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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
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終章三話「持ち受ける存在」(6)

 炎の砲撃が壁を破壊する。とはいってもこれまでのように砲撃が壁を貫通するという事はなかった。

 砲撃が壁にぶつかった瞬間、壁に紋様が出現し砲撃を防いだのだ。しかし、その威力を完全に防ぐことまではできなかったのだろう。

 紋様は炎の砲撃の消失の直前に消失。僅かに残った砲撃余波が壁にぶつかり、その威力によって壁は破壊されたのだった。

 一方、砲撃から弾き出されたゴーレムはというと同じく壁に出現した紋様にぶつかり移動を停止。瓦礫散らばる床へと落ちていった。

 とはいえ、それで動かなくなるなど刀弥もリアもこれぽっちも思っていない。すぐに動き出さないか警戒しつつ壊れた壁の方へと視線を向けた。

 先程の紋様。これまでの壁では出現もしなかった。それが出現したという事はつまり、その紋様付きの壁の向こうはそれ程までに守らなければならない場所だということだ。


「!? 警告します!! それ以上はそこ――」


 女の子の警告を無視して壁の覗き見る刀弥とリア。すると、そこには――



 透明な床の広がる広大な空間が広がっていたのだった。



 部屋は澄んだように静かでいて美しい。光源のようなものがないにも関わらず部屋の中はとても明るく綺麗だった。

 透明な床の下を見るとそこには箱。大きさは人一人が入れるくらいに大きく、それが何列にも整然と列をなして並べられている。

 見える範囲、縦五〇列、横五〇列なのはわかるのだが、奥に重ねられている分は深すぎて最奥まで見えない。むしろ、底も見えてないのだ。

 その深さに一瞬、立ち眩む刀弥だがすぐに平静に戻る。まだ、気を抜いていい状況ではないからだ。

 改めて部屋を見渡す。よく見ると部屋の中央に長方形型の物体が見える。

 それに興味を持った刀弥はその正体を確かめようと足を踏み出――


「それ以上はそこに踏み入れないでくださいと伝えたはずです!!」


 ――そうとした所で女の子が横からタックルかまされた。

 その勢いに押されて倒れる刀弥。突然の事態にリアも目を丸くしている。

 二人共、女の子の存在は意識していたが戦闘をゴーレムに任せていたこと等からこのような行動にでてくるとは予想もしていなかったのだ。

 どうにか起き上がろうとする刀弥だったが、その行動を必至に女の子は妨害する。


「行かせ……ない……」


 ならば、リアに行ってもらおうとすると、それに気付いて今度はリアの方へと抱きつき妨害してくる。

 どうやらあの部屋はこの女の子にとってとても大事場所らしい。

 さて、どうしたものかと悩む二人。

 二人の目的は単にここから帰ることでだ。帰るためにここに入らねばならないのなら入るが、その必要がないのであれば入らなくても構わない。

 ならば、どうするかといった所に思考が巡った、その時だった。

 ゴーレムが倒れていた場所にある瓦礫が僅かに動いた。その音に刀弥とリアの二人は反射的にそちらに身構える。

 瓦礫はそれから暫くの間、物音も動きも出さなかったが、やがて徐々に音を大きくしていったかと思うと直後、瓦礫は崩れ中からゴーレムがその姿を現したのだった。

 予想していた展開なので二人共驚くことはない。ただ、静かに瓦礫によって巻き起こった土煙の見据える。

 一方、女の子の方は瓦礫が僅かに動いた段階で既に二人から離れていた。今はゴーレム側から見て二人の背後、少し離れた位置に立っている。

 立ち上がったゴーレムは再び羽を出現させ広げると二人へと照準。光の雨を翼から放ったのだった――女の子を巻き込んで


「な!?」


 驚いたのは三人とも。当然だ。これまでの事を考えても女の子はあのゴーレムに命令を送った張本人だ。あれが作られた兵器であるなら当然、命令主を傷つけないような設定が施されているはずである。

 にも関わらずゴーレムは彼女は巻き込む方法をとった。当たらないとか避けれくれるという計算を働かせたとは思えない。現に雨の一部は彼女に当たるコースだしその彼女は動けないでいる。


「くっ」


 ともあれその疑問は後回しだ。刀弥は対処に思考を回す。この攻撃に対する対応は回避と防御の混合。つまり、避けられるものは避けて当たりそうなものだけを刀で防ぐ方法だ。

 けれども、避ければ後ろに女の子が被弾してしまう。別に敵なのでどうなっても構わないのだが、どうしてもそれに躊躇い生じてしまう。


「……」


 結局、留まり自身や背後に被弾するであろう光を防いでいく刀弥。当然、防御だけで防ぎれる量ではないたちまち彼の処理能力は限界を迎えてしまった。

 それでもどうにか限界ギリギリ超えた量を対処していくが、それもすぐにオーバーしてしまう。

 くそ、とそう悪態を吐こうかというその時である。

 彼の背後から風の矢群が追い抜いていった。

 彼の傍を通過した風の矢群。先行して光を迎撃。刀弥達を襲う光は瞬く間に減っていった。

 だが、攻撃が全て撃ち落とされた訳ではない。まだまだ数は残っている。しかし、その数であるなら刀弥の防御で十分処理できるものである。

 残った光を迎撃しながら刀弥は援護してくれた人物、リアの位置を探る。

 彼女は女の子の真後ろにいた。そうして刀弥に守りを任せることで自身は彼の援護をできるようにしたのだ。

 そうしてどうにかゴーレムの攻撃を防ぎきった二人。刀弥の背後では女の子が『どうして……』と呟いている。


「あなた達に私を助けるメリットなんてなかったはずです。むしろ、倒れた方がメリットがあった。なのに、どうして危険を犯して私を助けたのですか?」


 正直に言えば理由なんてない。体と意識が反射的にそう動いてしまっただけの話なのである。が、それを馬鹿正直にいうのもなんだか情けなかったので、刀弥は少しのシアンの後にこう答えた。


「メリットならあるぞ。こっちは帰りたいだけだ。お前が倒れてよしんばアレを倒したとしてもその方法がわからないんじゃどうしようもないだろうが。要するにお前にはここから帰るためにも生きてもらわないと困るって事だ」


 そんな彼の言葉にリアが吹き出す。どうやら刀弥の本音の部分については気付いているようだ。その辺は付き合いの長さだろう。

 だが、付き合いのない女の子はその事に気付かない。刀弥の言葉になるほど納得する。


「それと数点聞きたいことがある。今、あのゴーレムはどうなってるんだ?」


 そんな彼女に刀弥は問いを重ねた。

 先程、ゴーレムは命令者たる女の子も巻き込んだ攻撃を行っており、正常な状態とは思えない。

 刀弥の問いに対して女の子は渋面を作る。無理もないだろう。ゴーレムが刀弥達の予想通りの状態であるなら、その事を敵に正直に話せるはずもないからだ。

 そこで刀弥は新たな言葉を投げる。


「……聞き方を変える。 今、あのゴーレムはその部屋を壊すかもしれない状態なんじゃないのか? だったら、取引だ。俺達があの部屋を壊さずゴーレムを倒せたのならこの世界から出してもらえないか?」

「!?」


 その言葉にはっと顔をあげる女の子。


「こっとはここから出たいだけだ。なんだったら、この世界について喧伝しない事も約束する。どうだ?」


 これまでの彼女の反応からあの部屋は彼女にとってどうしても死守しなければならない場所なのだろう。口封じもそのための手段だ。

 そうして女の子の反応を待つ刀弥。彼女はしばしの間悩んでいた。その返事を待ちたかった刀弥達だったが、そうは上手くいかなかった。

 ゴーレムが行動を再開したからだ。そもそもはまだ戦闘の最中である。にも関わらず先程のような会話が行えただけまだ運が良いとも言えるだろう。

 何故、これまでゴーレムは動かなかったのか。空気を読めるわけがないので、なにか理由があるはずなのだが、その理由は程なくして判明した。

 ゴーレムの翼の色が変化を始めたからだ。色は白から赤。それと同時に各種の駆動部からも赤色の光が漏れだしていく。


「私の認可もなしにリミッターを解除!? 今まで動きを止めていたのはそのための処理をしていたって事!?」


 その動きに慌てた女の子は一動作。それで透明なディスプレイが一つ浮かび上がらせると、急ぐように彼女はディスプレイを操作していく。やがて、彼女はあのゴーレムに関連する権限のほとんどがハッキングによって一時的に解除されているのを確認した。

 一時的なので彼女がその気になって動けば権限を取り戻すことはできる。だから、それもすぐとはいかない。恐らくゴーレムはその間に一気に侵入者二人を排除するつもりなのだろう。施設の被害を無視して。

 どういう理由でそういう行動に出ようとしたのかはわからないが、それは女の子にとって許容できる事ではなかった。

 彼女にとって最優先は『あの部屋』の完全な保護である。

 故に――


「…………わかりました。あなたが出したその提案。私の権限において承諾致します」


 彼女は刀弥の提案を受け入れることにしたのだった。

 その返答に満足な笑みを浮かべる刀弥。その表情でリアの方を見てみると彼女もまた同じような笑みを見せていた。

 そうしてゴーレムの方へと向き直る二人。ゴーレムは既にいつでも仕掛けてきそうな雰囲気だ。それに対して身構える二人。

 直後、両者は同時に動き出した。それぞれの目的を叶えるために……

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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