二人で
ヘタレ大和?イケ大和?
ー何を、どうするかー
大和side
佐伯 大和は深く反省していた。
(いくら、気が動転していたからといってアレはダメだろ!)
咄嗟に抱きしめた泣き顔の少女の躰は細く頼りなかった。いつも、
「私がここを継ぐ!」
と息巻く彼女の姿はそこにはなく、年相応以上に幼く見えた。
和泉さんが師匠の家に住んでいる理由は、以前聞いた。よく分からないが寂しかっただろう。師匠に全幅の信頼を寄せるのも頷ける境遇だ。また、彼女がグラス/ディアを居心地よく感じるのも必然だと思う。だからこそ、師匠が戻るまでなんとか店を閉めずに持ち堪えたい。
しかし、仕入れから料理まで全て師匠が1人で行ってきた。僕に分かるのは珈琲の淹れ方と簡単な料理のレシピくらいだ。言うのは簡単でも実行するのはわけが違う。考えすぎて疲れた僕は午前2時半、やっと眠りについた。
翌日は土曜日だったので、二人が揃っていた。実を言えば、僕は夏期講習前の特別講座があったのだが善次と美月に板書とプリントを頼んでサボった。
「ええと、議題は大きく二つですね。まず、店は開店し続けるとして学校との両立。二つ目は実際の仕事の分担なんかです。」
「うん。あの、さ……和泉って呼び捨てでいいし、敬語も禁止にして?」
「ん?え、えーと、なんでまた?」
今まで完全に敵対されていたはずなのに、これはどういう風の吹き回しか分からなかった。
「え、と。私はお爺ちゃんが全てだから、大和が弟子になったって知ったとき凄く嫉妬してあんな態度とったんだけど、」
合点がいった。そう言うことだったのか。どうりで塩対応の極みだったわけだ。むしろ辛かった。
「今は、二人でここを守らなきゃいけないから……」
「わかりま…わかった。和泉、じゃあ議題の一つ目、学校との両立はどうするか?夏休みに入る前だから、一学期の成績にすごく響くんだよね。」
そう、このとき期末考査の二週間前。僕は構わないが、和泉はそうもいかないご成績のようで。
「あ。あー、えーと、私は〜、一学期は成績的に捨てるかなぁ〜」
「ダメだよ。師匠…お爺ちゃんがそんなんで許してくれると思う?」
眼鏡の位置を直しながら尋ねる。ダメだ。両立してこそ守ったと言えるのだから。
「僕が教える。勉強時間が極端に短くなるから厳しくね。」
「ううぅ、…はい。」
取り敢えず一つ目は無事(強引に)解決した。
「次、二つ目、実際の動きの部分な。どうしたって、味にせよスピードにせよ師匠には敵わないからなるべく無駄のないようにやるってことでいい?」
僕の考えうる最高の策だ。幸い常連客には顔なじみもいる。味は常連客にも一肌脱いでいただいて完成させていきたい。
「うーん。大筋はそれでいいんだけどさぁ。もしかして、これ役に立つ?」
和泉がカウンターの端の引き出しから取り出したのは一冊のノートだった。