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12 エロ



 呼ばれて振り向いたおじさんは私たちをみました。手始めにノアさんをさっとみた後、私のことを足元から頭にかけて舐め回すようにジロジロと見てきます。正直気持ちが悪いです。

 それを察してくれたのかノアさんが私を隠すように立ってくれました。


「ん?ああ、宿屋ね。グフ、えっと……ほらあそこの看板がそれだ。」


 変態的視線のおじさんは通りの奥の看板を指差しました。確かにそこは宿屋のようです。私たちはお礼を言ってその宿屋に向かって歩き出しました。


「ねぇノアさん。あのおじさんちょっと目がエロくなかったですか?」


「うん、危ない目をしていたね。スカイ、君はああいう人には気をつけるんだよ。僕がいない時には特に。」


 あらあら、この人は一等星である私を守るつもりでいるのでしょうか。私は世界で最も等星が高いんですよ。全能の魔法使いなんですよ。


 ………そういえば、レガス君に襲われかけたことを思い出しました。ここは素直に返事しておきましょう。


「はい、気をつけます。でも、ノアさんの前では気を抜いていてもいいのですよね?」


「だから、もう。………まったく君は……」



 宿屋の扉を開くと宿の受付には三十路を越えたくらいの女性が何やら本を広げて座っていました。


「あ?いらっしゃい。この紙に名前を書いて。それと等星も。」


 彼女は本から顔も上げずに言います。その態度には少しだけ不満を感じましたが、それでも私たちは言われた通り名前と等星を書きました。


「書きました。これでいいですか。」

「ん……二等星と……一等星?!」


 驚きのあまり大声をあげて顔を上げました。


「ん?!……こ、これは……」


 そして先ほどのおじさんのように全身に舐め回すような視線を送ります。しかし今回は私ではなくノアさんにです。


「あんたいい男だね。神官かい?」

「ええ、まあ。それはどうも。」


 女性はニヤッと不敵な笑みを浮かべます。さっきは私の心配をしていましたが、これを見る限りノアさんの方が心配です。なんですかこの女。私のノアさんを奪おうって言うんですか?それなら相手になってやりますよ。


 まぁ別に私のモノではないのですけどね。


「それではごゆっくり〜。」


 満面の笑みを浮かべて私たちを部屋に案内した女性はやはり満面の笑みを浮かべて去って行きました。ちょっと不気味ですね。


「それでノアさん。今後の予定はどうしますか?」


 今回は部屋が二つ空いていて、それにゴブリン討伐でお金もあったため一人部屋をふた部屋借りました。それでも今後の予定を決めるため、私はノアさんのお部屋にお邪魔中です。


「実はまだ何も考えてないんだ。スカイはどこか行ってみたいところはあるかい?」


「う〜ん……私はどんな場所があるのか知りませんし、行き先はノアさんにお任せします。」


「分かった。じゃあ、考えておくよ。」


 予定は決まりませんでしたがそれで話は終わり、私たちは少し遅めの夕飯を摂る事にしました。

 楽しいひとときが終わり、夜も更けてきました。そろそろお休みの時間ですね。


「おやすみなさい、ノアさん。」

「お休みスカイ。戸締りはしっかりするんだよ。」


 は〜い––そう返事をして私は隣の自分の部屋に戻りました。ノアさんに言われた通り戸締りはちゃんと済ませます。窓も外からは絶対に開かないでしょう。入り口のドアもちゃんと鍵をかけました。


「さぁ、あとはあの女が来るのを待つだけです。」


 そうです。私はノアさんを狙っていたこの宿の女を迎え撃ちます。負けるつもりはありません。相手は睡魔。なんとか勝って見せます。


 しかし、案外その時は早くやってきました。


 耳を澄ませば、ギシギシと廊下を誰かが歩く音が聞こえます。これはもう予想ができました。あの女です。きっとそうです。足音は一つ。


 ドアに耳をつけてその足音が部屋の前を通り過ぎていくのを感じます。そして隣の部屋。ノアさんの部屋の鍵が開く音。きっとマスターキーでしょう。そして足音はそのまま部屋の中へ入っていた様子。


「よし、今ですね。」


 私はドアの鍵を開けると廊下に躍り出ました。そしてノアさんの部屋に突撃。


「ノアさん。大丈夫ですか……って、え?」


 しかし、私の予想とは裏腹に部屋の中では飛び起きたノアさんと宿屋の女が睨み合っていました。ここで私は思い出すのです。ノアさんの寝起きのよさ。

 この人本当に野生動物ですよ。


「スカイ?」


 驚いたようにノアさんは目を開きます。どうやら杞憂だったようです。ノアさんは心配なさそうですね。私は帰って寝ましょう。もう眠いです。


 そうして睨み合う二人におやすみなさいと告げて私はノアさんの部屋を出ました。そして自分の部屋でベッドに入って寝るだけ。そう考えていたのですが、


「あなた達は……」


 廊下に出てそこにいたのは先ほど私を舐め回すような視線で見てきたおじさんではないですか。しかも仲間らしき人までいます。ここのセキュリティはどうなっているんですか。


「ノアさん、不審者です。」


「何?!」


「おいおい、嬢ちゃん。不審者はないぜ、グヘ。俺たちといいことしようぜ。」


 まぁなんと。悪役のテンプレートみたいな台詞を吐いた男はそのまま私に向かって突進、


「ここは逃げましょう。」


 それをひらりとかわして私は再びノアさんの部屋に入りました。睨み合う女の横を通り抜けてノアさんの隣に並びます。


「スカイ、ここは逃げた方が良さそうだ。」

「はい、私もそう思います。」


 私とノアさんは合図を境に窓から飛び降りました。そこは二階だったのですが、これくらいの高さならヘッチャラです。


「おい、逃すな。」


 それなのに性懲りもせず男達、それに女までもが追いかけてきます。


「どこに逃げましょう?」

「とりあえず走り回るしかないね。」


 知らない街を私はノアさんの後に着いいくように街中を走り回ります。そろそろ疲れてきました。そう思った時です。


 無意識だったのでしょう。ノアさんがある場所に逃げ込みました。


「ノアさん、ここ……」


 普通ならそこは匿ってくれそうな人がいるところなのです。でも私がいれば話は別。私は異端なのですから。


 ノアさんが無意識で逃げ込んだそこは教会だったのです。

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