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無限の世界  作者: 蒼風
五章「別れの果てに」
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五章二話「革命軍」(1)

 刀弥達が街を後にしてから四日程の日数が経過していた。

 現在、彼らはエリビスまで目と鼻の先の距離まで迫ってきている。恐らく今日中には辿り着くはずだ。

 そのせいかネレスの表情は固い。今も彼女は遠くに見える集落の影へと目を向けている。

 そんな彼女に何か声を掛けようかと刀弥は思ったが、結局寸前のところでやめた。何を言ったところで今は効果がないと思ったからだ。

 チラリとリアの方へと目をやると、リアは刀弥に向けて笑みを見せている。どうやら先程の様子を見られていたようだ。

 決まりが悪くなった刀弥はつい彼女から視線を外してしまう。

 視線を外すと同時に聞こえるリアの笑い声。それをわざと無視した刀弥はそのままネレスと同じ方角へと視線を向けるのだった。

 視線の先にあるのは荒れた大地と小さな灰色の群れ。恐らく建物の群れだろう。

 そんな当たりをつけながら刀弥は続いて視線を目の前の道へと向ける。

 右へとなだからにカーブ描いた道。当然、その先にあるのは先ほど見ていた建物の群れだ。実感はないが、建物群が徐々に迫ってきているのは間違いない。


「……ん?」


 と、そんな時だ。刀弥は建物群の手前の道で人が列を成しているのを発見した。

 列の先には以前宿屋で見た兵士達が立っている。


「検問かな?」

「だろうな。たぶん、革命軍の関係者を探してるんだろう」


 遠目から見えるやり取りからしても間違いないだろう。荷物の検査に何らかの話し合いをしている様子。簡易だが確かに検問で間違いない。


「でも、どうして今頃?」

「それはさすがにわからないな」


 ネレスの疑問に肩をすくめる刀弥。

 実際、全く心当たりがない以上、そう答えるしかない。

 もし、思いつくものがあるとしたら、何らかな大事がありそれに対する備えという程度だ。


「なんにしても俺達は大丈夫だろう。疑われるようなものはないはずだし……」


 気楽な声で刀弥は言う。

 さすがにこじつけで革命軍扱いされたらどうしようもないが、先日の兵士達の様子を思い出す限りは大丈夫だろうという判断だ。加えてこちらには医者からもらった依頼状もある。少なくてもエリビスへ行く表向きの理由がしっかりある以上、不必要に恐れる必要はない。


「だね。まあ、見たところ、皆通過できてるみたいだけど……」


 そんな刀弥の意見にリアも賛同する。

 彼女の言葉に刀弥は再度検問を見ると、確かに彼女の言う通り全ての人が何事もなく検問を通り抜けている事に気が付いた。


「なら、大丈夫だな」

「そうですね」


 その事実に安堵しつつ、三人は検問に向かう。

 検問は長蛇の列だった。その最後尾に刀弥達は並ぶ。

 ふと、辺りを見渡すと赤い大地の向こうの方に簡易の見張り台らしきものが立っているのが見えた。少し離れたところにバイクのような形をした乗り物に乗った兵士達の姿も見える。


「そりゃ、あるか」


 人によっては検問を避けようと考える者だっているはずだ――無論、ただ単に道以外のところを通りたかったという変わった人もいるだろうが――。当然、向こうもそういう人達に対する備えはしているに決まっている。

 隠れるところがなにもないこんな大地ではあの見張り台から逃れながら進むのはかなり難しいだろう。かなり有効な策といえた。


 と、そんな思考をしている間にも列を進んでいく。それに気付き歩みを進める刀弥。

 少しリアの方を見ると、彼女は購入した映像を眺め楽しんでいた。どうやらそれで時間を潰す気のようだ。ネレスの方はというと、そんな余裕もないのか先と同じように村の影を眺めている。

 そんな二人を見て刀弥もまたスペーサーから本を取り出す。

 本は少し前に本屋で見つけた物語だ。内容は偶然見つけてしまった古代の剣を巡る冒険。最初はその剣を用いながら主人公が成長していく物語かと思ったが、実際はその剣が主人公に枷を与えている。どうやら問題の剣は呪いの剣らしい。振るう度に主人公は過去の大事な思い出を失っていた。

 そんな剣の秘密を探る主人公は最終的にどうなるのだろうかといろんな想像を膨らませながら本を読み進める刀弥。無論、前が進んだらそれに付いて行くのは忘れない。


 そうしてしばらく経った時、ようやく刀弥達の番がやってきた。

 それで三人はそれぞれの時間潰しを終了させる。

 まず最初に行ったのは荷物検査だった。当然、スペーサーの中身もまあチェックされる。

 そうして荷物を検査している間に簡単な質疑応答。エリビスに向かうを理由を聞かれると刀弥は医者に薬を運ぶよう頼まれたことを話しその依頼状も彼らに渡した。

 渡された兵士達は依頼状を検分する。そうして依頼状が正式ものであることを確認すると、礼を言って依頼状を返した。荷物の検査が終わったのは丁度そんな時だ。

 荷物を返してもらい、元のところに戻すと三人はエリビスへと向けて歩き出す。

 後ろでは丁度次の人達が検問を受けるところだ。先程聞いた内容を耳にしながら三人は検問を後にしたのだった。



      ――――――――――――****―――――――――――



 その後、彼ら歩みは順調に進み、昼過ぎ頃、ようやく彼らは目的地であるエリビスに辿り着いた。

 エリビスは小さな村だった。村の端と端が目に見え建物の数もひょっとしたら数えられるほどしかないかもしれない。

 とりあえず三人は宿屋へと赴く。これぽっちの規模の村だ。宿屋など一軒ぐらいしかないだろうし、それならばネレスの兄もそこに泊まっているかもしれない。そんな期待があったためだ。

 しかし、その期待はあえなく潰えた。


「いや~、今泊まっている客にオスワルドなんて名前の客はいないですな。そんな人物が来た覚えもないですし……」


 困ったように言う宿屋の主。彼にネレスの兄が泊まっていないかと尋ねた結果がこれだ。

 これには三人とも少し困惑してしまう。外から来たのなら一度くらいは利用していてもおかしくないはずなのだが、どうやら見ていないらしい。そうなると村のどこかの住居で寝泊まりしているということになるのだが……


「知らな~い」


 そう言って子供達が逃げ去っていく。先程から村の人達に聞きまわってもこんな調子だ。誰も彼のことを知らないと答える。


「見たという話が見間違いだったのかな?」

「だったら、その似た人物の話がでてもおかしくないはずだけど……」


 村の端の方で集まり相談する三人。こうなってくると見たという話が間違いだったか、村全体がグルのどちらかだろう。どちらもかなり突拍子もないだけにどちらの考えも確信を持てないのが難点だ。


 どうしたものかと悩みながら刀弥は天を仰ぐ。

 空は既に日が天上から落ち始めていた。それで刀弥はふと忘れていた事を思い出す。


「そういえば昼飯がまだったな」

「そういえば……」

「もう時期村だから村について何か食べようかっていうことになってたんだよね」


 それをネレスの兄の情報が一つも手に入らないという想定外の事態のせいで忘れてしまっていた。

 とりあえず落ち着くために彼らは村唯一の食堂兼酒場へと向かうことにした。


 食堂に辿り着いた三人は席に着くと同時に目についた料理を注文する。

ほどなくして注文した料理が届いた。それを食べながら三人は話し合いを始める。


「これからどうしよっか?」

「あてがないのが問題ではあるよな」

「本当、手間を取らせてしまってすみません」


 二人を見つつ頭を下げるネレス。そんな彼女に二人は肩をすくめたのであった。

 が、その時だ。


「あ、ここにいましたか」


 聞きなれない第三者の声が三人の耳に届いた。

 それに驚いた三人は反射的に声の聞こえた方向、つまり店の入口の方へと顔を向ける。

 するとそこには先程会った宿屋の主が立っていた。


「どうかしたんですか?」


 宿屋の主は息切れをしている。どうやら刀弥達を見つけるために村中を探しまわったようだ。


「実はあなた方を探している人がいまして……」

「え?」


 その言葉に声をあげたのはネレス。刀弥とリアはというと少し不審げな表情で互いに見合っている。


「お食事が終わりましたら付いて来ていただけませんか?」

「……どうするんだ?」


 ネレスに尋ねる刀弥。何も手掛かりが見つからない中でいきなり降って湧いたように現れた情報。正直に言って胡散臭かった。

 けれども、現状としてはこれ以外に手掛かりはない。そのため、刀弥は当人に決めさせることにした。


「…………わかりました」


 少し考えた後、ネレスはそう宿屋の主に返事を返す。それで彼らの行動は決まった。

 そうと決まれば後は食事を終えるだけだ。

 こうして刀弥達はその探している人物に早く会うために食べかけの食事を急いで腹に収めるのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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