誘いの言葉2
注意;前の話からいきなり2年経っています。また、前の『誘いの言葉』とは関係がありません。
ジンの告白から、2年の歳月が経った。
その2年という歳月の間、特に変わり映えのない生活を送りながら私は20歳になった。
これは、前世で私が死んだときの年齢。
ついにこの歳になったかと思うと、今やっと出発地点に立ったような心地さえする。
ジンとの関係は、あの後も変わらなかった。
唯一変わったことと言えば、アリッシアがやっと学校を卒業し、医者になったことだ。
そのときはみんなで集まって、お祝いをした。
私は久しぶりの友達との再会と、アリッシアの夢が叶ったことが嬉しくて仕方なかった。
私は、この生活に満足していた。
あの時自分が出した答えに、後悔していなかった。
ジェーンからある誘いを受けた。
「闘技大会?」
つい彼の言葉を繰り返す。
闘技大会とは、5年に一度開催される剣術を競う大会だ。
ジェーンの誘いとは、ジンが出場する闘技大会に応援に行こうというものだった。
といっても規模が大きいものだから、声援を送っても周りの声でかき消されてしまうだろう。
だから、正確には見に行くと言った方が正しいのかもしれない。
彼の言葉に5年前の悪夢が思い出される。
ジェーンとアリッシアが今だに笑う『たくましかった』事件のことだ。
脳裏でうっすらと思いだし、気分が沈む。
うわぁ、と頭を抱えてしまいたくなる衝動に駆られるが、それをなんとか抑える。
そして、こちらを伺うジェーンに今思い出したかのように「あぁ」と頷いた。
「ジン、また出るの?・・・剣術できるから」
後半は褒め言葉のつもりだったが、皮肉めいたものになってしまった。
しまったと思っても後の祭りで、苦虫を噛んだ気分でジェーンを見る。
ジェーンもまた、私と同じような顔をして、苦言する。
「剣術ができるからって・・・なんだよその言い方。幼馴染が出る大会に行きたくないのか?友達だろう?」
別にジンのことが嫌いになったわけじゃない。
できたら行きたいし、応援もしたい。
けれど、闘技というもの自体が、私はあまり好きじゃなかった。
だって、ジンに不信感を抱くようになったきっかけは、闘技大会だ。
「別に、行きたくないわけじゃなくて、ただ、あの、闘技場の雰囲気が慣れないだけであって・・・・・ジンは大切な幼馴染だし、応援、行くわよ」
つっかえながら答えた言葉に、ジェーンは「そうか」とうなずいた。
「じゃあ、開催場所は前と同じ、都心でやるから。滞在日数は5日間を予定。仕事を休めないなら無理しなくてもいい。集合場所は馬車乗り場。アリッシアにはもう言ってある」
私はそれを聞いて、アリッシアは休めないだろうと予想した。
彼女は医者になったばかりで、きっと私たちがこうやって話している間にも、忙しく働いているはずだ。
私は期待しないまま、「そう」とうなずいた。
ジェーンはそれだけ言うと、用はなくなったとばかりに踵を返す。
と思ったら、すぐに振り返った。
彼の唐突な動きに驚き、
「お前、変わったな」
思わぬ言葉に、目を見張った。
褒められている、とは違うようだ。
ジェーンの目も顔も至極真面目なもので、どちらかというと冷めている。
しかしそれを言うなら、ジェーンだってこの2年間で変わったと思う。
前はもっと人をからかうなりして笑っていたのに、今はこうして真面目な顔をすることが多くなった。
しっかりした、と言えば聞こえはいいだろうが、どちらかというと冷たくなった気もする。
ジェーンも仕事で後輩に教える立場になって、仕事も増えたからだろうか。
分からないが、私に対する態度は幾分か変わった気がする。
私が黙っていると、彼はつまらなそうに私を見て、言った。
「なんか、変に恥ずかしがらなくなったというか、小賢しくなったっていうか」
「そうかもね。ほら、私もう20だから。大人だから」
胸を張って告げた私の言葉に、ジェーンは呆れたようだ。
その顔はしばらく見ていなかった人を馬鹿にした顔で。
彼はにやり、と笑った。
「そういうところが子供っぽいっていうんだよ、ばーか」
「そ、そういうこと言うジェーンだって、子供っぽいよ!」
けれど彼は私の言葉を笑い飛ばし、再び踵を返して行ってしまった。




