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珈琲協奏曲  作者: 鶍 冬児
はじまり
2/9

居候

今回は、大和sideのお話。大和もただの居候じゃないんス。

ー僕の帰る場所ー


大和side



私立春咲(はるさき)高等学校。国立大学進学率、県内トップ。標準偏差値73、今年で創立150年の超名門校だ。そして、僕の通う高校だ。

居候させていただいている純喫茶グラス/ディアからスポーツタイプの自転車で15分と近く、多少の寝坊では遅刻はあり得ない。まぁ、寝坊などしたことがないのだが。


今日も、6時にセットしたアラームが鳴る。少し前に起きてアラームを寸前で止めるチャレンジに最近、楽しみを見出し実行し続けている。布団をたたみ、押入れに突っ込む。足元の本を崩さないように出来るだけ慎重に。眼鏡を付け忘れると大変なので、起床と同時につけるように心がけている。机の上の教科書類を確認した後、一階のキッチンスペースへ向かう。仙蔵さんは、7時きっかりに一階へ降りてくるので、朝食の準備に1時間はかけられる算段だ。かといってそんなに大層なご馳走を朝から並べることもないのでいつも通り、野菜を切って盛り付け、卵を溶いてチーズを混ぜて焼く。その間にヨーグルトを器に移し、トーストを計4枚オーブンに任せる。結局は10分程度の仕事なので、他の時間は新聞を読んだり珈琲についてのメモを作ったりそれをノートに貼ったりしている。

朝の日課はこれだけではない。毎日、珈琲の淹れ方、味などのテストがある。仙蔵さんから花丸を貰ったことは未だない。どうしても雑味が残ってしまったり、薄くなったりしてしまう。豆を挽くところから毎朝やらせてもらえるのは幸運だと思う。普通ならインスタントを淹れるかメーカーから吐き出される規格品をカップに注ぐのがバイトの限界だろう。

「何事も大切なのは経験だ。」

仙蔵さんの哲学によってこうした経験を積んでいる。また、彼は

「何も焦ることはない。高校を出てからバリスタ専門学校という道もある。ここだけがお前の居場所でもない。」

とも言った。言われた当時は、突き放された感じがあって心の中で反発したが、彼なりの優しさであったと今では理解した。

今朝のテストはというと、少しだけあった自信の通り仙蔵さんが微笑む出来だった。そんなわけで気分の良い出発となり、学校へ向かう道すがら鼻唄を歌ったりした。

昇降口に着くと、同じクラスの山名 美月と月見里 善次の幼馴染カップルと出くわした。

「はよ!今日も仲良いな」

「まあな!そう言うお前もなんか楽しそうじゃん」

善次(ぜんじ)にも分かるほどだったのかと自省する。美月(みつき)は美月で、

「今日も珈琲の良い匂いだねぇ」

とか呑気なことを言っている。二人ともグラス/ディアに度々訪れる店の顔なじみでもある。

「ん、今日のテストは良い出来だったから。」

「ああ、マスターのお眼鏡にかなったのか。素直に尊敬する。」

廊下を進みながら珈琲談義に花を咲かせる。美月は、珈琲についてのイメージが『苦い泥水』だったらしいが、今は好物の一つに挙げている。

「マスターの味に魅せられたの〜!」

と、言っても砂糖マシマシミルクたっぷりだったが。

教室で、自分の席についてみると『進路希望調査』と書かれた白い紙が置いてあった。

「なぁ、大和はどうする?進路。」

「嗚呼、善次と美月は大学進学だったよな。確か、東庭(とうてい)大学だったか?」

東庭大学というのは地元で有名どころではなく全国区の人気校だ。学年トップスリーを独占している僕たち3人なら全員合格できるだろうが。しかし、僕は東庭に進学したいともしたくないとも明確なヴィジョンを描けずにいた。

「バリスタ専門学校という道もある。」

仙蔵さんの言葉がふと脳裏に浮かぶ。幸い提出期限は1ヶ月後だ。しっかりゆっくり考えよう。プリントを(かばん)に仕舞うと同時にチャイムが鳴りHRが始まった。



季節は夏だ。いくらクーラーが効いているとは言えど、窓際の席は陽射しに痛めつけられる。何より眩しすぎる。与えられた数式に適当な文字を代入して因数分解をしようとしたときだったはずだ。

この出来事は、僕と仙蔵さんと、和泉さんとグラス/ディアを大きく巻き込んで望まぬ変化をもたらした。刑死者の試練だったのだ。

連日投稿できるのも長期休み中だけっスね(笑)

なるべく、話を進めていけるように頑張ります。

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