第四十五話 さよならを教えて
・主な登場人物
愛ヶ崎天使 (まながさき てんし):この物語の主人公。天使と呼ばれ、期待され、慕われ、期待された少女。
この学校に、天使はいない。そんな当たり前のことが、なぜだか誰もの心をひどく悲しませる。
それは事実としては、それまで皆勤であった一人の少女が、学校を休んだというだけのことだった。次いで、担任から彼女が一か月の休学となるという端的な報告が述べられただけのことであった。誰もがすぐに脳内のカレンダーをめくり、その生徒が体育祭に参加できないことを理解した。
教室で彼女の不在を悲しむ誰よりも暗い瞳で、澄ました顔を装う空席の隣に座った少女に、お調子者を気取る生徒ですらも、事情を聞くことは憚られた。どこかから流れてきた小さな噂をかき集め、生徒はそれぞれ少しずつその真相に近づいていく。
それは決して、好奇心によるものではなかった。誰も知りたくは無かったのに、語らざるを得ないのだ。聞かざるを得ないのだ。もしかしたら、自分の不安は杞憂であると、一笑に付されるかもしれないと思いたかったのだ。
週が明けないうちに、天使の噂は学校中に広まった。彼女に興味を持たない者はいなかったから、誰もがその噂を口々に噛みしめた。直接的な処分を受けた部活動の生徒や、そのクラスメイト達を発端とし、同時に入院となった一年生の生徒の話が加わったことで、天使の噂は、いよいよ疑うべくもない悲劇として認識された。
悲しみに暮れる者、必死に忘れようとする者、天使を信じる者、より詳細な真実を求める者。反応は様々であったが、誰もが前に進み始めた。それは体育祭という、目下の行事が存在したからでもある。
天使が不在であろうと、ゆっくりと世界は回る。それが人間の寄り集まってできた社会というものである。しかし、群れからはぐれたリヴァイアサンの目は、そう簡単に動き出すことはできないのであった。蜘蛛の子を散らした強大で漠然とした不安が、一人でいると、いつまた襲ってきてもおかしくはないのだ。
それでも、誰かが立ち止まってしまったとしても、世界は回り続けている。それならば、立ち止まっていることすらも前進と呼べるのではないだろうか。
何度目かのアラームを止め、天使は眠たい目を擦る。とっくに日は昇っていたが、閉め切ったカーテンが明るい日差しから彼女を守っていた。
天使は再び寝返りを打ち、薄い掛け布団を枕の向こうまで引っ張ると、体を丸めて汗の染み着いた寝間着に顔をうずめる。
最後の登校から、三日が経っていた。最後にシャワーを浴びたのはいつだっただろう。もう何年もこうして閉じこもっているような気分だ。
五分後のスヌーズに怯えるように、丸まったまま息を潜める。暗い布団の中で、わずかに体をよじらせた衣擦れの音や、外で快活に啼く小鳥の声や、壁掛け時計の針の音が過敏に感じられた。
時間が長い。
事件のあった日、誰かに家まで送ってもらって、明日は休んでもいいと伝えられた。次の日には、正式に休学が決まったと書面で通達された。誰がその紙を持ってきたのかの記憶はもう無い。
何もすることがなく、かといって、外に出るのは億劫だった。家の外に一歩でも出れば、そこは校区内であり、通学路だ。自分には、休学を決定づけられるだけの『罪』か、あるいは『穢れ』があるのだと、漠然と思う。きっと学校の生徒が、私を一瞥でもすれば、下卑た野次を飛ばして攻撃でもするか、憐れむように侮蔑を囁き合いながら遠ざかっていくかだろう。そう考えるだけでも腹が立つ。望まれているなら、そうしてやったらどうだろう。いっそ開き直って、出会う人を言葉もなく殴り倒してみたらどうだろうか。
信頼し、羨んでいた副会長に、獰猛な牙をむかれる気分はどんなものだろう。可愛いと蔑み、元気だと侮った飼い天使に、喉笛を引き裂かれる気分はどんなものだろう。考えるだけでも心が晴れやかになってこないだろうか。
天使は雑念を振り払うように頭を振ると、体に被さった布団を蹴り飛ばす。体を丸めたまま、枕もとのスマートフォンの画面を何度も指でたたく。何度も、何度もたたく。充電器につないだままのスマートフォンは、暗いままだった。まだ五分は経たないらしい。
「ぅぅあああ……」
籠っていた熱気から解放され、室温の冷たさが無防備な肌に刺さる。ぎゅっと体を抱き、寒さに敏感な体を震わせる。汗を吸ったシャツが肌に張り付き、体温を奪っていく。
起き上がっても、やることは無かった。学校には行けない。外に出るのは怖い。そんな現実を直視することは、もっと怖い。だから、こうして眠っているしかなかった。眠ったふりを続けるしかなかった。
背後でアラームが鳴る。耳障りな音を聞いていると、不思議と気分が安らかになる気がした。たとえそれが、無機質なものだとしても、自分以外の意図で響く音というだけで、意識はごまかせた。
「……起きよう。起きる、起きる」
アラームの音を背景に、ゆっくりと体を起こす。暗い部屋は、眠る前よりも少しだけ明るかった。ベッドから出て立ち上がると、寝間着は少し重たかった。
「んっ————! 眩し……」
カーテンを開けると、外の光が目を焼いた。部屋よりも何倍も大きく広がった街の風景は、どんよりとした重い雲に覆われていた。今にも雨が降るかもしれない。
カーテンを閉めると、部屋はまた暗くなってしまった。まるで部屋にも雨が降るみたいだ。今の天使には、そんな湿気が何よりも安心できた。
汗を吸って重たくなった肌着を脱ぎ捨て、浴室へと向かう。浴室の鏡にありのままの姿の自分が映る。男子三日会わざれば刮目して見よ、なんて言葉もあるが、自分も案外簡単に変わってしまうものなのだと、悲しくも嬉しい気持ちになる。私はもう、天使ではないのだ。それを目指す資格すらないのだ。
鏡の向こうの自分が、私を見つめる。肩まで伸ばした髪は、手入れを怠ったせいで好き放題に絡まっている。ずいぶんと眠ったはずなのに、目のクマが深い。表情には笑顔のかけらもなく、何か言いたげに唇は真一文字に結ばれている。瞳はこちらをじっと見つめているようで、まるで焦点が合わなかった。
鏡の向こうの私が、指をさす。負けじと私も指をさす。鏡の向こうの私が、ゆっくりと、それでいて噛みしめるようにはっきりと言葉を紡ぐ。
「ボクはもう、死んでいる」
浴室に反響した声は、何重にもなって返ってくるようだ。
鏡の向こうの自分が、いつか夢見た天使のように、白く大きな羽を生やした。髪は美しく整い、肌はきめ細かく毛穴の一本もないようだ。無駄のない体は一瞬の間断も許さない緊張感を与えるほどだ。
昔から天使はこんな姿だっただろうか。子供のころ夢見た天使の姿は、もっと曖昧な、靄に包まれたような雲上の存在だった。たった今、鏡一枚の先に佇むその姿は、ようやく見えたというのに視界を奪ってしまうほど眩く見える。天使のために歩んできたこれまでの人生における過ちが、罪が、穢れが、現実を見ないようにしていた都合のいい自分自身が、業火のごとく汚い私の心を融かす。
今すぐにでも、この天使を堕としてしまいたい。体が劣情を求める。安心を、平穏を、日常を求める。天使さえいなければ、私は何者でもないままでいられる。どこも目指さなくていい。誰からも期待されなくていい。誰からも失望されなくていい。二度と成功しなくてもいい。二度と失敗しなくていい。
自分の荒い呼吸が、遠く聞こえる。目を瞑れば、ついさっきのように体育倉庫での出来事が蘇る。
————一緒にいた生徒が襲われていたから、どかそうとしただけだ。
————自分が襲われそうになったから、抵抗しただけだ。
脳裏に怯えたように走り寄ってくる男子生徒の顔がこびりついて離れない。抵抗するほど、彼は脅威ではなかったはずだ。むしろ、私に怯え、その沙汰を待っていた哀れな子羊だ。躱すだけでも十分に、彼は戦意を失っていた。なのにどうして、足を払った?意識を取り戻しかけたもう一人の生徒に気が付いたとき、何をしようとした?
————すべて、『私』の意思だ。
抵抗が正当であると言い訳をして、加害を肯定したのは自分の意思だ。暴力を止めるためだという大義名分に、自分の加虐の理由付けをさせたのだ。
「私はもう、天使ではない」
呟いて、目を開く。いつの間に搔きむしっていたのか、数本長い毛が足元に落ちていた。
立ち上がって再度見た『天使』は、こちらを指さした。
「キミはもう、天使ではない」
跳び上がって縋り付いた鏡の向こうには、ひどく憔悴した自分の瞳がこちらを見返すばかりだった。鏡を引きずった指先が、白い皮脂の跡を付けた。
もうこの世界には、自分の荒い息しか残ってはいなかった。
髪を梳かすのも面倒で、思考のまとまらないまま熱いシャワーを浴びる。芯まで冷え切った体が、ゆっくりと温まっていく。高いフックにシャワーヘッドをかけて、顔に温水を浴びる。油汚れが温水で流れていくような想像をしながら、目を瞑る。胎内に回帰するような穏やかさに包まれる。
「んんっ————!」
突然冷水に変わったシャワーに、結んだままの唇をかみしめて悲鳴をこらえる。動き出すのが面倒に感じて、そのまま冷水を浴び続ける。気が付けば、深海に潜っていくような閉塞感と、底の知れない暗闇に覆われていく不安が立ち上る。体が寒さに震え始め、慌てて目を開いて、シャワーヘッドをつかみ取ると、足元に向けた。
「っ————」
軽く舌打ちをしながら、水が温まりなおすまで体を抱いて寒さをこらえる。体の震えに、自分がまだ生きようとしているのだという実感を得る。どれだけ抑えようと思っても、体は生きることを諦めようとはしない。
温かな水の流れが爪先に当たり始め、すぐに体に浴びさせる。大きなため息をついて、体を洗うことにする。天使でなくなったとしても、天使になれないとしても、生きていくしかないのだから。
体を拭いてから、着替えを用意し忘れていたことに気が付く。焦る必要もない。時間も余裕もたっぷりあった。
起きたときに感じたほど、気温は低くないようだった。バスタオルを首にかけたまま、水分を補給しようと冷蔵庫へ向かう。少なくともこの三日は外出していないはずだったが、冷蔵庫の中は中身の詰まったタッパーで埋まっていた。
「…………」
レンジで温めるだけで食べられるような料理が詰められた保存容器には、中身の他には何も残されていない。おそらくは母が置いていったのだろう。メッセージの一つも残さずに帰ってしまうあたり、変な気の使い方だと思う。
すぐにでも食べたいところだったが、現在の空腹はとてもおかずだけで満足できそうには無かった。
いくつかの保存容器を机の上に出して、ご飯を炊く。温まった指先が、冷めきってしまったが、むしろ心地いいくらいだ。
炊飯が終わるのを待ちながら、ようやく服を着ることにした。もう寒いわけではなかったが、長袖に腕を通すと少しだけ安心できた。
やることもなく、勉強机の前に座ってみるも、やはり退屈を持て余すだけだ。小さな棚にしまわれたファイルを眺めていると、一冊のスケッチブックが目に留まる。
手に取ってみると、最初の数ページだけが使われており、後は真っ白だった。鉛筆でデッサンのように誰かが描かれている。
「懐かしいな……」
それは、一年ほど前に、同居人であった悠怜の真似をして商店街で買ったものだった。何度か彼女の横顔を描こうとしたものの、次第に頻度が減り、ついには棚にしまったのだった。
天使は、あまり上手でない自分の絵に苦笑し、鉛筆に手を伸ばした。空白のページを開き、少しの間向かい合う。
しかし、天使はスケッチブックを閉じると、鉛筆を元の場所に戻した。
机の上に腕を投げ出して、椅子の背に体重を預けて天井を仰ぐ。深く息を吐くと、吐いた息が重力に従って戻ってくる気がした。
姿勢を戻して、勉強机の棚を漁る。雑多に置かれたファイルの中身は、学校で配られたものもあるが、昔描いた落書きや、もっと昔に書いて実家から持ち出してきた、馬鹿らしい天使の報告書なんてものもあった。それらをまとめて紙ひもで縛り上げる。スケッチブックを入れると、硬い表紙が整形にちょうど良かった。
「……よし」
後で捨てに行こうと、玄関のそばにまとめて置いておく。机の上はすっかりきれいになった。
玄関まで来たついでと思って、外に出てみる。夕方の空はどんよりと暗かったが、外気はどこか爽やかだ。宅配ボックスを確認して、数枚のチラシと誰かが届けてくれたらしい学校の配布物を取り出す。届けてくれたのは、おそらく藍虎だろう。
「もう……そんなに真面目に書かなくてもいいのに」
夏休み明けの課題テストが返されたようで、間違えたところには丁寧に解説が書き足されていた。きっと自分のことや執行部の仕事でも忙しいだろうに、こんな心配りをしてくれる友人の姿が思い浮かび、口の端から笑みがこぼれる。
「塾、か……」
部屋に戻りながら、チラシを物色する。ピザでもあったら頼んでしまいそうな気持ちだったが、幸いにも今日は入っていないようだ。
高校二年生の夏休み。受験においては大事な時期……なのだろうか。未だ明確な進路も決めていない自分には。あまり実感がない。「二年の夏でも早すぎることは無い」と銘打ったこの広告も、来年には「最後の夏でも遅くはない」と標榜することだろう。
この休学は進路にどのように影響するのだろうか。ときどき執行部担当の教師は、執行部の役職を利用した推薦入試をほのめかしてくるが、その候補となる大学にあまり興味を持てなかった。中には目標としていた心理学部を対象としたものもあったが、推薦を使うまでもなく、この調子なら一般で受けても構わなかった。
そもそも、このまま十月を迎えたとして、自分は生徒会長になることができるのだろうか。経験からして、藍虎はどうあっても生徒会長になろうとはしないだろう。あるいは、亜熊前会長のように、今期の執行部でない誰かが立候補することになるのかもしれない。そうなってもおかしくはない。何しろ、一番の候補であった自分は、生徒を傷つけた上に自己憐憫に浸って休学しているのだから。学校に戻ったところで、誰が自分を慕い、期待してくれるのだろうか。もしそんな人間がいるとしたら、それは————。
天使は雑念を追いやろうと頭を振るう。外に出ているうちに乾いたのか、湿気たままの髪からは水が飛ばなかった。髪束の重さに、乾かすことを失念していたことに気が付く。
たとえ今の自分がどれだけ下賤に堕ちていたとしても、それを想う誰かを卑下してはいけないだろう。彼らがいかに愚鈍で安直で考えなしだとしても、期待される者にはそれなりの責任が生じるのだ。
それよりも、進路のことだ。休学が決まったとはいえ、進路は結局のところいずれ自分の前に立ち塞がるのだ。
再び勉強机に座り、数枚のチラシを広げる。どこの塾も大方同じ内容を喧伝している。入るつもりは毛頭無かったが、焦燥感が煽られないわけではない。
どこかに自分が収まるべき場所があるという漠然とした期待があったが、それがどこなのかは見当もつかない。休学の身となった今では、心理学などと言う学問にも信用は無かった。
行きたい場所……と考えてみると、ふとある場所が思い浮かぶ。
————大阪。厳密にはその周辺にあたる、関西地域。自分でもその理由をはっきりとつかめないが、どこか心惹かれた。
いや、少し考えてみればその理由は明白であった。「大阪の方の大学だよ。ちょうど行きたい学科があってね」と思い出の中の声がこだまする。
ああ、自分はまだこんな感情を大切にしているのかという諦念と共に、暖かい思いが去来する。彼ならあるいは、こんな自分の行く道を照らしてくれるのかもしれない。羽を失った天使に、歩き方を教えてくれるのかもしれない。
思い出に浸っていた天使の耳に、甲高い電子音が響く。どうやらご飯が炊けたらしい。
一か月もあるのだ。どうせなら、好きに過ごしてみたっていいだろう。誰も自分を、天使を知らないような場所に行ってみてもいいだろう。むしろそんな自由な寄り道こそが、天使でなかった自分を満たしていた奇遇な日々だったとも思えてくる。
何の当てもない旅行計画を、天使はレンジの前で夢想する。誰も自分を助けてくれる保証はない。もしかすると、もっと酷い何かが待っているだけなのかもしれない。けれどなぜだか、新しい出会いがそこにはあると、天使は思わずにはいられなかった。
それから、天使は大阪への行き方を調べることにした。冷静になって考えてみれば、徒歩と在来線が基本的な移動方法であった天使にとって、新幹線に乗るのは初めての経験だった。学校にいけない以上、学割を取ることもできないが、そんなことを気にするほど小さな情熱ではなかった。
アポイントメントを取ることもできそうには無かったが、とりあえず行ってみようと思った。それだけで、出会いを引き寄せる予感があったからだ。とりあえずは人の多い場所へ。それからのことは、それから考えてみよう。都会ならば、一宿の場所を探すのにもそれほど難儀しないはずだ。
天使はそうして行き方だけを入念に調べると、宿泊の荷物をまとめた。出会いというものが無かったとしても、その時は観光をするのみだ。大学の受験費用を母に頼りたくなくて貯めていたものの、生徒を殴り休学となったからには何の負い目も恥じらいも無い。来るべき時には許されるだけ頼ってしまおう。それができないなら、受験も諦めてしまったっていいだろう。
不思議と不安は無かった。あるいはそんな空元気なのだろう。もう何を失ったって良かった。自分の中で一番大事だった、自分のすべてを作っていたような『天使』を失ってしまったのだから。
天使は荷物を一度部屋の隅において、ようやくご飯を食べる。腹が満たされれば、心も満たされた気分になる。来る誰かとの出会いに、胸は高鳴るどころか冷静になるばかりだ。その善悪で、好悪で、自分の進退は変わってしまうかもしれないのだ。
————いや、そのくらい自分で変えてしまおう。
どんな人間が待っているとしても、自分の未来だ。自分の可能性だ。輝かしい先輩にも、愚かで厭らしい他人にも、はるか彼方へ消えた天使にも、決めさせはしない。ここから先は、自分の道なのだ。私はもう、天使ではないのだから。
天使は同時に、そう思いながらも広い部屋で一人ご飯を胃に収めるしかない現状を冷笑した。この不条理が、不合理が、ままならない一挙手一投足こそが、正しい現実なのだ。そんな世界で、生きていかなければならないのだ。
洗い物をしなくたって、何日も眠ったままでいたからって、平等に眠りは人を招き入れる。天使は自分を待ち受ける不確定の未来に、むしろ満足したように笑みを浮かべながら眠りについた。それは、むしろ不幸を楽しもうとする彼女自身の本質的な態度だった。
天使が眠ろうとも、世界は回る。あるいは、天使を眠らせるために、世界は回るのかもしれない。その回転は、等しく時を巡らせ、あらゆるものを平等に、終わりへと導いていくのだ。