表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/46

優しい声

前話「自己嫌悪」と分けました。

 行かなきゃ、と思う。

行先も分からないまま、私は歩を進める。

視線は、未練がましく未だ赤い花に釘付けのままだ。

窓の前を通り過ぎる時、窓のガラスに自分の姿が映る。

私はその顔に、愕然とした。

思わず立ち止まり、まじまじと自分の顔を覗き込む。

自分の顔など、珍しいモノではない。毎日見ている。

それなのに、自分の容姿に違和感を抱かずにはいられなかった。


誰だろう、これは。


見慣れているはずなのに、赤の他人のような錯覚に陥る。

窓ガラスに手を伸ばし、目の前の顔に触れる。

触れた先にあったのは、無機質の冷たい感触だった。

目の前にあるのは確かにガラスで、そこに映りこむのは、確かに私の顔であった。

映り込んだ私の髪の色は藍色で、驚くことに、瞳の色は金色だった。

顔の造りも、全く違う。私は、こんな顔じゃなかった。

私の髪と瞳は黒だったはずなのに。

これではまるで・・・・・。



『髪が暗い青色で、瞳が金色。まるでラピスラズリのようだから、そこから名前を取って    』


私が父、母と慕っていた人たちの言葉を思い出す。

そうだ。私は父似だったのだ。


そうか。


私がどう足掻いても、『ラピス』からは逃れられないんだ。



『ラピスと名付けたんだよ』



優しい人の声が、私を夢から醒めさせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ