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合法的ストーカー

作者: おむすびころりん丸

 蓬 愛美(よもぎ まなみ)。麗しい黒髪に白雪の肌を持つ美女。彼女の人生は引越しがつきものだ。


 美しい容姿は、決してプラスにだけ働くものではない。その力はあらゆるものを魅了し、惹きつけ、時に災厄まで運んでくる。


 ストーカー。通算六度の引っ越しは、全てこれが要因。逃げれば追われ、新たなストーカーをも生み、ストーカー同士がはち会い刃傷沙汰となる、エイ○アンVSプレ〇ターならぬ、悪と悪との大争乱まで勃発したことがある。


 その全てを切り抜け、今を無事に生きる愛美。しかし此度の相手は格が違った。愛美は敗北、屈服し、その命まで奪われることになる。


 その者は、愛美の家を特定していた。捨てるゴミを漁り、臭いを嗅いでは、愛美が口を付けた残飯に舌を這わせる。


 これまでのストーカー達は、よくよくプレゼントを渡してきた。気味が悪ければ開きもしないが、その中身は身勝手ながら善意の品がほぼ。時に百万は下らないブランド品を押し付けられたことさえある。

 しかしその者は、糞尿を撒き散らす。悪意すら感じるが、それを感じぬのがストーカーというもの。汚物をして、その者に悪気はないのだ。


 そして愛美がそれらの被害に遭ってから三日後。その者は帰宅する愛美の後を付け始める。振り向けば誰もいない。しかし、どこか暗がりから視線は感じる。

 足音もなければ声もしない。足を速めたところで、振り切れない。これまでの愛美の経験をしても、気配の他に何も掴めない。


 恐怖に駆られ、遂に走り出す愛美。それを追うストーカー。静かなる闇夜には、走る愛美の息遣いと足音、それだけがこだまする。


 自宅まであと少しの距離。愛美はバッグをまさぐり、そして鍵を取り出す。駆ける勢いのまま、体当たりするように取っ手を掴むと、鍵を差し込み、それを震える手で回す。


 しかし、上手く回らない。こういう時に限って、手先を器用に動かせない。


 気配は確実に近づいている。しかし振り向く時間すら惜しい。乱雑に鍵を捻ると、ようやくガチャリと錠は開かれた。愛美は身を投げるように部屋に飛び込む。そして扉が外界との繋がりを断つ間際——


 その者は、遂に姿を現した。


 目と目が合ったその時、愛美は死を覚悟した。そうして愛美は、その者の侵入を許してしまったのだ。

「ニュースです。S市在住の蓬愛美さん(25)。ストーカーの被害に遭い、自宅で遺体となって発見されました。加害者は同じくS市在住のミケ(3か月)。死因はキュン死。地域ではミケの無罪が叫ばれておりますが、私も意見に賛同します」

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