説得
結構更新していなくてすみません。
頭の中で、とりあえず誤魔化そう作戦を立てる。
単純に脅そうか……。そこまで考えて私は首を振った。
脅してすんでも、これから町まで一緒に旅させてもらうのだ。
空気がぎくしゃくしてしまう。
ーー絶対にそれだけは嫌だ。
私は楽しい旅をしたい。なら、話題を変えてあとから口止めを……
そこまで考えたところで、私が考え込んでいるのを不審に思ったのか
話しかけてきた。
「すみません。その、治療師ということを黙ってほしいと言うことでしたら
私たちは漏らしませんので……。」
遠慮するように話しかけてきた声は私にとって素晴らしい提案だった。
それで了承しようとして、思い止まった。
ーーそれで、絶対漏らさないという確証はないじゃん。
少し不安になった私はとりあえず彼らの胃袋をつかむことにした。
「そうですね~。その提案は私にとってありがたいですが、とりあえず、
皆さんもおなかが空いていると思うんですよねぇ~。」
ご飯にしませんかと誘った。しかし彼らは困った顔で見合わせていた。
「……お申し出は誠にありがたいことなのですが、食料がそこまでなくて……」
「ああ。大丈夫ですよ。私がすべて負担しますので。」
「しかし、これ以上」
「ので。」
少し黒い笑みで威圧する。
すると彼らは申し訳なさそうに、顔を見合わせたあとその場に散乱した荷物を
集めて、テントをはりはじめた。
◆ ◆ ◆
ーーすごく難しいのですが。
やっとのことで日をつけた頃にはもう夕暮れ時。
精神が図太くないとあのような稼業はやっていけないのか
私に任せっきりにしてテントの中で寝入っていた。
ーーやらないと夕飯ができない……。でもやりたくない……。
そんな葛藤を心の中で繰り返していた私にとって彼らが
寝ていたのは好都合だった。
「じゃじゃ~ん。何でも入る亜空間。さすがに私でも
この高次元なことは人にはできないってわかりますよぉ。」
実は念のため調理済みのご飯を入れていたのだ。亜空間なので時という概念
がない。出来立てのほかほかだ。
「もしもしみなさ~ん。夕食ができました。」
そうして、彼らを起こす。寝ぼけ眼で私を見た次の瞬間、美味しそうな匂い
につられてか、お腹がなる。それを見て私は、少し笑った。
彼らは、まずごちそうをみて、呆けた。
「俺たちのためにこんなごちそうありがとう。」
泣きそうな嬉しそうなそんな顔で言われたて私は少し気まずかった。
「……わたし、グルメだからかな~。」
ーーほんとに申し訳ないな。
「~でさ、見ての通り私たちすごく弱いの。もう、雑魚中の雑魚。」
「んなこと言うなよ。悲しくなるじゃないか」
すごく盛り上がった。やはり、胃袋をつかむのが一番と言えそうだ。と私が
結論付けたところでふいに、一人がしんみりと話した。
「あんたに言っても仕方がないことかもしれない。でも、今日の一件で
すごく不安になっちまったんだ。」
空気がしんとする。酒とか飲んでいる訳ではないけど、私がいることで
宴会気分になっているのかもしれない。
「う~ん。事情はよくは分からないけど。まぁ話すだけでもスッキリすると言うし?」
私が承諾すると、泣かんばかりの勢いで気持ちをぶちまけた。
「怪我していた非戦闘員……ミナっていうんだけどあの子、忌み子なんだ。
俺らは見ていることしかできなくて、それで村から飛び出したんさ。」
彼女はどうも魔力を持っていないらしい。どのようなものでも少量の魔力を
持つ。例え死人であっても、だからこそスケルトンなどの魔物がいるわけなんだけど。
それで、村八分にされた。それを見ていられなかった彼らは彼女を連れ出したらしい。
「自己満足さ。……別にミナのためじゃなくて、親しい友人、家族、親戚が
人道に悖る行為をしていくのも見ていられなかった。
でも、時々思う。なんで、飛び出したんだろう。ミナさえいなければって。」
まるで神にでも懺悔するように話す。それをみた私はふ~んといった感情しか
思い浮かばなかった。興味も憐みも、なにもかも感情が出てこなかった自分に
自分で驚く。 私の表情を見て何を勘違いしたのか苦笑された。
「……ごめんな。ミナもまだ寝ていて、そんなときに自分の醜さを吐き出してしまって。」
はっと我に帰ったようにいう彼に対して、また皆も彼と同じ気持ちだったのか
何も反応しない。私はちょっと湿っぽい空気を変えたくていった。
「満月があるでしょう。満月には特別な魔力が出ている。その魔力が
どのように影響するのか人によって様々だけれども、今日の満月は君たちの心を
洗い流した。このような時には寝るのが吉。」
ポカンとした彼らをみて私は笑った。嘘ではない。少しだけ
都合よく変えただけ。パンパンと手を叩き彼らをテントの中に戻した。
満月は精霊神さえ、影響される。我らが主神のーーーーなのだから。