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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
232/240

終章三話「持ち受ける存在」(4)

 着弾によって起こった衝撃。それが塵を巻き上げ視界を灰に染める。

 刀弥はというとゴーレムにタックルした直後にゴーレムから離れ離脱。なんとか火球の爆発に飲み込まれず済んだのであった。

 前方を警戒しながら刀弥は女の子の方を見る。

 ここまで表情の崩れることのなかった彼女。しかし、今彼女は何かマズイといった感じの顔を浮かべていた。

 普通に考えれば倒された事に対するものだと考えられるが、それにしては妙に深刻過ぎる。

 どういう事だと刀弥が疑問に思っているとその瞬間、自分でもリアでもましてや女の子のものでもない足音が彼の耳に届いた。

 警戒を強めながら音の聞こえてきた方へと視線を向ける刀弥。すると、そこには――



 白色をした細身のゴーレムが立っていた。



 デザインの雰囲気的に恐らく先程のゴーレムだろう。今見えている姿こそが装甲の下に隠れていた本当の装甲だったのだ。

 ゴーレムの装甲は先程違いただ白色をしている訳ではない。装甲表面には光るラインが幾筋も紋様のように走っているし、関節からは時折光が漏れ出ている。

 ゴーレムは最初見た時のように僅かに浮いていた。ただ心なしか発する雰囲気がさっきよりも強烈だ。

 その雰囲気に自然と警戒心が高まっていく刀弥。刀を構え直してゴーレムの出方を伺う。

 後ろからはリアが近づいてくる足音。足音は刀弥の真後ろで止まった。

 それを認識して刀弥は走りだす。

 ゴーレムはまだ動かない。ただ立ち尽くしたまだ。

 その事をただ事実として認識しつつ刀弥は足を進める。

 と、両者の距離ある程度縮まった時、ようやくゴーレムが動いた。

 ゴーレムが行ったのは装甲の展開。場所は背部だ。

 それによって生み出されたのは小さな翼。先程の翼と比べると微々たるものと言っていいほど小さなものだ。

 だが、次の瞬間、そこから光の翼が出現した。

 光の翼の大きさは先の翼よりも遥かに巨大である。その大きさと輝き、そして美しさに走りながらも吸い込まれる刀弥。それはリアも同様だった。

 けれども、そのすぐ後彼は現実に戻される。光の翼から光の雨が放たれたためだ。

 雨故にその範囲は広く範囲外に逃げるのは困難である。そのため刀弥は自分に最小の回避で自分の当たりそうな光を避け、それでも避けられそうにないものを刀で防ぐことにした。

 刀の防御は光を横からぶつけるもの。真正面から受け止めなかったのは彼の感がそれは危険だと告げてきたからだ。

 そうして彼は光の雨の中を潜り抜けていく。リアの方はというと距離もあったため魔術による力場の盾をもってその攻撃をどうにか防いでいた。

 やがて、光の雨が終わりを向かえる。そこを勝負どころと判断して一気に走るペースを上げていく刀弥。

 そして刀弥はゴーレムを間合いに捉える。放つのは軽い突き一つだ。

 この攻撃は様子見。なにせ武装を外しただけでいきなり新たな攻撃手段を放ってきた相手である。他にも新しい攻撃を使ってきてもおかしくはない。

 まずは相手の新たな戦闘方法を知ることから。そう考えて刀弥は突きを選んだのだった。

 対してゴーレムは何の反応も起こさない。ただじっと立ったまま刀弥の方へとその目を向けている。

 この反応に刀弥は疑問。どういうつもりなのかと考えたところで――



 唐突に彼は全身真っ二つに断たれるイメージが思い浮かんだのだった。



 イメージの源は直感から来る悪寒。すぐさま彼は攻撃を中断し右横へとサイドステップを掛ける。

 直後、彼のいた場所を何かの力が駆け抜けていった。

 刀弥は背後を振り返らない。振り返る余裕がないからだ。今の攻撃。刀弥には全く何のモーションも見えなかった。避けた直後、気が付けば攻撃が飛んできていたのだ。

 故によそ見をすればその瞬間、やられるかもしれない。そんな予感が頭を過ぎり背後を振り返れない。

 ただ、攻撃の種類はある程度知ることができる。視界に入る攻撃の跡だ。

 見えるのは床を割るように進んだ力の跡。線状で切れ目には瓦礫がめくれ上がっている様子はない。

 それを確認して刀弥は先の攻撃が斬撃によるものだと当たりをつける。だが、問題はゴーレムがそれらしい武器を持っていない事だ。

 先程までなら光の剣等が思い浮かぶが武装を破棄した現状、どんな武装があるのかわからない。


「右に避けて!!」


 と、その時だ。背後からリアのそんな叫び声が聞こえたのは……

 彼女の警告に従い刀弥は右へと飛ぶ。直後、彼のいた場所を先程の斬撃攻撃が襲いかかった。やはり、前動作等はなくいきなりの攻撃だ。リアの警告のおかげで避けれた上、攻撃直前にとある気配を感じ取る事ができた。


「まさか、魔術?」


 つまり、このゴーレムは己の武装に加え魔術まで扱えるということだ。今までなかったパターンに正直刀弥は驚きを隠せない。だが、使えるというなら今は疑問も否定の時間もない。可能性や疑念であるならとりあえずはそう前提すればいい。違うのであれば戦いの中でやがてその真実が判明していくだろうから……

 とにかく相手が魔術が使えるという事を頭に入れて刀弥は再び動き出した。

 接近を試みる刀弥に対してゴーレムは距離をとると同時に再び光の雨を放つ。

 再び襲い来る光弾の雨。その中をかい潜り突破した刀弥はゴーレムに向けて斬波を飛ばすとそのまま回り込む軌道でゴーレムへと近づいていく。

 ゴーレムは刀弥の飛ばした斬波を紋様でシャット。攻撃を防ぐと今度は刀弥の方へと頭部の視線を向けた。それと同時に右片翼が刀弥の方へと伸びてくる。

 伸びてくる光の翼を見て右へと飛ぶ刀弥。直後、光の翼が刀弥のいた場所ごと床を叩き斬った。翼が刃となったのだ。


「刀弥危ない!! 下がって!!」


 それに続いてリアからの警告。その言葉に従って後ろに飛ぶと直後に彼のいた真上から光の槍が一つ落ちてくる。魔術による攻撃だ。

 避けた刀弥は光の槍の傍らを通り過ぎゴーレムを目指す。当然、ゴーレムは刀弥を近づけさせまいと様々な攻撃で妨害を始めてきた。

 反対の光の翼による斬撃。かと思えば三度目の光の雨。それが終わっても魔術の攻撃や翼を羽ばたかせての強風。果ては手甲からの砲撃と多種多様な攻撃が刀弥に向かって迫り来る。

 刀弥はリアの手も借りてそれらを防いだり避けたりしながらゴーレムの距離を詰めていった。

 やがて、刀弥はもう少しで刀が届くという距離まで接近する。

 この機会を逃す訳にはいかない。また距離を離されれば先程の苦労をまたやらなければならないからだ。できればこのチャンスに決着をつけたいところである。

 前進する。彼の進行を阻もうとゴーレムは砲撃を使用。右の手甲から大きな光が放たれるが既に刀弥は左へと飛んでいた。前進は僅か数歩で止めていたのだ。

 そのまま刀弥は砲撃をやり過ごしながら前進。刀の間合いにゴーレムを捉えると刀を左下から右上へと振り抜く。

 丁度、砲撃が終了したゴーレムはそれと同時に跳躍。刀弥の斬撃を飛び越え彼の背後に回り込むと背中の光の翼を剣状へと変形させそれを刀弥へと振り下ろした。

 翼での攻撃に気付いた刀弥は前へと飛び前転。それで光の翼の斬撃を回避すると振り返りざまに斬波を放ち追撃に接近と同時に突きを放った。

 対してゴーレムは手甲から光の剣を出現させて斬波を破壊すると、続く突きをその剣でいなして蹴りを見舞おうとする。

 接近してくるゴーレムの足。けれども、その蹴りは途中で止まることとなった。

 リアが風の矢群を撃ってきたからだ。

 蹴りを中断したゴーレムは刀弥から後退。両手甲と翼からいくつもの光弾を撃ち放って矢群を迎撃していく。

 一方の刀弥はその攻防を避けるように回り込み。ゴーレムの背後からの接近を試みるとそれに反応して光の翼の斬撃が迎撃に動く。

 襲い来る二つの白の刃。それを左右の連続サイドステップで回避し隙間を抜けると後は背中まで一直線だ。

 剣戟。無防備なその背中へと向けて刀弥は刀を振り落とそうとする。

 が、しかし、その攻撃は空を切ることとなってしまった。ゴーレムの姿を見失ってしまったからだ。


「刀弥。上!!」


 どこだと探しているとそこにリアの声。その声に従い上を見上げると……そこには頭をこちらに向けて飛び越すゴーレムの姿があった。背中から伸びた翼は真っ直ぐ刀弥の背後へと伸びてゴーレムを支えている。つまり、ゴーレムは光の翼を腕のようにして己を持ち上げたのだ。


「な!?」


 そんなのアリかと驚愕する刀弥。そこへ魔術による風の砲撃。

 どうにか直撃だけは免れたが完全に逃れきることまではできなかった。

 砲撃によって煽られた風に飲まれて吹き飛ぶ刀弥。

 そんな彼に向けてゴーレムは追撃の一撃を今まさに放とうとしていたのだった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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