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無限の世界  作者: 蒼風
終章「太古の時間流れる世界」
229/240

終章三話「持ち受ける存在」(1)

さて、いよいよ最後の話です。

ここまでくるとやりきるだけですね。

どうぞ最後までお付き合いくださいませ。

 下り坂を降りていく二人。既に戦いの音は止んでいた。

 今、二人の耳に届くのは静かな静寂の無音だけだ。

 ここからわかるのは戦いが終わったという事。

 果たして誰が戦っていたのか。そして結果はどうなったのか。

 それが気になって仕方なく自然と二人の足は加速する。

 そうして下り坂の終わりに辿り着いた時、二人は見た。その光景を。

 崩れ落ちた天井の数々。壁に至ってはそのほとんどがあってなきものになっている。床とて無事な面の方がかなり少ない。

 戦いの音が止んだのは少し前くらい。にも関わらずまだ土煙が残っているという事はそれだけ激しい戦いだったという事を物語っている。

 一体、誰が何と戦っていたのか。

 周囲に注意しながら刀弥達が進んでいると――


「もう一組の侵入者ですか」


 そんな幼き声が二人の耳に届いてきた。

 反射的に身構える刀弥とリア。声は土煙の向こうから聞こえてきた。

 そちらの方へと注視しつつ二人は出方を待つ。

 やがて、土煙が薄まりその向こう側が見えてきた。


「な!?」

「女……の子……」


 その姿に驚く二人。

 一方、女の子の方はというと二人の反応を気にすることなく話を続ける。


「故意なのか事故なのか……それについて私は事実を求めません」


 いきなり言われた内容に二人は理解が追いつかない。一方、女の子の方も二人に理解してもらおうと思っていないのか反応を見ることなくすぐに言葉の続きを口にし始めた。


「私に与えられた任務はこの世界の管理と守護。申し訳ございませんがここの存在を外に広められる訳にはまいりません……」


 それでようやく刀弥は自分達が口封じでゴーレム達に襲われたのだと理解する。そして、この後に起こる展開も。


「いきなさい」


 その言葉と同時に彼女の背後、土煙の向こうから何かが接近してきた。

 それに反応して前に出る刀弥。

 が、相手の攻撃と思しきものを受けた瞬間、彼は力負けしてしまった。

 後ろへと吹き飛ばされる刀弥。それをリアが受け止める。


「いたたたた……刀弥、大丈夫?」

「ああ、助かった」


 そんな会話をしながら起き上がる二人。よく見ると土煙はほとんど晴れてきている。

 そうして辺りを見渡すと周囲は激しい戦闘の跡が広がっていた。その中には戦っていた人物の姿もある。


「!? あれって……」

「レグナエルと確かレナス……」


 二人が見つめる先、そこにレグナエルとレナスの姿はあった。ただし、それぞれ血を流し倒れた状態で。

 レグナエルは杖ごと胴体を斬られたらしく傍には真っ二つに断たれた杖の残骸が転がっている。

 レナスに至っては胴を射ち抜かれただけでなく右手、左足を失った状態だ。

 二人共まだ意識はあるがそれも僅かな間だけだろう。

 そして、刀弥達にとって問題なのはあの二人を倒した存在だ。

 二人共直にレナスとレグナエルと戦ったことがあるのでその実力は知っている。そんな二人がやられたのだ。自分達と同じ疲労があったといえでもそう簡単に倒せる連中ではない。

 つまるところ、それは向こうにそれだけの戦力が存在することを意味していた。そして、それはまず間違いなく今目の前にいるそれであろう。


 それはゴーレムであった。形状は人型だが白色のカラーリングと全体的に流線的なフォルム、そしてその背中から生えた翼のような部分によって刀弥はその姿に天使のイメージを重ねる。

 天使型のゴーレムは地面から僅かな高さに浮いていた。顔の部分にある発光しているのが視覚機能だろう。それが二人へと向けられている。



 次の瞬間、天使型のゴーレムは二人の背後に回っていた。


「え?」


 驚いたのはリアだけ。刀弥の方は思考すら置き去りにした条件反射で後ろへと刃を振るっている。

 金属音。音を鳴らしたのは刀弥の刀だ。追いついた刀弥の思考が見たのは天使型のゴーレムが腕から光の剣を伸ばし、それで刀弥の刀を防いだという光景だった。

 それを確認した瞬間、刀弥は全力で後ろに下がる。光の剣の間合い内に自分がいたからだ。

 その予感は正しかった。彼の体のギリギリ外を光の剣が通り過ぎて行く。

 早い斬撃。もし反応が遅れていれば刀弥の体は光の剣で真っ二つに割かれていただろう。

 その事実に息を飲みつつ刀弥は下がっていた方向を反転。今度は前へと飛び出しゴーレムへと斬りかかる。

 右下から左上への斬り上げ。

 今度の攻撃にゴーレムは防御行動を取らなかった。後ろへと滑るように回避すると左腕を上げそこから銃器のようなもの展開する。

 直後、射撃音。ゴーレムは銃器から射撃を放ったのだ。

 その射撃を避けたり刀で逸らしながら再び接近を試みる刀弥。が、ゴーレムは近づこうとする彼から跳躍で距離をとる。

 けれども――


「そこ!!」


 そんなゴーレムにリアの風の矢群が殺到した。

 矢群は一旦膨らむように広がった後、ゴーレムに目掛けて押し寄せる。

 対してゴーレムは迎撃を選択した。右腕からも銃器を展開し左右二つで矢群を撃ち落とし始めたのだ。

 連続で放たれている弾線が次々と矢に追いついていき撃墜していく。中には数発程、迎撃から逃れたものもあったがそれらは全てゴーレムに当たる軌道ではないものばかり。

 結果、ゴーレムは風の矢の迎撃に成功したのであった。

 風の矢群を迎撃したゴーレムは標的をリアに変更して背中の翼のような部分を左右に展開する。

 直後、生まれたのは円状の模様。数は右に四、左に四。

 円状の模様は最初こそゆっくり時計回りに回っていたが、徐々に回転を加速させていきそれと同時に円状の中央に光弾が出現しその光量を増大させていった。

 この動きに悪い予感を覚えたリアは魔術式を構築。ゴーレムに向かって炎の砲撃を放る。

 けれども、リアが炎の砲撃を撃ったすぐ後、ゴーレムが攻撃。

 計八つの光線が光弾より照射。それらが炎の砲撃を貫いてリアへと迫った。

 爆発が八つ起こりそれによって土煙が舞い上がる。地下という事で逃げ場がなくとどまり続けて視界を遮る土煙。

 そんな中でリアは無事、五体満足で生きていた。直前に刀弥が彼女を押し倒したからだ。


「大丈夫か?」

「うん。ありがとう」


 勢いがつきすぎてて頭を軽く打ったのだが、その事についてリアは触れない。そもそもそんな贅沢を言えるような状況ではないのだ。

 急ぎ起き上がり身構える二人。そこへゴーレムが突っ込んできた。

 接近に反応して刀弥が刀を振るう。

 それに対してゴーレムは光の剣を出して防御。そうしてから反対の腕からも光の剣を出現させる。

 しかし、ゴーレムがその刃を振り抜く事はなかった。構える直前、リアが氷の鎖を飛ばしてきたからだ。

 拘束される事を嫌ったのかゴーレムは後退しながら氷の鎖を迎撃。光の剣で次々と斬り裂いていく。

 それを隙と見て刀弥が斬波を飛ばす。

 目標に向かって走っていく剣戟は――しかし、届くには至らなかった。ゴーレムが剣を消し今度は光の盾を展開したからだ。剣戟は光の盾に遮られゴーレム本体に届くことはない。

 今度は反対腕を銃器に変えて射撃を放つゴーレム。それを避けて刀弥が斬波をリアが火球を放ったが、やはり防がれる落とされるかのどちらかであった。


「強いな」


 これまでのやり取りからそう判断する刀弥。

 基本的な能力はもちろん、反応も判断も早い。どうやらかなりの性能を有しているようだ。

 リアの方を見る。疲れた様子は見られるが戦意は落ちていない。

 彼の視線に気付いたリアが視線を返してくる。それに頷きと強い視線を持って返す刀弥。そうしてから二人はゴーレムの方へと向き直る。

 ゴーレムはというと地面に着地し翼を展開しているところだった。どうやら先程の攻撃を再び行うつもりらしい。

 ならば、ここで止まっている訳にはいかない。

 照射された光線。炎の砲撃すら貫く攻撃である。しかし、既に二人は動いていた。

 身を躍らせ光線と光線の間に身を躍らせる二人。

 そうして二人はそのままゴーレムへと接近していったのであった。

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ただいま一章で名前だけがでた高峰麗華のショートストーリーを掲載中。01月05日:更新:零話終了
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