」
「ええっと…………」
「もしかして、上の階に行ったのかな?」
思えば、階段の方に行った姿を見ただけで、下の階に行ったというのは私の思い込みだった気もしてくる。そう思い始めると、こうしている内にも彼女との距離は遠くなっていくように感じられた。
「ごめん、私急がないとなんだっ」
「あ、麻貴奈————」
ぽぽに背を向けて三階へ駆けのぼる。そもそも上の階と言ったって、三階か四階かも分からない。切れた息は戻らず、速くなる鼓動の音がうるさかった。
「絶対、捕まえてやる……」
業務として、追いかけるだけでいいと言われていたのに、妙な競争意識が芽生えてくる。ただでさえ逸っていた心は、火がついて空回る。きっと、天使先輩ならもっとうまくやっていたはずだ。スマートに、インテリジェンスに、アドバンスドな方法で解決したはずだ。
私は、彼女の背など簡単に追いついて然るべきなのだ。。だって、そうしないといつまでもあの翼には—————。
居場所の見当もつかず、息を戻そうと窓枠に手を付く。窓越しに向かいの校舎を見ると、遠くからでもよく目立つ友人、ぽぽの隣にさらに良く目立つ明るい髪色の少女が立っていた。
「あ、あんなところに…………って、それよりも、ぽぽ————!」
さっき別れたばかりの友人が、憎き捜索相手と談笑しているように見え、頭に血が上る。梶鳴さんが来たか尋ねたときの、困惑したような様子は、きっと匿っていたからだったのだ。どうして、友人であるはずの私にそんな不義理をしたというのだろう。
それはきっと、彼女に何か騙されているのだ。あるいは何か弱みを握られているとか。とにかく、ぽぽに直接聞いてみるしかないことだ。
でも、もし、それが私との友人関係を覆すようなことだったら。あるいは、そもそもそんな関係性は存在していないのだとしたら?
コの字の校舎を二階に戻り、角を曲がれば二人がいるはずだ。なのに、どうしてかもう一歩が踏み出せない。それは、廊下の先から聞こえてくる笑い声のせいかもしれなかった。
談笑の声は、梶鳴さんとぽぽのものだ。落ち着いた声色が、なぜか心を乱す。
私は、彼女の、友人のはずの背の高い少女のことを何も知らない。教室でよく話していた紛れもない友人。私の、初めての友人。それは唯一無二の存在のはずで、間違いなく大切な人のはずで、なのにどうしてかクラスが別れてからは言葉を交わすことも少なくなっていた。
私は生徒会副会長として、彼女は監査委員会の副会長として、それぞれやることが増えたから。文系と理系で授業も違うから、話題も減ったから。
そんなの、言い訳だって分かっている。友人ならもっと話すのが普通なんてこと、私でも分かる。
私は、人から理解されにくい人間だ。表情も硬いし、声色も冷たい。何事にも淡白だと言われるし、実際興味の無いことの方が多いのかもしれない。
人付き合いが苦手なのは分かり切っていたことだったが、二年次になって余計に痛感した。むしろ、一年生の時からそうだったことに、私が気付いていないだけだったのだ。ぽぽと一緒にいることが楽しくて、他に目が向いていなかっただけだ。私の視野が狭いばかりに、自分たちが孤立していることに、ぽぽを孤立させてしまっていることに気が付いていなかった。
副会長だから、しっかりしていると頼られる。その期待に応えるために、必死に勉強も、執行部の活動も頑張っている。でも、いつまで経っても、憧れの人には追い付けないし、普通の人間でいられているかすらも不安になるほどだ。副会長である前に、ただの学生として私は及第点以上になれているだろうか。
立候補をして、投票されて。それは誇らしいことだと思ったが、もっとふさわしい人間がいたのではないかと何度も思う。そして、そのふさわしい誰かが現れたとき、私はこの場所を譲る決意もできないまま、失意の中で抵抗もできず落ちていくのだ。
私には、才能が無いから。姉のようにも、天使先輩のようにもなれない。ただの出来損ないの木偶人形だ。
いつの間にか、声は遠くどこかに消えていた。私は壁に背を預けて、ゆっくりと崩れ落ちた。こんなところで挫けてはいけないと分かっているのに、立ち上がることもままならない。糸が切れたように、体が言うことを聞かなくなってしまう。業務も何もかも忘れて、このまま朽ちてしまいたいとすら思う。
ガラガラと古い戸の音が響いて、ゴムの擦れる足音が私に近づいてきた。
「おや、麻貴奈。こんなところで休憩とは、ずいぶんと余裕があるようですね」
少しだけ優しい声で、うさん臭く話しかけてきたのは、氷堂くんだった。
「氷堂…………」
「別に呼び捨てでも構いませんとも。それより、テトラとの鬼ごっこは終わったのですか?」
「テトラ……?」
いじけた心のままゆっくりと頭を回して、ようやく梶鳴さんの下の名前と照合できた。なぜ彼は梶鳴さんを呼び捨てにしているのだろう。
拗ねきった心は、簡単に答えを導き出す。きっと、友人だからだろう。だから、さっきも私ではなく彼女の肩を持ったのだろう。
「あなたには関係ないと思います」
「それはそうかもしれませんが、職員室の前で座り込む友人を放っておくわけにもいかないでしょう」
「あなたとは友人ではないです」
「これは手厳しい。では、同僚というのでどうでしょう。どちらにしても、あなたを放って生徒会室に戻るのは得策ではないように思いますね」
「勝手にしてください」
投げ出していた四肢を丸め、三角座りで顔を埋める。感傷的な気持ちを掘り起こされるのは癪だった。
「あ~、クマっち~。何、また先生たぶらかしてたの?」
おどけるような声に顔を上げると、そこには廊下の奥から歩いてくる梶鳴さんとぽぽの姿があった。
「これは人聞きの悪い。今日はただの業務連絡ですよ、テトラ」
張り付いたような笑みが、どこか楽しげに見えるのは友人と話しているからだろうか。ただでさえ硬い自分の表情筋が、さらに強張るのを感じる。
「って、あれ? さっきの子じゃん。やばっ……って、ぽぽ?」
ぽぽに腕を掴まれて、梶鳴さんは気まずそうな表情で私を見つめている。
「麻貴奈、少し時間をください」
背の高い友人の大きな手に引き上げられて、私は立ち上がらざるを得なくなったのだった。
それから、歩くことを渋ろうとした私は、ぽぽに抱き上げられて中庭に連れてこられた。夕暮れ泥み始めた空は、それでも中庭を照らしていた。
中庭のベンチに座ったぽぽは、私を膝の上に乗せた。私の小柄な体はすっかり彼女に収まってしまう。
「あの…………ぽぽ?」
「ごめんなさい。無理やりになっちゃって……でも、なんだかあなたが苦しそうだったから」
ぽぽの長い腕が私を包み込む。暖かな彼女の体温に、私は少しだけ気持ちが落ち着いた。
「悩みがあるなら、抱え込まなくていいから。私に教えてほしい。執行部、楽しくないの?」
ぽぽの言葉に、私はぎゅっと彼女の腕を抱きよせた。
執行部の活動が苦しいなんてこと、あるはずがない。憧れの先輩の下で研鑽を積むことができる。かっこいい先輩に教えてもらって、色んな人と関わって。
苦しいのは、矮小な自分自身だ。
言われたことしかできなくて、きちんと学べているのかも分からなくて、成長できている気がしない自分の不甲斐なさが苦しいのだ。
そして何より、そんな弱音を口に出せない自分の臆病さが苦しくて仕方がない。私はいつだって、感情を表に出さない寡黙な人間でいなくてはならない、なんて誰に言われたわけでもない自分自身のペルソナの檻から出られない。
「ぽぽは……梶鳴さんと友達、なの?」
口の端からこぼれたのは、そんな小さな嫉妬だった。
ぽぽは意外そうな表情で、ほんの少しだけ笑って答える。
「テトラは、友達……というか、中学校の時の知り合い。部活が一緒だったから」
「道理で足が速いと思った」
ぽぽの中学校時代の部活は、陸上競技だったはずだ。あまりいい思い出も無かったと言っていたが、そんな頃の知り合いということは、梶鳴さんもかなり実績があるのだろうと勝手に推測する。
「え~、そこは友達って言ってほしいけどなぁ。あの頃はともかく、今は友達っしょ?」
中庭で会話に入りあぐねていた梶鳴さんが、身を屈めて屈託なく笑う。その明るい表情に、毒気を抜かれてしまった。彼女は、悪い人間ではないのかもしれない。行動や生活はともかく、その精神構造においては。
「友達、なの?」
「どうだろうね。今もただの顔見知りかも」
ぽぽは私の腹に手を回し、抱き上げて姿勢を整えるとそう呟いた。
「つまり、麻貴奈さんは唯一のご友人である三々百目さんが奪われたようで傷心だったのですね」
人の気持ちも考えずに道化た声で会話に割入ってくる氷堂を、梶鳴さんがじとりと横目で見た。
「クマっちって、デリカシー無いよね~」
「ふふ、デリカシーなど、あるだけ無駄というものですよ、テトラ。麻貴奈もそうです。あなたに、抱え込むのは似合わないと私は思います」
「うるさいです」
氷堂くんに諭されると無性に腹が立つ。絆されたくなくてそっぽを向いた。
「私は、天使先輩の後を継いで生徒会長になるので。弱音なんて、吐いてる場合じゃありません」
「おやおや。テトラ一人捕まえられないのに、大きな口を叩くのですね」
「え、何。アタシって登竜門かなんかなの?」
氷堂くんは、ほんの一瞬冷たく私を見据えた後、また柔らかで胡散臭い笑みに戻る。
「あなたが完璧である必要なんて、どこにもありません。それは、あなたが天使の後を継ぐにしても、です」
「でも、それじゃあ誰もついてきてくれない。先輩みたいにきちんとしないと————」
「それはあなたの役割ではない、ということですよ、麻貴奈」
氷堂くんは自然な動作で私の手を取る。妙に慣れた手つきに少しぞっとする。
「完璧でない、欠けている。だから完璧になりたいと願うのは結構ですが、人間として、生徒会執行部として求められているのはそんな真円ではない。あなたのそうした人間らしさを、生徒たちは求めているのです」
私が睨むのも構わず、私の手の甲を口づけるように彼は嗅いだ。
「ええもちろん、仕事の出来ようは大事でしょう。しかしそれはあくまで副次的なもの。私も、後輩たちもいます。その次の候補たちもいるでしょう。仕事をこなすのは集団だ。それが失敗であれ成功であれ、個人であるあなたが期待されるのは、どうやってというプロセスの部分に他ならない。私たちは見世物のようなものなのです。失敗も成功も、酸いも甘いも許される成長譚を共に描きましょう」
「そうやって言葉でごまかしたって、失敗が許されるわけでも、未熟が見過ごされるでもないと思います。あなたの言う通り、私は梶鳴さんの問題一つ解決できない。それで、満足して前に進めと言うんですか?」
氷堂くんは、おかしそうにふふふと笑う。心配げにぽぽが私を抱き寄せた。
「失敗なんて、ただの結果ですよ。起こってしまった後には、経験にしかならない。いつまでも固執していては、進むべき場所を見失うのみです。今のあなたのようにね、麻貴奈。
たとえ不格好でも、不完全でも、あなたは天使先輩の背を追って空に飛び出せばいい。ただその空を高く飛べるようにとだけ考えればいいのです。たとえそれが、イカロスの翼だとしても、ね」
それは、悪魔のささやきだった。足が疲れて動けなくなりそうな私に、崖から飛び降りさせようと笑いながら手を差し伸べてくるような甘言だった。
だけれど、その言葉は、私の背に影を差す雑言とは違った。私を孤独にさせる十把一絡げの呟きでもない。聞こえのいいだけの薄っぺらな言葉でも、私に手を差し伸べていた。
「私は、不格好でも、不完全でもありません。最強で完全な生徒会長になったりますから」
その手を取るのは、やっぱり癪で、私はふんすと鼻を鳴らした。梶鳴さんがふふっと笑って氷堂くんの背を叩いた。
「いーじゃん、なんかさ。応援したくなっちゃったかも。こりゃ選挙は麻貴奈っちの勝ちかな~」
「ふふ、選挙はあなたの独断でありませんよ、テトラ」
氷堂くんが軽くいなすと、二人は親しげに笑い合う。
「かじ————テトラ、さん」
「テトラでいーよ」
「その、じゃあ、テトラ…………ぽぽは、私の友達なのでっ」
私がぽぽの腕を抱き寄せると、テトラは目を丸くしてクスリと笑う。
「そっか。じゃあ、ぽぽより先に、麻貴奈っちと友達になろっかな~?なんて」
テトラは道化た笑みで私に小指を差し出してくる。ぽぽが無言で私を抱き寄せて制した。
「冗談。まぁ、それも私を捕まえて反省文の一つでも書かせてからの話かな~」
テトラは、それじゃあねと言い残して、気ままに中庭から去ってしまった。
「まったく、相変わらず勝手な人だ。私たちも帰りましょうか。今日はそう仕事も多くない」
そう提案する氷堂くんから軽く目をそらして、私は夕焼けの光を浴びて去っていく、自由な魚のようなテトラを眺めた。氷堂くんの言葉なんて覚えていたくないし、テトラの何気ない応援の言葉を代わりに心に留める。
夕日に明るい髪の色が良く映える彼女に、どこか救われたような気持ちになりながら、私はまた、美しい空を見上げて手を伸ばす。いつか、その空に飛び立てますように、と。