魔法使いの頂点目指します
「お前なんて生まなきゃよかった」
もう何度も聞いた言葉だ。僕だってこんな親に産んでほしくなっかた
何をしたかも分からず毎日怒鳴られるし、暴力を振られることもあった。食事も死なない程度の最低限しか与えられなかった。中学までは通うこともできた義務教育ではない高校は行かせてもらえなかった。ほんとなら今頃高校2年生の青春を謳歌できていたのかな、なんて思うことは無い。小中といじめられていたからだ。無理もない、伸びきった髪にやせこけた身体、薄汚い服を着ていたら誰だっていじめられると思う。
「何見てんのよ」
母の近くにあった携帯を投げつけられドカッと音と同時に温かい液体が頭から流れるのが分かった。あぁ今日は一段と機嫌が悪い日か。
「ごめんなさい」
そう謝るとすぐに家から逃げ出した。
これ以上家にいたら余計にひどい目に合うからだ。外はもう薄暗く誰一人で歩いていない。それが少し気分を明るくした。誰のことも気にせずず一人でいるのは楽でいい。早く独り立ちしたいとか
なんで俺ばっかりこんな目に合わないといけないんだろう。そんな考えても無駄なこと繰り返す。とりあえず今は一人になりたっかた。いつも家から逃げた時に使っている橋の下まで行くといつもと違う光景を目にした。そこには男とその男に担がれてる人がいた。
そして男が担いでいた人を川に投げ捨てたのだ。
「え」と声を出してしまった時にはもう遅かった。男がものすごい速さでこちらに走ってきた。
「ひぃ」小さな悲鳴とと同時に転んでしまった。
男は無言でポケットからカッターを取り出しそのまま刃を出して刺してきた。
「っがぁ」
腹が焼かれてるのかと思う程の激痛だった。片手で首を絞められているから声もろくに出せない。
1か所目を刺されてから続けてもう3か所刺された。着ていた服がどんどん赤黒い血で染まっていく。刃が細いせいですぐに絶命できないのが最悪だった。口からも血の味がするし、鼻水や涙が止まらない。息をするのも声を出そうとするのもしんどくなってきた。何分何時間立ったかもわからない。もしかしたら一瞬の出来事だったかもしれない。それでも意識があるせいで男が手を止めることは無かった。
途中からは生きたいと思うより早く殺して欲しいという感情の方が強かった。そして7発目で意識を失った。
※
目が覚めたら何もない白い空間にいた。
死んだと自覚するのに時間はかからなかった。そもそもあの状況じゃ生きてるほうが不思議だ。でもよかったのかもしれないどうせ生きていてもろくな人生じゃなかっただろうし。
「ここって天国なのか?」
しゃべることはできる。でも誰もいないせいですごい暇だ。死んだのはいいがこの空間に居続けるのは嫌だ。とりあえず歩いて周りを見てみよう、もしかしたら先に進めば何かあるかもしれない。
結構歩いてみたけど景色は一向に変わらない。
「体は全く疲れてはいないけど少し休もう」
誰に聞かれるわけでもないけど声に出して喋らいなとおかしくなりそうだった。
しばらく座っていると前方から何かが近づいてきた。
「なるほど、こうなるのか」
喋った。でも今はそんなことよりこの空間に人がいてくれたことが嬉しかった。生きていた時にこんなことは絶対に思わなかっただろう。こんな安堵感は初めてだった。居ても立っても居られなくなりつい失礼なことを聞いてしまった
「あなたも死んだんですか?」
「半分ね」
半分ってどういうことだろう、それにさっきの「なるほどこうなるのか」って、
「どういうことですか?」
「順を追って説明するよ」
「はい」
「まず君は死んだ、僕は魂だけが死んだ肉体は生きている」
意味が分からなかった。どうやって魂だけ死ぬことができるんだろう。そもそも死んだからここにいるんだろう?なのに肉体は死んでないってまるで魔法じゃないか
「そしてここは死後の世界じゃない、私の魂の中だ」
「なんで僕はそんな中にいるんだよ!」
つい叫んでしまった。
「まぁ簡単に言うと君は選ばれたんだよ」
「はぁ」
喜べと言わんばかりにパチパチとマネキンは手を叩いている。そもそも何に選ばれたんだろうか。よくわからない。そんなことより僕はここでこの人と静かに暮らせればいいのに。
「これから君は第2の人生を謳歌するんだ。剣と魔法の世界で好きなように生きていけるんだよ。冒険者になったり世界で一番すごい魔法使いになるのもいい。川のほとりでひっそりと暮らすのだって全て君の自由に選べる」
やっとわかったこれは転生ってやつだと。転生なんてアニメや漫画の世界だけで自分がその立場になるなんて思いもしなかった。それでもまず思ったのはこれは夢なんじゃないか、でも僕は死んだんだから夢なんて見るはずもない。そもそも死んだと思ってること自体夢なんじゃないだろうか。うーんうーんと思考の沼に落ちていく。
「あなたは何者なんですか?」
「ちょっとだけすごい魔法使いだよ、死んでしまったけど」
マネキンだから顔の形なんてわからないけど悲しそうな顔が見える気がする。
どうしてと小声で言ってしまった。マネキンは仕事でへまをしたと返してくれた。
「どうやって転生するんですか?」
「君には私の体に転生してもらう、ただ場所がちょっと悪くてね
でも1週間程度で私の住んでいた家には着く距離だよ」
心配しないでとでも言うように言うけど心配しかなかった。場所がちょっと悪いってなんだよ。すごい魔法使いが死んだってことは相当危険なとこじゃなのだろうか。何だか気が重くなってきた。
「ちょっとだけだよ」
思考を読まれた。でも転生してすぐ死ぬなんて嫌だ、またあんな苦痛を味わうのはごめんだ。
「大丈夫すぐは死なない、でもなるべく早くそこから逃げたほうがいい」
地図はあるからどこに行けばいいかはすぐわかるらしい。でもすぐに逃げたほうがいいってことはやっぱり危険な場所なんだ。
正直魅力的な誘いではある、でも生きていたらまた辛い目に合うかもしれない
「もう時間がないあとは君の決断だけだよ」
せかさないでほしかった。でももしかしたらその世界に行けば幸せな生活を送れるかもしれないと少しの希望にすがりたくなった。
「わかりました。行きます」
「いい返事だ、では握手を」
差し出された手を握り返すと視界が暗転した。




