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ラーナ様が見てる!  作者: 池田 真奈
第1章 ラーナ様が見てる!
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第8話 人間核弾頭




私達が馬車に揺られて辿り着いたのは、北ラナンにあるグラン商会の衣料品店。

グラン商会って聞いて、真っ先に思い浮かべたのは魔斧に武具屋の床を破壊されたマイネルさんの呆然とした顔だったりもする。

まさかここにもマイネルさんがいるんじゃないかと思ったけど流石にそれは無かった。


「トルテ様、今日は我が店へようこそお出でくださいました。 何かお探しなのでしょうか?」


金髪碧眼で身長も高くて… 見た感じモテそうなんだけど、どうも軽薄さが鼻に付く感じがする男性が出迎えてくれた。


「ショコラちゃん、彼はアーサー・グランと言って以前会ったマイネルの息子なのよ」


あのマイネルさんの息子さん?

何か雰囲気が全く似てないんですけど…


「ショコラ様ですね、お噂は父から聞いておりますよ。 何でも聖女トルテ様のハートを射止めた方とか… お羨ましい」


何故かクルッと一回転してから私に向けて右手を差し出してポーズを決め、トドメにウインクをして来るアーサー。

私の中で湧き上がる、このドス黒い感情は一体何?

困ってトルテを振り返るとこめかみに青筋を立てながら… 無理に笑ってない?

えっと、ローザはどうなのかなって… 命より大切な筈の魔剣レオンの柄を真顔でギリギリと爪を立てながら握り締めて怒りを堪えている様な…


『い、痛いよ… どうしたんだい愛しいローザ?』


愛しのレオンの声も届かない程なの?

ちょっと… このアーサーって人、私達にとって危険極まり無いんですけど!


「えっと、トルテ。 ここ本当にあなたの行きつけの店なの?」


どう考えても違うとしか思えない!


「腐ってもグラン商会ですから、物は超一流と言っても過言ではありませんの。 でも… ただそれだけですわ」


吐き捨てる様に言った"ただそれだけですわ"がアーサーに対するトルテの評価だと思われる。


「これは冷たいお言葉ですね聖女様、でも… この私の熱いハートは凍らせる事は出来ませんよ」


今度はトルテの目の前でターンからの跪いて右手を差し出すポーズにトルテがビクンッって強い反応を示す。

何、この起爆剤みたいな男。

ううん、それ以上ね。

最早… 人間魔弾頭としか思えないわ。

ダメよ… 世界を滅ぼしかねない二人の前に…

………

……

「トルテ! 何でこんな事をするの? こんな事をしたら、魔の冬が来て人が住めなくなるわ」


荒廃し闇に包まれた世界で一人立ち尽くす私の前に、圧倒的な力を手にしたトルテが立ちはだかる。


「この腐った世界を、このトルテ・ザッハが粛清してやるのよ、ショコラ!」


何もかもを諦め、この世界を壊そうとする破壊の魔女トルテ。


混乱した私の意識は何処か違う世界に旅立って行た。


……

………

「ショコラちゃん! しっかりしてショコラちゃん!!」


トルテが必死になって肩をガタガタと揺らしてくれた事で現実に引き戻される私の意識。

こ、このお店は私達には危険過ぎるよトルテ。


「あのね、トルテ。 高いお店も良いんだけど、私の馴染みの店にも行ってみない?」


ごめんなさい、私もう限界です。


「ショコラちゃんがそう言うなら… そう言う事ですからアーサー、またの機会に寄らせて貰いますわね」




クルクル回るアーサーから逃げる様に馬車に乗り込んだ私達が目指すは、南ラナンにある衣料品店"黒い森"。

この店の店主クローディアは王都ラナンでは珍しいダークエルフなの。

500年前の妖魔戦争ではダークエルフの妖魔王ヴァン・シュバルツが率いる妖魔の軍団とラナリア王国が激しい戦いを繰り広げた歴史がある。

そのためにダークエルフは長い間、忌み嫌われて来たらしいけど、全ての人間が善人な訳では無いし、ダークエルフの中にだって善人はいるのだからと考え方も時代に合わせて変化して来てた関係から、ここ数十年の間に街中でも見かける様になっていた。


「あら、ショコラ。 いらっしゃい、そちらはお友達かしら?」


スタイル抜群でグラマラス美人のクローディアは女性達の憧れの的だ。


「久しぶり、クローディア。 今日は親友のトルテとローザを連れて来たわ」


トルテとローザがペコリとお辞儀する。


「で、一体今日はどうしたの?」


クローディアの問いかけに答えのはトルテだった。


「クローディアさん、今日はショコラちゃんをコーディネートして頂けませんか? 彼女、自分に自信が無いって落ち込んでいるの… 私達はそんな事は無いって思って欲しいの!」


クローディアはアーモンド型の目を丸くさせて少し驚いた表情を見せてから、ニヤリと笑みを浮かべた。


「ショコラも良い友達を持った様ね。 いいわ、こっちへいらっしゃい! お友達は店の中でも見てて」


半ば強引に店の奥に連れ込まれた私は、普段着た事も無い可愛らしいドレスを着せられ、自分ではした事すらも無かった化粧もして貰って…




「どうだい、あんた達の自慢の親友は?」


クローディアに手を引かれトルテとローザの前に連れて来られる私。



えっと… 私、変じゃないかな?




…ううん、きっと大丈夫。



現れた私を見て口に手を当てて驚いているローザと、頬を赤く染めて私の事を見つめるトルテの姿を見たら、今日の一番は… きっと私だって思えるもん。

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