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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
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終章三話「持ち受ける存在」(5)

 ゴーレムが放とうとした追撃は手甲から放つ砲撃だった。ゴーレムは右腕を刀弥へと向けると即座に砲撃を撃ち放つ。

 対して刀弥はまだ体勢が整っていない。体勢が整えば宙に斬波で足場を生み出し逃れることもできるのだが、それがすぐにはできないという状況だ。

 どうすると思考を巡らしていたその時である。

 真横から刀弥をかすめるように風の砲撃が飛んできた。

 軌道は正面のゴーレムの砲撃に対して斜めに突き抜ける軌道。位置としては刀弥の傍をかすめていく軌道だ。

 砲撃の主はリア。彼女は刀弥が吹き飛んだのを見て即座に風の砲撃の魔術式を組んでいたのだ。

 相殺が狙えるのなら追撃自体を潰し、無理なら刀弥を巻き込み敵の追撃範囲から退避させる。

 刀弥自身にとってはかなりきつい状態に見舞われるが追撃の直撃を受けるよりは遥かにマシだ。リア自身、文句を言われるのも覚悟済みである。最も彼ならそんな事言わないだろうなという予感も僅かにあるが。

 そうして彼女の放った風の砲撃は狙い通りその余波に刀弥を巻き込む直進。道中の障害物を全て飲み込み吹き飛ばしていったのだった。

 余波に飲まれた刀弥。飛ばされた直後こそ振り回されいたが、ある程度経った段階で体の制御と斬波の足場の生成で自身を制御。地面が近くなる頃には完全にコントロールを取り戻しし無事に地面へと着地した。


「悪い、助かった」


 それだけをリアに告げて刀弥は駆け出す。

 刀弥が無事なのを確認したゴーレムは対応を変更。翼を閉じていく動作で二つの翼の先を自身の胸部付近に集めるとそこに紋様の陣を構築した。


「やばい!?」


 それを見て刀弥は全力で右へと方向転換。何かから逃げるように必死な形相でゴーレムの正面から離れようとする。

 その判断が功を奏した。

 直後、紋様の陣から凄まじい光と熱が放たれた。その威力は手甲から撃たれた砲撃とは比べ物にならないくらいの威力と規模である。

 余波の衝撃で瓦礫が吹き飛び、光にぶつかった壁や瓦礫は熱で誘拐するかその威力で破壊される。

 そうして生まれたのは大規模な破壊後である。


「っ!?」


 その威力に驚き呆然とする刀弥。だが、ゴーレムの攻撃は先ので終わらない。今の攻撃を再び刀弥に向けて放ってくる。


「くそ!?」


 どうにか跳躍し直撃を躱した刀弥だったが、今回のゴーレムの攻撃は撃って終わりではなかった。

 なんと、照射を続けさらには刀弥の後を追いかけ始めたのだ。

 それに気付き再び走り始める刀弥。一方、リアの方も彼の逃走を手助けすべく動いていた。

 幸いにして彼女のいた場所は先の攻撃に巻き込まれない場所。今も向こうは刀弥を優先しておりリアに対しては無防備だ。

 それを隙と見て攻撃を掛けるリア。

 そうして彼女はゴーレムに対して炎の砲撃を撃ち放ったのであった。

 狙いとしてはあわよくばゴーレムの撃破。とはいえ、それがそう簡単に上手くいくわけがない。ただ、炎の砲撃をどうにかするのであれば恐らくあの照射は中断せねばならないはずである。

 そう読んでの炎の砲撃。要するに相手に防御行動を強要する事で刀弥への追撃を中止させるのが狙いなのだ。

 ゴーレムが回避するという可能性はリアは考えていない。あの大規模な攻撃だ。中断してすぐに回避動作に移れるとは考えづらかったためである。

 そうして放たれた炎の砲撃。それに対してゴーレムは刀弥への追撃を中断し防御へと回った。

 光の翼から羽を撒き散らし空中に円状の紋様を出現させ、それで砲撃をブロックする。

 砲撃は紋様を突き抜けようとするが紋様の方が固いせいで突き抜けられない。結果、力の及んでない面へと逃れるように散っていく事となった。

 一方、刀弥はリアのおかげでゴーレムからの追撃より脱出。紋様を避けた炎が周囲で暴れ回っているが、刀弥はそれを気にせず再びゴーレムの元へと駆けていく。

 ゴーレムは砲撃が止んだ段階で紋様を消滅。すぐに刀弥の方へと向き直り腕から光の刃を生み出すとそれで刀弥に斬りかかった。

 ゴーレムの攻撃に気付いた刀弥は刀で防御。そのままゴーレムの剣を右へと流した後に弾くと返す刃で一閃。ゴーレムの反撃を見舞った。

 が、その反撃もゴーレムの反対の腕の剣で阻まれてしまう。

 防いだゴーレムは今度は光の翼を使って上から攻撃。

 それを刀弥は左へと飛んで躱すと起き上がりざまに斬波を飛ばした。

 飛んできた斬波をゴーレムは光の剣で断つ。と、そこへ山なりの軌道を描いて風の矢群が飛んできた。放ったのはもちろんリアだ。

 飛んできた矢群に対してゴーレムは防御を選択。円状の紋様で矢群を全て防ぎきってしまう。

 だが、そのおかげで刀弥は再び刀の間合いに入り込むことができた。そのまま彼は刀を振り上げゴーレムを両断しようとする。

 対してゴーレムはそれから逃げるように跳躍。滞空中は剣を消し砲撃で刀弥やリアを狙う。

 二人はこの砲撃を回避や防御をしながら斬波や炎の砲撃で応戦。しかし、それをゴーレムは翼を羽ばたかせて回避した。

 そのままゴーレムは着地すると魔術で火球を多数出現。そうしてそれを二人目掛けて放ってきた。

 飛んでくる火球に対して刀弥は回避を選択。火球の隙間を縫うように避けていく。

 一方のリアは力場の壁での防御を選択。火球が壁にぶつかって次々と爆発を起こすがどうにか壁は持ちこたえ続けてくれた。

 そうしてゴーレムの火球が止む。

 音が止み、土煙で視界が悪くなっている周囲。その中を刀弥は進んでいく。

 ゴーレムの位置は恐らく最後に見た場所からそう変わっていないはずだ。静寂の現状でも自身以外が動いているような音は聞こえてこない。

 そうして最後にゴーレムを見た地点へと近づいていく刀弥。それに比例して土煙も晴れていく。

 やがて、土煙が晴れ視界がクリアとなった中、刀弥の正面には――



 先程使った紋様砲撃を構えたゴーレムの姿があった。



 咄嗟に方向転換をしようとする刀弥。しかし、既にかなり前へと体重を預けているすぐに方向を変えるのは無理だ。

 間に合いそうにない事に気づきつつもそれでも姿勢を変えようとする刀弥。

 と、その時だ。


「攻撃中止!!」


 唐突に女の子がそう叫んだ。

 声の聞こえた方を見てみると女の子が焦った表情を浮かべている。

 何故、折角倒せる機会を逃したのか。その事について刀弥は疑問に思うがまずは現状を脱するほうが先だ。

 ゴーレムが攻撃を止めていくのが視界に映るが方向転換は継続。ただ本来の予定だった真横への移動の代わりにターンからのステップで左前へと飛ぶ。

 そうして斬波。それはゴーレムに光の剣によって防がれるが構わない。そのまま彼は斬波を飛ばし続けていた。

 この間にリアがゴーレムの後ろ――ゴーレムを中央に二人で前後を挟み込む形――に回り風の矢群を放つ。

 後ろから飛んで来る矢群をゴーレムは光の翼から放った光の雨で撃ち落とす。

 そのタイミングで刀弥が接近。刀を振り下ろした。

 この攻撃をゴーレムは右腕の光の剣で防ぎ、続いて左の光の剣で刀弥に反撃する。

 右下から左上への軌道で迫ってくる剣閃。それを刀弥は体を後ろへ逸らす事で回避とした。

 元々、こうなる可能性は想定済みだ。大事だったのは使わせた現状で一旦ゴーレムの意識を自分の方へと向けることなのだから。

 直後、ゴーレムの背後から赤の光が迫ってきた。

 赤の光の正体は炎。リアの炎の砲撃だ。

 咄嗟に旋回し防御しようとしたゴーレムだったが――


「させるか!!」


 その動きを刀弥に妨害される。逸らしたために仰向けに倒れた彼はその体勢で斬波を放ってきたのだ。

 斬波の行先はゴーレムの頭部。距離の近さもあってゴーレムもすぐ動かなければならない。

 結果、ゴーレムは光の剣を使って防ぐこととなった。代わりに後ろへと振り返る事が遅れることと引き換えに。

 その刀弥は斬波を飛ばし終わった後はすぐさま離脱行動へと移っている。軌道的には刀弥の高さには炎の砲撃は直撃しないがさすがに余波まではそうはいかない。直撃よりかは遥かにマシではあるがそれでも熱の熱さと温度差と砲撃によって生まれた風はなかなかに効くのである。

 もうゴーレムの防御は間に合わない。その時点で普通の人間ならパニック起こして思考が止まってしまうだろうが生憎と機械である。乱れやエラーを起こすことなく思考演算を続けていた。

 そうしてゴーレムが導き出した答えは光の翼で自身を幾層にも包んでの防御。とはいえ、これだけでは炎の砲撃を完全には防げない。そこでゴーレムはそれに加えて炎の砲撃がぶつかると同時に進行方向への移動も追加した。

 光を纏った守りの層を食い破らんとする炎の砲撃。しかし、同じ方向に動いているためにその威力を完全にぶつけることができない。加えてその熱も光の翼の層によって完全に阻まれしまっている状態だ。


 結果、ゴーレムは弾かれるような感じで射線上から吹き飛び、炎の砲撃はそのまま直進。まだ無事であった壁を貫通したのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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