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尊敬

 その後、私は見送りに来たポールと別れを告げ、故郷に帰ってきた。


言葉だけではあっさりと別れたように思えるが、実際はポールが大泣きして騒然としていた。

もちろんポールの両親も来ていて、私が医療費のお礼を言えば、彼らは度々謝罪を繰り返した。

泣きじゃくるポールと遊ぶ約束をしたことを再度確認し、それにポールが納得して泣き止んだところで、私は馬車に乗ってポール達に見送られながら出発した。


故郷に帰った後も、私は相変わらず松葉づえを付いたままだった。

が、実は松葉づえを使わなくとも不安定ながらも歩けたし、元々の行動範囲が狭いため、普段の生活でも極力松葉づえを使わずにいられそうだった。

頑張ろう、と意気込むと同時に、私はもう一つのことも考えていた。

それは、ダリアのことだ。

私は彼女のように素直になりたかった。いや、ただ素直になるだけではない。

私はダリアのように、自分が思ったことを、正々堂々と言いたい。

相手の顔色を見て、戸惑って、必死に感情を隠すのはもう嫌だった。

ダリアが羨ましかったし、それ以上に、すごくかっこよく私の目には映った。

いうなれば、彼女は私の理想像。

言いたいことを言えて、その上ちゃんと話を聞く耳もある。

ああ、羨ましい。

思わず、ダリアの姿を思い浮かべ、両手を組んで祈ってしまう。

(私もダリアのようになれますように!)

(ダリアのようにスマートに正々堂々と自分の言いたいことを言えるようになりますように!)

なんて事を祈ってしまう。

いや、ダリアを拝んでも何も起きないことは分かっている。

行動に移すのは自分だ。

そう思って、りきんだ手から力を抜き、組んだ両手をほどく。

そして大きく深呼吸した後、私はアリッシアとジェーンに会うために松葉づえをついて歩き出した。


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