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初恋チョコレートっ!!

作者: 佐藤さつま

小説家になろうの投稿2回目の作品です。

季節ものをやってみたいと思って今回バレンタインをお題に作りました。

やはりまだ思ったことをうまく文章で表現することは難しいなと感じますが、これから頑張っていこうと思います。

まだ文章がたどたどしいことと思いますがよろしくお願いします。

冬の寒さが残るこの頃。

今日は2月のイベントで代表されるバレンタインだ。

最近はコンビニやスーパーなどでも気軽に買えるバレンタインのチョコレート。

日本では義理チョコ、友チョコ、本命チョコなど様々なものがある。

その中でも友人同士で友チョコを楽しむ人は多いだろう。

またチョコレートにかこつけて告白する、というような本命チョコを渡す人もいる。

本命チョコを渡す彼女たちにとってはバレンタインは女の戦いであると言えるだろう。

そうして私は思う。

今日はきっといつもより疲れる1日になるだろう、と。

私は周りに聞こえないよう小さくため息をついた。



私が勤めているこの会社は大きくはないが小さくもない、中堅どころの会社だ。

ここに勤めて6年、いつかは慣れると思って我慢してきたがやはり慣れない。

そして自分の心の奥底から痛感する。

私はこの”バレンタインデー”が苦手だということに。




この会社でも仲のいい後輩や友人に義理チョコや友チョコを上げたことはある。

色々と吟味して選んだ品を喜んでもらえるのは嬉しい。

だから彼らにチョコを渡すのは別段苦とは感じない。

しかし、どこの世の中にも例外というものが存在するのだ。

私にとって、それは会社の先輩――佐伯秀哉。

彼についての周りの評価はまさに”完璧”だ。

顔よし、頭よし、性格よしの三拍子を揃えた男。

会社ではえらくモテる人間だ。

それも異性問わず。

しかしそれは周りの評価でしかない。

私にとってのあの人は年上の仲のいい幼馴染だった人。

……………そして私の初恋で、完膚なきまでに振って幼かった恋心を叩き潰していった男だ。

入社するまで会社が同じだとは知らなかった。

しかし彼に対してあからさまに嫌った態度はしないようにしている。

私が勝手に苦手意識を持っているだけだ。

部署も違うし、会う機会もなかなかない。

いつまでも過去の出来事を引きずっているのは我ながら女々しいとも感じる。

しかし一方でそれは仕方がないのではとも思うのだ。

なんせ十数年前に本命チョコを渡して振った相手が、毎年バレンタインの日に合わせてこの部署に来るのだから。

何の嫌がらせだ、と思う。

いやもしかしたら私の思い違い………?

それこそあり得ない、いくらなんでも6年連続でこの日に来るのはおかしい。

しかも真偽は分からない噂話がある。

彼は本命がいるからバレンタインのチョコは受け取らないらしい。

そしてそれはあながち嘘ではないらしく、毎年うちの部署の女性達がチョコを渡そうとしても受け取らない、と友人が愚痴を言っていた。

さっさと本命とやらとくっつけばいいのに。

それとも実はうちの部署にその本命さんがいるのだろうか。

まあ私には関係ない話だ。

とにもかくにもこの日にあの人の顔を見ると他の日に遭遇するのに比べて私のメンタルが著しく削られるのだ。

ああ、まさにあの人は私の黒歴史の権化。

思い出したくない記憶なのにどうしてこう鮮明に思い出すのか。

今日はまったく嫌な一日だ。





過去の回想をしよう。


あれはそう私が小5の時の話になる。

家が近所だった事が縁で物心つく前から一緒にいた幼馴染に本命チョコを上げたのは。

今思えば苦い話だ。

兄のように思っていた存在がいつの間にか自分の中で恋愛対象になっていた。

しかも初恋だ。

頭の中がお花畑になっていた、と言ってもいい。

そのため当時は今更とは思ったものの服装や身だしなみに気を遣うようにした。

彼の目に少しでもかわいく映ればいいな、と思ったのだ。

そしてついにバレンタインの日に事件が起きた。

今までは当たり前のように彼に毎年手作りのチョコレートは渡していた。

無論友チョコ感覚でだが。

しかし恋する女子とは面白いもので、いつも通りにチョコを渡したあとに余計な事を言ってしまったのだ。

「好きだ」、と。

ずっと隠していようと思っていた感情なのに。

さらりと口が動いた。

彼はそれを聞いて驚いたような顔をした。

そして困ったように「ごめん。」とだけ言った。

後から知った話だがその当時彼は同じ中学校の女の子と付き合っていたらしい。

自分の思いもよらぬ告白と瞬間の失恋に私は混乱した。

そしてまた驚くことが起きる。

失恋したとだけ理解した私はしょうがない、と自分に無理して納得した。

だからこそ驚いた。

チョコレートを返してもらおうと思って伸ばした手を振り払われたのだから。

只々怖かった。

手を振り払った彼は今まで見たこともないほど冷たい表情をしていた。

まるで私の知らない人の様に。

それを見て思わず走って逃げた私を誰も悪く言えないと思う。

そしてその時に見た光景を私は忘れられない。

渡したチョコレートを彼が踏んで砕いていた、という光景を。


全力で家に帰った私は、そのままベッドに飛び込んだ。

涙が止まらず、泣き疲れていつの間にか深夜に寝ていたほどだ。

あの日以降私は彼に会わないよう心掛けた。

例え彼が家に遊びに来たと両親が言っても私は部屋から出ることが出来なかった。

信頼していた人間に裏切られるのは怖い。

彼に会うことが本当に怖かったのだ。


そうして私はその後彼とは会わずに私立の中高大一貫の学校に進学し、実家から出て今に至る。




黄昏どき――夕日が沈み始め辺りを橙色に染める時間帯だ。

はあ、と本日何度目になるか分からないため息をついた。

「中野さん大丈夫っすか、なんか今日ため息多いし。」

部下の野原が心配そうにこちらを見る。

こいつはお調子者の雰囲気を持ちながら実は真面目な男だ。

「疲れた時には甘いものですよ。せっかくなんで今日はチョコです。」

律儀にも私にチョコをくれるらしい。

甘党の彼は自身のデスクに色々なおやつをストックしている。

そして疲れた時にはその中の物を時々私にもお裾分けしてくれる。

優しいやつなのだ。

「ありがとう、もらっとく。お返しはホワイトデーでいい?」

「別にいいですよーお返しなんてしなくても。市販の一口チョコですし。」

「でもいつも私ばっかりお菓子貰ってるから、そのお礼も含めてね。」

そう言うと彼はやや考えてから「ではお願いします。」と言った。

そんな会話をしているとうちの部署の女子の黄色い声が近くで聞こえた。

毎年恒例のあの人、佐伯秀哉がこちらに来ているのだろう。

まるでシンデレラの王子様の様にもてはやされている様子がここからも見える。

頼むからさっさと消えてくれ、そう私は心の中で文句を言う。

「……中野さーん、死んだ魚の目になってますよ。」

「いやだって毎年の事ながら、なんでうちの部署に来たんだろうって思って。」

「文句を言いたいのは分かりますけど、我慢して下さい。あれです、きっと疲れているから幻聴と幻覚がしてるだけです。そうと決まれば仕事しましょう、あともうちょいだけラストスパートかけましょう。」

「はーい。」

そう言って私は仕事を再開する。

しょうがない、周りの声が聞こえなくなるほど集中あるのみ。

私はパソコンに向かい残りの仕事を終わらせるべく仕事モードに切り替える。


だから気が付かなかったのだ。

話し合う彼女達を見つめる視線に。

彼女達は渦中の彼を見ないように小声で話していた。

しかし彼女達が彼の見える位置にいるのであれば彼からも彼女達の様子が見えるという事。

そして彼が彼女達を見て、冷たい微笑を浮かべていたことを彼女はまだ知らない。









読んで下さりありがとうございます。

今回のお話は少しホラー要素を入れてみました。

謎が残る終わり方ですが続きは今のところ予定してません。

この後に中野さんはどんな結末を迎えるのでしょうか。

ハッピーエンドを目指して書いたはずがちょっとバッドエンド寄りになったので取り合えずここで切ろうと思いました。ごめんなさい。

最後に、読みにくかったと思いますが最後まで読んで下さりありがとうございました。


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