魑魅魍魎
掲載日:2024/01/03
それを見たのは偶然だった。
赤黒い。
赤黒いナニカ。
それが眼前の視界にいきなり飛び込んできた。
深夜の山。
雪の積もった山をチェーンを巻いたタイヤで走った時のことだ。
チェーンを巻いてやっと車で運転可能な雪山の道。
予定外の荷物を運ぶ為に、深夜に見知らぬ雪山を車で登る。
名前も知らない山を車で登った時の出来事だ。
生憎ナビなんて洒落たものは積んでいない。
地図を確認しながらの運転だった。
これがいけなかった。
今思えば。
当然か。
かなり危険な行為だから。
全てのタイヤが雪を派手に舞い上がらせ車体を止めた。
派手に。
物凄く派手に。
大きな音を立てて。
雪山奥で僕は車から降りると前方に歩き出した。
薄暗い山の中を、僕は車のライトが照らしたヘッドライトの光を頼りに進んだ。
ヘッドライトの明かりが途切れ、最後は薄暗い月夜の灯りが目的の物を見つけてくれた。
正確に言えば者であった物。
助手席に居た妻の血まみれの姿が。
片手には先程まで使っていた地図を握っていた。
その姿を見て僕は崩れ落ちた。
「だからシートベルトをしろと言ったのに……」
あのときに見たアレ。
赤黒いナニカ。
あれは何だったんだろう?
フロントガラス越えに見えたアレは?
まるで妻の……。
そうして僕は意識を失った。




